速報→「月の砂をかむ女」桃唄309
2008.4.19 14:00
桃唄では結構久しぶりという気がするがっつりSFの一本。120分。20日までザ・ポケット。
2084年、東京都による月面開発局による十三次調査隊。月面の表側ではかなり活発に開発が進んでいるが、東京都は裏側のクレーターを取得、裏側では現在稼働している唯一の月面基地となっている。予定していた補給船は到着せず、通信設備もある事件で破壊され復旧のめどが立たない。連絡も補給も断たれた調査隊は限られた食料の中、なんとか救助を求めようとする。
限られた状況の中で最大限紛争する人々、観測の予算は選挙やら政治やらの都合でカットされたり後押しされたりしながらもじり貧状態。チームはプロフェッショナルだが、おもったような研究成果が上げられているわけでもない。酸素欠乏やらリーダーの重責やらさまざまなことがチームを襲います。明らかに非常事態なのにどこか淡々と落ち着いているのはリアリティがないといえばそうなのだけど、プロフェッショナルな感じはよく出ています。
芝居としてみると、かなり地味な印象は免れません。後半になって多少の盛り上がりはあるのですが、全体に淡々とした語り口。加えて、かなり自在に数ヶ月単位で時間が前後して描いていくために、この感覚に慣れないと、物語を追いかけるのは相当苦労する感じがします。ある時点、そこから数ヶ月前の出来事という繰り返しをしいくのに加えて、現在にあたる時間も数ヶ月単位で進んで行くために、一点にとどまる場所がないのも困難さかもしれません。もっとも、場所はほとんど一点の基地内の娯楽室にとどまりますから、そういう意味では最近の桃唄よりはすっきりしているともいえます。
スタートレックでもガンダムでも、主軸となる派手なエピソードとは別に、サイドストーリーというか埋め草というか、わりと地味なエピソードが混じっていたりします。本作、それによく似た味わいがあります。確かにこの手のエピソードだと、現在・回想というのを繰り返しながら描くことが多い感じがしますから、そのフォーマットにはよくあっています。こんなにも地味な話を、びっくりするほど丁寧に丁寧に積み重ねて描いていくのです。
補給よりも取材のカメラが先に到着してしまうというエピソードが結構好きで、その理由というのも確かにありそうでちょっと面白い。冷静沈着で徐々に成長していく「高橋」という存在もスタートレック的でちょっと面白い。会話に出てきたパラドックスで「再起動」してしまう感じもとてもいい造型。意味がなさそうな研究があとで意味を持ったり、リーダーたりえなくなってしまったリーダーの悲哀というか頑張りというのも、実にいい手触り。
反面、コメディという割には笑いは少なめ、地味な上に物語を追いづらいという点では、あまり万人受けしないのではないのかなぁとも思うのです。そう楽しめばいいのだと判るまでが、アタシにとっても少々長く感じたのもの事実で、前半に盛り上がり感があると見やすいなぁと思ったり思わなかったり。
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