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2008.01.28

速報→「わたしのおへや」cinnamon-cookie-company

2008.1.27 17:00

「おんなのことセックス」を描きたいのだという旗揚げ。27日まで櫂スタジオでの公演は終了。70分。楽日はほぼ満員。

大学生らしい三人の女、それぞれの部屋。何人かの男と寝ていることが日常の女、20も上のオジサマと不倫している女、彼氏一筋料理もうまくて真面目で可愛いらしい女。それぞれに違う道なのだけど、仲は良くて、よく話してよく笑って、ときにはあけすけな話もして。

女性の作家、女三人のだべる芝居といわれれば大好物と公言して憚らないアタシです。芝居としてみれば物語よりはそれぞれのキャラクタの説明に多くを費やしていたり、そもそも終盤は最後列では聞こえなかったりと完成度は高くありません。かたられているような会話が若い女性たちのリアルかどうかも確かめる術はありません。

序盤こそサービスカットのようなシーンはあるけれど、ほぼ会話→部屋が変わって会話を二人もしくは三人で続けていきます。男たちと寝ている女は呼ばれれば断らない、必要とされている感が重要で、セックスそのものが好きなわけではない。不倫している女はこれが続かないことはわかっているし先のないことはやめたほうがいいのも判っているのに、だらだらと続けてしまう。一途に見える女は、一瞬のあこがれの気持ちが別の男にそよいでしまうのだけど、今の彼が一番だと思い直したりもします。っそれぞれがそれぞれの感じ方でそれぞれに生きていて。

三人居れば社会が出来る、という言葉どおり、一見仲よさげでも一筋縄ではいきません。一途な女は不倫ということが許せなくて、不倫をしている女とは今ひとつうち解けていない感じ。喧嘩のあとでケーキを持って来て表面的には仲直りするけど、会話ははずまずすぐに帰るし、暗転直後には箱ごとゴミ箱に捨てるような音がするなどなかなか細かい。こういうあたりの末節なところが結構好きだったりします。

アタシがみていて感じるのは、恋愛観という点では それぞれが独りでオンナとして走っているアスリートのよう。隣はタイプが全く違うから、驚きはあっても参考にはならない感じなのです。

無理せず気持ちいい方向にいけばいい、というのはたぶん彼女たちの気分なのでしょう。あけすけな会話が刺激的ではあるけれど、その刺激的以外のところの細やかさをもっと見たい気もするのです。

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速報→「繭」reset-N

2008.1.27 15:30

作家、帰国後の第一作。105分。27日までのトラムでの上演は終了。

皇居がテロの標的となり甚大な被害を受ける。第二波のテロも噂され、世の中が落ち着かない。皇族で唯一生き残った「A」もその重責からか、直後の記者会見で自分が誰か判らないと発言し、周囲は静養させることにする。

resetNとは、半々の割合ぐらいで眠気が勝ってしまうという、相性が微妙なアタシです。今作はそんなアタシからみてもすっきりと見通しのいい感じで、見やすいのです。どなたかが書いていたように、「透明な」感じではあって、ひっかかることが少なくて、純度の高い感じの見た目なのです。

中心に椅子、囲むように四角に置かれた蛍光灯。そこに座るAはほとんど立ち上がることもありません。ほかの役者もやや奥に一列に座り、あまり派手には動かないことが多くなっています。このスタイル自体はリーディングのようで、いままでとは少し異なります。ただし、スタイリッシュを地で行くような感覚は健在で、その印象は留学前とは変わらない気もします。

不思議なのは、モノガタリ、モノガタリ、という台詞を聞いているうちに、どこか鴻上尚史っぽさを感じてしまったのだけど、何が理由なのかは、自分でもよくわかりません。

アタシにとって見やすさの源泉は少し抜けた感じの警備員二人や、ややヘタレの海賊放送のDJという役が少しコミカルで、適度にあたしのテンションを維持してくれるのです。もしこれがなかったら純度は更に高い感じですが、あたしはこういう「不純物」が混じってる方が好きだなぁ。

