速報→「飛ぶ痛み」キリンバズウカ
2008.4.26 19:30
「関西の最終兵器」が上京3年半、満を持して。前売り完売、追加公演2ステージというのも評判。100分。29日まで王子小劇場。全体を見渡せる正面側の方がストレスは少ないかも知れません。
孤島にある施設。死期の近い患者(モニター)3人と、それぞれについた職員たち。痛みを他人に「飛ばす」ことができる技術が開発され、痛みを感じないモニターたちについての調査を行うのがこの施設の目的だった。あまり働かない所長の代わりに新しい医師がやってくる。奇妙にバランスしていたコミュニティのバランスが変わる中、具合の悪そうな女がやってくる。
タイトルどおりの「飛ぶ痛み」の世界の話。毎日のように告白していたり、やけに溺愛してる関係があったり、自殺を毎日のように試みようとしてるけど周囲は慣れっこになっていたり、少々頭弱めでドジな職員がみんなに可愛がられているけど、気に入らないと思ってる人が居たりと奇妙にぬるくバランスしているのを描く前半。平凡な一人が加わることでバランスががらがらと変わるシーンがちょっと面白い。 「飛ばされた痛みを受ける人」とか、「彼女に何もしてあげられないならいっそ死んでしおうと考える人」などを通して他人から観ればごく偏った愛情の姿をいくつもバリエーションして見せる中盤でしっかりと核を作り、その外側に「観察する人される人」の関係やら「飛ばせる痛みを受ける人」や「飛ばせない痛み」を描く終盤に着地。
ネタバレかも
終幕近くでは、二つのポイントに気持ちが揺れます。
愛する人の痛みを代わってあげたいと思うのは、比喩としてはまったくそのとおりなのだけどそれが現実となってしまうと、そのきれい事だけではすまないという恋人の二人が切ない。
あるいは痛みを受け取る側の男が、単なる物理的な痛みだけではなくて彼女が感じて居るであろう身もだえするようなキュンとする「痛み」をも受け取れると思っている姿と、気持ちの苦しさは「飛ばせない」痛みで、はっきり云うことだけがその痛みを軽減できるという女の姿の対比が実に切ない感じ。
SFまがいの世界をただ描くのではなくて、それを核としてもう一歩先を描こうとしている心意気やよし。アタシにはいくつもの想いを込めようしているように感じられ群像劇な印象があります。が、個人的な好みを云えば、どれも結構いいポイントで、もっと絞って深く気持ちを震わせたいと思うアタシです。
正直に言えば、好きで坐った最前列桟敷も油断して座席スペースを十分に確保できず、欲張らず椅子に座れば良かったかなぁと思ったりも。物語に大きな影響はありませんが、プロローグ的なシーンで横に並んだ三人を真横から観るのはちょっと厳しい。
前評判通りのキャスティングの凄さも注目の一つ。微塵も不安を感じさせない役者陣に混じって、数年ぶりだという「柿喰う客」の田中沙織の女優もなかなかどうして、きっちりと演じきっています。
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