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2008.04.13

速報→「私、わからぬ」空間ゼリー

2008.4.12 19:00

五年目にしてRED/THEATER進出。ハイペースで階段を駆け上がる新作。120分、13日まで。

日本家屋のリビング。お茶を教えている母親とリストラされた父親、夫が失踪して出戻ってきている漫画家の長女、夜のバイトなどことあるごとに他の家族と衝突する次女、就職がなかなか決まらずに焦っている末っ子の長男が暮らす家。お茶の生徒や編集者などさまざま出入りして。

ネタバレかも

自分がどうしたいのかわからないある種のモラトリアムっぽさを許す実家という場所。それぞれに問題を抱えている子供達なのだけど、根っこの部分ではこの家も両親も兄弟達も大好きだという流れ。生徒たちや編集者たちなど、ノイズや事件を起こす要素はあっても家族は収束していきます。

人物の造形は細かくしっかりとした肉付け。舞台装置のレベルの高さと相まって、高い質感の手触りという印象に仕上がっています。たとえば、失踪した夫に未練がなさそうで、仕事の漫画が好きで、でも自作ではなくて読者投稿の体験談の物語を描くことに執着しているという長女。幾重にも衣をまとったような属性は、それぞれに少なくとも「そう見えるように振る舞う理由」があって、細かく描かれています。反発していても家族のことが誰より好きで誰にでも自分のことをわかってほしいという次女も丁寧に描かれています。家族へのおもいっきりの愛を持っている両親も、淡い恋心を描く編集も、他の役者との年齢のギャップがいい味を出しています。

それぞれの「点」の優秀さが際だつ反面、それを繋ぐ「線」となる物語や気持ちの流れという点では少々薄味の印象。最後まで物語を引っ張るのは長女に纏わる問題なのだけど、いくつも伏線ぽい謎はありつつもそれはそのままだったり、夫への想いのたけを言い放つように見えるけど、どこか本心でないような距離を感じてしまうのです。あるいは次女が引き留められる下りのあっさりさ具合も、家族への愛ゆえだといえばそうなのでしょうが、ここまで盛り上げておいて勿体ない気すらするのです。

もっとキャラクタを立てた作り方もあっただろうに、彼らが選んだのはニュートラルな家族の感じ。 全体に笑いも少なく、芝居自体も静かでニュートラルを貫きます。見目にこれだけ美しく華の女優を取りそろえながらも、ある種地味なこのフォーマットに載せるという勇気は大した物だし、ことさら華やかさだけに走らないことの継続は、必ず身になると思うのです。

ハロプロエッグの青木英里奈は少々異質な造形だけど、女性の「オンナノコ」の部分を一手に引き受けると言う点で印象に残ります。メインとなる斎藤ナツ子も岡田あがさも貫禄すら感じさせる安定感。父親を演じる麻生0児はゆったりと、朴訥な感じが勝ちパターン。淡い恋心を抱く編集を演じた大塚秀記も、菅間馬鈴薯堂でのマネージャに通じる、確かに見守る役どころは、これも勝ちパターンなのです。

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