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2008.01.27

速報→「ムコウカタ」ちからわざ

2008.1.26 19:00

あちこちの客演などで印象深い佐藤二朗の劇団。満員の客席。27日までTHEATER/TOPS。100分。

沈みゆくといわれている島で暮らす人々。殺人請負のような仕事はあるけれど、それなりに平和。海の向こう側にあるというムコウカタという恐ろしい世界に行って戻ってくる人もいる。ムコウカタから戻ってくる人はどこか違和感というか怖がられる存在。ある日、その中でもとびきり恐れられている「ウオズミ」がムコウカタから戻ってくるという噂が島を戦慄させる。

序盤、島のあちこちでされる会話は明瞭のにあまりよくわからない感じの世界を淡々と描写していきます 。基本的には二人から四人ぐらいの大きさの会話を点描していきますが、それぞれはわりと唐突で、ばらばらに存在している感じ。まあ、それこそが平和ってことなのかもしれません。

中盤から一つの脅威が世界を一つにまとめていきます。その脅威のありようが、あまりにストレートで逡巡とか葛藤とかがかけらもない、まさに「鬼畜」なので、一方的に逃げまどうだけになってしまう他の人々は強烈な役者陣をもってしてもやはり平板に見えてしまうのが勿体ない感じ。

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速報→「投げられやす〜い石」ジェットラグ

2008.1.26 17:00

ミニマムな空間に張りつめる空気に身をゆだねる75分。27日までゴールデン街劇場。週末は三回興行て。

新進気鋭の芸術家として飛ぶ鳥を落とすイキオイだった若い男。その大注目の中、突然失踪してしまう。その彼女と、彼にあこがれている同級生もやはり絵を描いていた。二人はは茫然自失となるが、やがてつきあうようになる。2年後、失踪していた男から電話が来て待ち合わせる男ふたりは、変わり果てたすがた、コンビニの店員に理不尽な疑いを受ける。

もうこの役者陣です。たった四人、全員が凄い役者の座組なのです。この中にあって、作演を兼ねる岩井秀人のキチガイっぷりが凄みとして効くのです。

序盤ではのりに乗っていた男の二年後。目の下にクマとか、変わり果てた姿。傍目には明らかに弱者となった男の姿はまさに「投げられやすい石(=因縁をつけられやすい男)」の姿。友人である男ともだちは、その見た目では、動揺はしながらも変わらないのだけれど、すこし経つうちに、男の中身があきらかに変容していることに気づく。気づくのだけど態度を変えられない、後から呼び出される昔恋人だった女もどこか断ち切れない気持ちはあっても。

関係が変わってしまったことを気づきながら、表面的な会話で取り繕おうとする男と、邪気なく切り込んでいこうとする失踪男。この二人の間の絶妙な空気感がすごいのです。見た目で理不尽な疑いをかけるコンビニ店員にしても、身体の関係を要求される元恋人との会話もゾクゾクするほどスリリングです。芝居は全体に静かですが、そこに流れる気持ちの濁流に呑み込まれるのも楽しいのです。

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速報→「天井」三田村組

2008.1.26 14:30

三田村組にモダンスイマーズの蓬莱竜太の新作、27日まで、ザ・ポケット。90分。

寝たきりの男、息子たちからも疎ましがられる。警官は寝たきりをいいことに裏金を隠す。たまに見舞いに来てくれるのは近所の純朴な男だけの日常。そこにヘルパーに来るようになった女性、淡い恋心を抱き男は質問をする「死ぬまでに何が見たいですか?」

平たく云えば「若返った老人のものがたり」。といえば去年のこれが思い浮かびます。時間が経つにつれて元気になっていくというのも似ています。が、語られることのテイストは随分とちがいます。

「ぬけがら」では心も若返っていくのは、どんどん純粋になっていく感じ。対して今作はそういうピュアな感じでありません。より現実的。身体だけではなくて心は変わらないのに気持ちも若い無謀さがあったり、金も心配ないし、恋心を抱く女も居る、という枠組み。ジジイがジャンクフードをむさぼり喰うようなコミカルさはもちろんあるのだけれど、それにはとどまりません。前向きなのにどこか底意地の悪いような、頑固なところは変わらないまま。むしろ老醜ともいうべき側面がどんどん出てきて、それなのに、必要とされていたいというか、寂しいとおもう気持ちのようなところは人一倍と、苦い味わいなのです。

