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2008.04.20

速報→「あなたの部品 ファイナル」北京蝶々

2008.4.19 19:30

早稲田劇研・北京蝶々の大学アトリエからの卒業公演。75分。27日まで。

東京でのオリンピックが間近な日、輸入が滞り逼迫する日常生活の中、近隣国からの外国人に対しての強い反感が危機的状況になっている。義肢装具士を営む男、そこに出入りする様々な立場の人々。

審査員特別賞・観客賞を受賞した若手演出家コンクール2007での60分は観ていないアタシです。キャストの入れ替えはしたようですが、物語の大筋には手を加えずに少し増量したのだといいます。

オリンピック・中国・エネルギー・戦争協力など社会情勢のあれこれを細かく織り込んだ物語。中国に肩入れするような基調でイデオロギーっぽさが前面に出ていて重厚さを感じさせる反面、少々の笑いはあっても、いつもの軽やかさや薄い印象もあります。それでも、75分という時間の中にこれだけの題材を織り込み、物語として見せ続けるチカラはちゃんとあって、受賞作というのも頷けるのです。

主義主張のようなものが強く出ているのですが、作家が描いたいのは、そういう大上段よりももう少し地に足の着いた細やかさだという気がしてなりません。何の根拠もありませんが。

ネタバレかも

終盤「どこまでが自分(のカラダ)なのか」という「ボディイメージ」と義肢の関係から、傷つけられると痛みを感じる範囲はどこまでかという切り口で「国家と国民、あるいは自分」という関係に敷衍する終盤の語り口がアタシには圧巻。美人の顔を持つことが、強い身体を持つことが、ある国の国民であるということが、その個人「そのもの」に何の意味があるのか、あるいは無いのかということに対しての若い作家の持つ違和感のようなものがアタシには強く感じられるのです。

作家が意図したことなのか判りませんが「自分は国家にとって部品」なのか、「国家は自分にとって部品」なのか、ぐるぐるしていてわからなくなる感覚があります。

主義主張の方とみえる方には、はっきりと強いバイアスがかかっています。反面、この「自分とは」という命題に対しては、あちらこちらから手を変え品を変え突き廻しているのにもかかわらず、どうしていいか判らないという感じを受けます。おそらくは「あれ、どうして痛みを感じるのだろう」という「違和感」から発したであろうこの命題の大きさに対して「悩んでる感じ」があたしの気持ちを揺らすのです。

小指(リトルフィンガー)を軸に、ヤクザの責任のとりかたから指切りという約束という流れのシーンの軽やかさが好き(いや、語ってることは重いのだけど)。特に「責任」という言葉は中国語ですという前段を振ったあと、小指を落とすのは木刀を握れなくなるという説明を受け、それは「武力放棄」かと訪ねる中国人に、日本人が「それも中国語?」という質問をすると「いや、これは第九条」っていう流れのリズムの良さが実にいい感じがするのです。いや、もちろん好みはあるでしょうが。

ほぼ終始一貫して落ち着いた役は初めてではないかという帯金ゆかり、強いバイアスのかかったある種のヒールを演じきった鈴木麻美が印象に残ります。劇中何カ所か出てくる「街宣車」に特有の歪みがないために、街宣車に聞こえない、というのは少々違和感を感じますが、それは大きな問題ではありません。

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