速報→「おとことおんな、時々、動物」WHATCOLOR
2008.2.9 19:30
劇団としてはアタシは初見ですが、見慣れた作演陣による四本のオムニバス。110分。11日までサンモールスタジオ。
個人経営のスーパーのバックヤード。生き残るために必死の企業努力。店員が万引き女をつれてくるが「犬かきで溺レ」。
ファミレス。ニューハーフ風の二人連れがこれから遊びに行く相談をし、カップルはなんか揉めているようで。そこにスーツ姿で焦って入ってくる三人の男女の問題はさらに深刻で「新宿の鹿」。
風俗風の場所。しつこかったり乳をもんだりする客をあしらう女。優男風が現れ、食事に誘う。というかかなり真剣に告白を「牛〜ドナドナのうた」。
居間。ボクシングをやっていた男二人。が、独りは記憶をなくしていて、今でも時々記憶が飛ぶという。が、その記憶なくした男の真の目的は「冬に眠り、春に別れ」。
動物というゆるやかな縛りと男女の話だったりするシチュエーション。30分弱の短編アソートはそれぞれに味も仕掛けもあって楽しめます。1・4話がブラジリィー・アン・山田(ブラジル)、2話が楢原拓(チャリT企画)。3話が葛木英(メタリック農家)。
「犬かき〜」、スーパーのバックヤードといえばの食品偽装というかあれこれ語りながら、店長の妻やら浮気やら、透け見える背景がちょっと面白い。 客の前でレトルトを温めることが平気な牛丼チェーン(ほんとに些細なことなのだけど、まったく同意しますとも)とか総菜の加工日など食にかかわるさまざまを語りながら、その延長でうまくオチに持ち込んでるのもキレイにまとまっている感じ。
「〜鹿」は、ファミレスの隣の聞こえちゃいけない会話のさまざま。軸となるのはスーツ姿の三人なのだけど、その両脇二組の会話の交換は、ステロタイプにすぎる造形ではあるものの気楽に楽しめます。やらかしてしまったことの罪を損得勘定する会話は解釈の真偽はともかく、その滑稽さが面白い。更に状況が悪くなって行くのもちょっと面白いけど、三人も居てその穴に最初に気づけよ、ってのは思わなくもありませんが。
四本のなかでもっともファンタジー色が強い「牛」は風俗嬢と店員の日焼け男の恋路の話のフォーマットに、ぜんぜん別の「別れ」の話をかぶせている着想のおもしろさと、少々の無茶でも押し切って正面突破したことが巧くまわっていて、「芝居でしかできないもの」に唯一なっているのがすばらしいのです。話として決着をつけるのに苦労してるように感じないことはないのですが、テンションで押し切ったのは正解だと思います。
「冬に〜」は記憶をめぐるサスペンスタッチ。笑いもあまりなくて、終幕はなぜかイイ話風になってるのも妙な感じはしますが、途中の部分の嫌ぁな感じの作り方は巧いのです。勝つのか負けるのか、のようなキリキリとした空気を作りたいのだと想像します。記憶のとぎれる男の気持ちの動きがどうにもついて行けないのはアタシの個人的な感情ですが。
初見の劇団なのですが、ディレクターが云々、という言葉が当日パンフにあるとおり、おそらくはテレビの側の人なのでしょう。そう思うとついつい厳しめに観てしまう偏見に満ちたあたしなのですが、最先端とかスタイリッシュという感じではなく少々ださい感じも含めて、実に真摯に作ろうとしていることはよくわかるのです。
| 固定リンク
「演劇・芝居」カテゴリの記事
- 【芝居】「メモリーがいっぱい」ラゾーナ川崎プラザソル(2025.02.12)
- 【芝居】「Yes Means Yes」serial number(2025.02.02)
- 【芝居】「飛び出せ!還暦」おのまさし(2025.01.22)
- 【芝居】「父と暮せば」酔ひどれ船(2025.01.19)
- R/【FORKER】遊気舎(1999.04.24)
コメント