希望はどんどん失われていく感じは、痛々しくなる直前で止めていて、するすると見事な感じ。終幕、天井を眺めいないですむようにする、というほんの小さな思いやりの発露が、不器用な男から出ていくというシーンがよくて、見逃してしまったものの大きさを感じるのです。

繋がりで判らないことがあります。 自殺、という単語がでてからあと、同じ男がでているように見えるのだけど、時間が巻き戻ったわけではない、のはいったいどうなんだろう。ここは少しひっかかるところなのです。モノガタリに対して影響があるわけではないのですが。

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2008.01.24

久し振り。

雪のなか東京を出発し、中央線を北上、出張先の窓の外はガシガシ雪。まあ、無事に帰ってこれたのですが。そのなかで部署を微妙に兼務する発表。いろんな人がメールくれて嬉しかったり、久し振りの人と一緒に仕事をするのもちょっと楽しみ。それでも違う種類の仕事という不安もある厄年。

今日は一年に一度だけの呑み会によばれ、こちらも久し振りに会う、いろいろ思うところはあっても、みんな元気で酒が呑めて、食べられるのは、やはり幸せ。

週末。

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2008.01.21

速報→「高橋いさを2作連続上演」サンモールスタジオプロデュース

2008.1.20 18:00

15年前の高橋いさを作品、アタシは初見です。ホテルの一室を舞台にした訳アリ男女の短編二本組。110分。サンモールスタジオでの上演は20日で終了。

田舎から上京してくる堅物の兄を納得させるために男友達に偽装の恋人を依頼しようとするが、けがをしてしまう。男友達のさらに友人の男を紹介され、ホテルの一室で前日に相談をする。小劇場の役者だというその男に戸惑うが、背に腹を変えられず。「一日だけの恋人」
ホテルの一室で女を待つ男。そこに全く関係のないウエディングドレス姿の若い女が飛び込んでくる。「ここだけの話」

当時はどうだったかわかりませんが、少なくとも今となっては物語の奇抜さというよりはスタンダードなストレートプレイといった手触り。役者の魅力を楽しむ感じに観るのが正しいのでしょう。にしても、これだけスタンダードで、しかも小さな空間で見せるには親切にすぎるというか、少々まどろっこしく感じたりもするのです。

「一日〜」は、芝居をひっぱるIKKANが、ゆっくりと進んでいる物語の隙間に言葉や芝居をはさんでリズムを作っている感じもします。元々の演出を知りませんから、それが役者の工夫によるものなのか、戯曲や演出に備わったものかはよくわかりません。結果、少々癖のある人物造形ですが、リズムを刻むためには正しい気もします。南口奈々絵も微妙にツンデレっぽさもあって魅力的。

これに比べると「ここだけ〜」は綺麗というよりは少々こじんまりとまとまって演出の意図通りになっているんじゃないかと想像します。もうすこし観客を信頼して端折っても大丈夫だと思うのですが。温井摩耶のウエディングドレス姿は実に美しい。

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速報→「怪獣が来た!」サンダース:コンビーフ

2008.1.20 14:00

にんじんボーンの宮本勝行と、ネオゼネレイタープロジェクトの大西一郎のユニット。120分。20日まで「劇」小劇場。

南出五郎と紀子の夫婦の暮らす古い一軒家。妻は生徒を募って料理教室、夫はオーディション雑誌をチェックしているが、仕事しているようなしていないような。そこに夫の学生時代の後輩で映画関係の仕事についている女が来て、新たに撮る怪獣映画のスーツアクターを探している、という。

にんじんボーンのレパートリー「オヅくん」の世界にゆるやかにつながる、にんじんボーン的世界そのままを別キャストでという風合い。山口雅義も宇奈月慎太も出演していないのだけれどその空気感というか間合いはまさににんじんボーン。もっとも、その出演していない役者がそこにはまるだろう、ということが透け見えてしまうというのは、この劇団が作り上げてきた世界の強固さを逆に思い知ることになります。

