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2008.03.24

速報→「新・こころ」フライングステージ

2008.3.23 14:00

夏目漱石の「こころ」(wikipedia)をゲイコミュニティの一員であるフライングステージが物語の隙間に「つけいって」読み直す一本。130分。26日まで駅前劇場。

夏の日、大学講師の男に声をかけたゼミ生。彼は卒業研究の題材として夏目漱石「こころ」を今なりに読み直してみようとかんがえていると伝える。

「こころ」は読んでないアタシです。劇中でも簡単に語られますが、わりとこまかく語るために一度では頭に入りません。チラシの裏に書かれているのがわりとわかりやすいので未見ならば(そんな人はアタシだけか)そちらを。芝居は中巻を薄めに、上下巻を厚めにして描いています。 同じチラシによれば、遺書の中で一人称で語られているKとの出来事や、そのころの「奥さん」については事実かもしれないけれど、そこには遺書の書き手の意志が含まれているはず、というところから別の解釈を潜り込ませます。明治時代は寛容だった男色は今の同性愛とは違うものなのだけど、それはわかったうえで男色の解釈を潜り込ませる作家の筆致は鮮やかです。確かに、描かれる嫉妬の姿を見ると、これは女性的なもの、という感じがしないでもありません。男も嫉妬深いのはまあ、そうなのだけど。

白で統一された舞台は、開幕直後、美しく大きな青空が現れ、アタシを一瞬で舞台に引き込みます。このセンスが実にいいのです。現代の大学生たちの話と、明治時代の二つの場面というつごう三つの時代を自在に行き来するには、このシンプルな舞台は効果的です。

実際のところ、「こころ」という話をわりとそのまま丁寧に作っているとは思うのです。そこに加えられた別の視点。原作を今から読んだとしても、「そんな人物たち」に見えてしまうのではないかというぐらいに、丁寧に造形された人物は実に自然にアタシの気持ちに入り込みます。

作演をかねる関根信一の圧倒的な安定感はいつもの通り。大学教授や下宿先の未亡人という要の役を丁寧に押さえています。女学生を演じた石関準の「普通の可憐さ」はたいしたもの。「奥さん」の時の髪型の不自然さはちょっと違和感ありますが、大きな問題ではありません。ほかの役者にしても、ゲイであることを公にはしていても、芝居としてことさらそれを強調するではなく、見た目も言葉も普通の男のまま、しかしどこかに「男色」を滑り込ませている確かな力を感じるのです。

かなり暖かだった日曜昼に関していえば、アタシには少々暑くて130分という時間は少々長く感じたのも事実なのですが、しかし、じゃあどこを削れるのかと考えると、そんな無駄がこれっぽっちもないなぁとも思うのです。

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