わりときつい言葉を半笑いで交わしあい、嘘や悪のりも修正されないままで進む会話は、慣れてるアタシにはまあ気持ちいいとは思うものの、この芝居の空気感を把握しきっている役者ばかりではない座組では、本気で怒るのではない直前な感じで、少々微妙な空気を持ってしまう感じもします。

その空気感になじむ形で絶妙の間合いを見せるのが石塚義高。訓練されたものなのかどうなのかはよくわかりませんが。反対に、役者の特性で最後まで立ち続け切った永井若葉も圧倒的な存在感を見せていて、印象に残ります。

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2008.01.20

速報→「愛の続き/その他短編」Mu

2008.1.19 19:30

Muの新作、二本立てを二バージョンの、あたしはBだけ。90分、21日までOFF OFFシアター。

コミック作家学校の卒業生、元カノに相談に乗ってもらっている物語担当の男がいうには、現・彼女の作画担当に来る危ないファンレターが心配で。元カノの方も男に聞きたいと思っていたことがあって。「愛の続き(の続き)」。
授業参観なのに2人しか出てこない小六の教室。その二人はロミオとジュリエットな感じでここから出ていこうとしていて「5分だけあげる」。

「愛の〜」は、別れた二人、近づきたいのに近づきかねる微妙な距離感。たぶんAプロでは、男が未練たらしく忘れられない側になっていて、多分そちらの方が自然な仕上がりだろうと思います。男が未練で、女が今ひとつ元サヤに乗り気でない方が自然に感じられそうで、ってのはアタシがおかしいですかそうですか。 男女入れ替えのBバージョンにあたる今作は、ちょっとそのタメに作られたような違和感があります。

同級生たちの狭い範囲で交錯する想い、時間が経つにつれていいだせなくなったり。シンプルで、しかし解決できない個人的な想いに逡巡する感じ。クリエーターな人々ばかりが出てきたりとバランスは良くないけど、それも含め設定といい、オチといい、漫画的でデフォルメされた感じはあって、小さい劇場で短編ゆえに一気に観てしまう感じ。

「5分〜」も、物語というよりは逡巡する作家の気持ちが着地点を求めてさまよっている感じ。小学校での現代版小さな恋のメロディー(いや、ずいぶんと深刻だけど)と、モンスターペアレントに対峙する教師の苦悩。しかし当の両親たちも苦悩を抱える三竦み。

小学生を演じた二人、松下幸史・辻沢綾香が最初こそ出オチだけど、そのうちに小学生っぽく見えてくる魔力でなかなか。気の弱い副担任を演じた浅倉洋介は一本目のヤンキーもどきとの振れ幅も含めて、劇団ではなかなか観られないキャラクタで面白く。

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速報→「メディア モノガタリ」三条会

2008.1.19 14:30

ギリシャ悲劇の「メディア」の一部分を切り出して、独特の三条会スタイルに。80分。20日までザ・スズナリ。モノガタリそのものを語るという感じではないので、当日パンフの前奏・ものがたりを読むことをおすすめ。

恋をして魔法を使い人殺しまでして男に尽くしてきたメディアは逃避行でたどりついた地で幸せに暮らしていたが、その男は打算からその地の王の娘と結婚しようとする。絶望したメディアは王とその娘、男までも殺害することを計画し。

たとえばク・ナウカや山の手事情社のような身体表現に強みをもつ集団を凄いと思いつつ、身体表現自体はあまり得意でないアタシです。特定の役者の強烈な力などに引き寄せられて見続けているという感じがします。

三条会は、同じように身体表現の強みという点で、あまりアタシには得意ではないスタイルなのです。いまだにこれが好きなのかどうか、計りかねている劇団の一つ。本作に関していえば、抜群に面白いシーンがいくつかある反面、地の部分がちょっと飽きてしまう感じがあって、やはりアタシは距離感を計りかねるのです。

メディアという物語から、ごく小さな一部分を取り出し、女が一人呟く無間地獄のように語るスタイル。台詞はあまりいじってないだろうと想像するのだけど、一種の女の恨み節のような解釈になっていてアタシの気持ちにひっかかります。

メディアが自分の身柄の収まり先のめどがつき、計画を実行に移す段、芝居の上では休憩と称する3分の後、山口百恵メドレーに乗せてメディア視点で計画の実行や心を描くあたりが圧巻。「乗せる」という表現が正確かどうかは難しいところですが、音楽のリズムに、全く関係ない台詞をリズムで乗せつつステップを踏みながら語られるこのシーンは抜群に面白いのです。大川潤子の怪演がそれに輪を掛けます。

榊原毅演じる使いの者が語る惨殺のシーンの強いテンションも、中村岳人演じるイアソンが何度も刺し殺される少々コミカルなシーンもたしかにそれなりに見せるのだけれど、この山口百恵メドレーの前には、さすがにかすんでしまう感じ。反面、それ以外の地の部分となるほとんどは、あまり得意じゃないなぁ、とも思ってしまうのですが。

当日パンフで芝居とその前奏を簡単に解説するのは正しい配慮。もとの物語を知らないと手も足もでない感じなのも三条会らしい感じ。タイトルには「〜モノガタリ」とつけてはいるものの、物語を描くことよりも、もっと彼らの主眼は別の所にある感じがしてなりません。

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2008.01.17

ひと段落。

長い長い仕事がひと段落。まあまだ残件もあるわけですが。帰りの特急のビールも美味しくて。何はともあれうれしいなぁ。

ひと段落といえば(すぐ芝居の話にする:-)、王子小劇場の賞の発表がありました。偏っているといえば偏ってる、それでも劇場の想いがちゃんと結実した結果は、重みがあります。さて、鳴り物入りのこちらには想いが込められるのか。というか、いつなんだ、発表。

週末。出張やら新年会やら、コマは少なめ。←週末しか観ないんじゃなかったのか

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2008.01.15

速報→「夢のひと」Kダッシュステージ

2008.1.14 13:00

大阪のみの初演だった芝居の拡大再演。135分。東京千秋楽はカーテンコールが20分ほど。吹田・東京を経て、今週後半から北海道各地の巡演。

大阪の置屋に身売りされて広島からやってくる女。初めての日、勘違いから下宿している男を叩き出しそうになる。その男は三越に勤めているが場所が気に入り、置屋の一部屋で下宿している。そうとは知らず、東京時代の知り合いの堅物の海軍将校も宿を借りるためにやってくる。
が、時代は戦争の足音が近づき。

わかぎゑふの書く、古めで細やかな関西の言葉。置屋と軍人の関係となると、ラックシステムの名作( 1, 2, ) も思い浮かびます。もっとも、時代が更に下りた今作では、あのときのような軽快さで最後まで進めるわけもなく、どうしても時代の背景と、そこに翻弄される人々という、重さをもった芝居になります。

いわゆる小劇場出身でない「芸能人」の出る芝居ではあるのだけど、実にしっかりとしていて物語の中にとけ込んでいて不安な感じはありません。

升毅の序盤の軽やかさ、渡辺いっけいの堅物さとの対比も楽しい。小椋あずきの置屋の女将の序盤が圧倒的にすごくて、どうしても柔らかになりがちな舞台の中でしっかりと立っています。その夫を演じる酒井高揚も、重みのあるいい台詞が多くて泣かせツボを刺激します。野田晋一は二役なのだけど、どちらも安定、安心。木村美月の兄を気遣いもなかなかよくて。

それでもアタシは序盤の軽やかさのある関西弁の芝居の部分が好きなのです。女将と少女の序盤の強い言葉のやりとりはぞくぞくしますし、遊女が男たちを微妙に手玉に取る感じも素敵なシーン。 後半にかけて、戦争とそれぞれの病という関係の芝居へ。確かに泣きツボはがんがん押されるのだけど、あざといほど泣かせる芝居というところは確かにあって、ああ、大きいところの芝居だなぁと思うのです。もちろんそれが悪いことじゃなくて、そういう特性の芝居だということなのですが。

千秋楽のカーテンコールではそれぞれに言葉。アタシの印象に残ったのは、常にクールに見えて熱さを見せない升毅が、この舞台を再演できたことを本当に喜んでいる感じ。意外な感じすらするのですが、見ていても嬉しい。

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2008.01.14

速報→「蓮池極楽ランド」仏団観音びらき

2008.1.13 14:00

主宰・本木香史のテーマパーク経験を生かした「恩仇」な一本。110分。大阪を経て14日までタイニイアリス。そのあと2/16に福岡市立青年センター。

温泉ホテルに併設され100m観音像を抱きミュージカルショーを売りにした「蓮池極楽ランド」は怪しげな着ぐるみ総出演のダンスショー。もちろん閑古鳥が鳴き、せめてショーだけでも止めようとする経理担当者は意見するが、社長の浮気がもとで気が触れ、蓮池極楽教なる宗教まで始めてしまった女将は耳を貸さない。

テーマパークをいくつも経験してきた体験をもとにしたさまざまの断片。有名テーマパーク崩れや、大手劇団崩れ、撮影所崩れなどさまざまなキャストたちが流れ着き、過去の実はそうでもない栄光とプライドもぶつかり合うあたりを描くのが笑いのポイントになっています。そこに温泉偽装やら、外国のキャラクター総出演遊園地のネタ、社長と元温泉芸者のあれこれなどを挟みながら、賑やかな構成。

ものがたりというよりは、その断片を笑う感じ。彼らの作品の中ではいわゆる下品さとか、脱いでなんぼという部分が少なくて(それでも客席が引いているのが判るネタもあるのだけど)、全体としては見やすく作られています。物語らしいものはあるのだけど、ほとんどは登場人物たちの人生の背景とその結果の癖のある人物描写に当てられていて、物語を楽しむ感じというわけではありません。

遅めに入って足下が楽だからという理由で最前列中央通路脇に座ったあたしは案の定、客いじりの餌食になり、一緒に妙な踊りまで踊る羽目に。ええ、もちろん楽しむ訳ですが。頭を抱える知人の姿が目の端に見えたりもして。そのシーンはどうだったのか、見えないアタシなのですが。

女将は浮気故に怒りのもって行き場がなく、鬱屈を信心に向けていくという姿はステロタイプなのだけど、わかりやすくてしかも仏団という特性にあっています。

あのキャラクタこのキャラクタもでてくるのだけど、一番ヤバい著作権ゴロのあそこに手を出さないのは賢明。一方で、テーマパークネタを今取り上げて「この山車、大丈夫?」というひとことを取って付けたようであってもちゃんと織り込むのは小劇場の芝居の姿としては新聞読みっぽくて正しい。

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2008.01.13

速報→「目を見て嘘をつけ」KAKUTA

2008.1.12 19:30

KAKUTAの新春のステージ。厚みのある大人の領域の芝居を着実に歩む130分。岸田國士戯曲賞候補になっている作家の新作。16日までシアタートラム。12日13日夜にはトークショーイベントを終演後に(12日は30分弱)。

海の近いところの古くからある蕎麦屋。女子高生も先生も事務員は来るが客は少ない。二階の部屋では霊視すると称する商売。祖母は本当に出来たらしいが、死後に継いでいる祖父はあきらかにインチキで。次男は真面目に家業を継ぎ、三男はインドに行くと行って聞かず。長男は30年以上の悩みを抱えて、光が見えたところ。「誰にでも問題はある」人々。
行き場を失った同級生を次男が呼び、その妻は同級生がマネージャーをしている漫画家を。

若い地に足のついた感覚の言葉を書くことが魅力だったKAKUTAは劇団員が30歳を超えた前回公演あたりから、より大人の物語にシフトしています。家族全員が問題をかかえながら、距離を絶妙に取りながら、それでも暮らしていくといく物語は、間違いなく大人の視線なのです。ちゃんと人生を積み重ねてきた人々の物語は、まだ作家にとっては少々ヘヴィーに過ぎている感じは残りますが、まあ時間が解決してくれることだと思います。

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2008.01.12

速報→「世界でいちばん俺が好き!」開幕ペナントレース

2008.1.12 14:30

全員がアフロヘアーという出で立ちで高いテンションのパフォーマンスを行う65分。あたしは初見です。14日までOFF OFFシアター。

いくつかの断片。勤務先からボーナス代わりに貰ったアンコの和菓子を囲んで車座で話す男たち。新婚のはずの男が、妻・チヒロがいなくなってしまった原因は結婚式の挨拶のせいだとか。漫才風のパフォーマンスとか。お好み焼きを食べようとする男3人とか。

全体は5分から10分ぐらいのコント風だったりダンス風だったりを12,3程度の断片に。全員がアフロ、Tシャツという出で立ちで高いテンションで見せます。コント風ではあるのだけど、確実に笑わせるようにはできていなくて、シュールなオチになっているのかどうかも、今ひとつわかりません。サイトを見た感じだと男くさいテンションのパフォーマンスを主眼としているよう。見ている側も頭の上に?マークが点滅しながら見ているような感じなのだけど、時間の短さやテンション芝居もあいまって、目が離せない感じにはなっています。

チヒロとか、お好み焼きなど、いくつかの断片に共通して現れるモチーフがあります。結婚式だったり、チヒロの家族たちの挨拶風景だったり。終幕近くには、チヒロとお好み焼きとか、トロイアの女とか、わけあり風にどこかうっすらつながった物語を感じさせますが、明確には示されません。

アンコにまみれた和菓子を囲みながら、「ボーナス代わりに貰ってきた」みたいな会話をしたり、ヘルメット姿の男たち三人が会話する中、上から小石がぼちぼち落ちてくるシュールさ、お好み焼きが焼ける過程を全員でパフォーマンスする、というような断片は嫌いじゃない感じがします。物語があるか、あるいは問答無用に強烈に笑わせるような感じだと、見やすいなぁと思うのですが。

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速報→「翼をくださいっ!さらばYS-11」ギンギラ太陽's

2008.1.11 19:00

福岡を拠点にする「かぶりもの劇団」二回目の東京公演。あたしの涙腺は緩みっぱなしの130分ほど。14日まで天王洲銀河劇場。

新規参入組で初の黒字化を達成したスカイマークエアラインズ、その一号機が語る、参入当初の苦労話。98年に半額運賃で参入したものの大手や海外航空会社との熾烈な争いは、やがて九州各地の空港を巻き込んでいく。福岡空港で邪険に扱われたスカイマークの一号機はかつては飛行場だった雁ノ巣の格納庫跡に追いやられる。そこで偶然であったのは、日本の民間路線からは消えて久しいYS-11だった。

「人間が一人も登場しない人間ドラマ」のキャッチコピーどおり。人間どころか生き物でもなく、かぶり物の役者たちは時に飛行機、時に車両、時に建物になります。新規参入のスカイマークや最後の国産旅客機YS-11、あるいは戦中戦後の飛行機の物語を織り交ぜながら、「やっとの想いで手に入れた自分たちの翼」の物語を時にコミカルに、時に濃密に描いていきます。 チラシやwebなどでの見た目には相当コミカルですが、どうしてどうして、アタシはかなり早い段階からダダ泣きの状態になるのです。

乗り物というよりは、このてのインフラの物語、プロジェクトXっぽいことも含めて大好きなアタシです。終演後のトークショー(10日11日に設定-TEAM NACS・森崎博之)によれば、建物や飛行機・航空会社という無機的なものでも、「それを支える何百人、何千人という人々の想いの結晶」をシンボリックに表して芝居にしているという描き方が、アタシの涙腺を更に絶妙に刺激します。

銀河劇場という規模の劇場をほぼ素舞台で使っているのですが、かなり健闘しているし、思ったよりもちゃんと空間を埋めきっていると思います。二階席正面から観ても、いくつかのシーンは実に美しくきちんと作られています。

しかし、なのです。TEAM NACSで味をしめたかどうか、地方の劇団を一本釣りしてテレビの情報番組でちょこちょこプロモーションし、大きな劇場で芝居を打つというやりかたをしています。客席にも明らかに芝居を観る層とは違う、スーツ姿のオジサン二人組、のような人も目立ちます。 アタシはこの規模の芝居は、アプル・本多劇場クラスで見たい。週末も毎日一回しか公演しないで大きい箱を使うぐらいなら適正規模で二回まわしてほしいと思うのです。さらに望むことは継続していかなければ、と思うのです。一気に呼んで規模を、なんてことで飽きられてしまうなんてことが万が一にもあってはならないと思うのです。

前説代わりには、西鉄バスのかぶり物をした役者たちが客席をまわり、写真撮影タイム(たとえば)を作っているのは盛り上がりにも適切だし、「今は撮ってもいいけど、芝居始まったら電源を切れ、他の芝居でも写真なんかとっちゃダメだぞ」ということを実に自然に納得させる流れで巧いなと思うのです。

(2008.1.21追記) どこかでかぶり物芝居見たな、と思っていたら、遊気舎系のイベントでした。わはは。

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2008.01.09

賞レース

音楽の世界は年末が賞レースですが、小劇場はなぜか新年に集中。公開されているものばかりではないようですが、あちこちの劇場の賞(たとえば)の発表とか、今年は観客投票だとこことか、そういえば今年初めまでのこれはどうなったとか。

賞を取ったモノが一番凄いとは限らないわけですが、肩書きってのはあって損はありませんしねぇ、記憶力がザルなアタシでも、憶えやすくなるし。もちろん、観た人、誰かの心に残るってのがイチバンなんですが。

久し振りの仕事、3連休が待ち遠しい。

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2008.01.07

速報→「キル」NODA MAP(二回目)

2007.1.6 19:00

初日近くに観てからほぼ一ヶ月ぶり。年末に云われていた妻夫木聡の喉はちゃんと回復しています。びっくりするほど、ヒロスエは変わらず水準を維持しています。むしろ、野田秀樹の喉が心配な感じなのは初めてでアタシは戸惑います。

妻夫木聡は復活しただけではありませんん。一ヶ月を経て声にもどこか凄みの片鱗が見えるようになってきたおかげで、見応えがあります。とはいえ、今までに比べれば主演の2人以外もかなり若い座組ですから圧倒的にアタシの気持ちを震わせるには、残念ながら至らないわけですが。

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速報→「手オノをもってあつまれ!」スロウライダー

2008.1.6 15:00

スロウライダーの新作、少々取っつきにくさはありますが。云われるほど複雑な話ではない気がします。120分たっぷり。7日までTHEATER/TOPS。

スラム化した団地。外国資本の城下町となり、日本人がむしろ低い階級になっている。ナンミンと呼ばれる区域外からの労働者やジモティと呼ばれる地元民、企業の資本階級など、さまざまな階級が出来ていて一触即発の状態になっている。
企業の出した一種の害毒の影響で、見られると爆笑されてしまう顔になってしまうという被害者がでていて、頭に紙袋を被って生活している。その中の一人の女は、恋仲の男とキスをしたいと願うが、大笑いされてしまうためにかなわない。それを解決するためにサダコさんと呼ばれる司祭のもとに行き、まじないをしてもらうが失敗し、蛇に姿を変えてしまう。

まぶしいばかりに無機質な白い舞台、奥にはヒモ状のすだれを幕の代わりに。中央奥の出捌けをうまく構成していることも含め、実に美しい舞台です。 ネタバレかも

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2008.01.06

速報→「サバンナの掟」柿喰う客

2008.1.5 19:30

とある地方都市。援助交際を斡旋する女子高生たちのコミュニティー。その仲間の女子高生が客の男に暴力を受ける。別の女子高生は昨晩から連絡が取れない。
援助交際を捜査しようとしている刑事、上司の許可が出ない。いつも銃をこめかみに当て、死にそうなスリルが快感で抜けられない。
女性初の総理大臣、お忍びでやってくる。実はレズビアンで、女子高生を買うためにスタッフを連れてくる...

30人の舞台。高低はつけているものの、ほぼ素舞台。タッパも幅も奥行きもある舞台の広さはさすがに今までとは勝手が違うようで、工夫は見えるものの、さすがに空間を埋め切れているとはいえません。が、捨てキャラもあるとはいえ、この人数を空間を交錯させながら語る語り口はさすがに巧い。役名を覚えられない記憶力がザルなあたしですし、劇場の規模は役者の顔がすべての席からちゃんと見えるわけには行きません。が、それぞれの人物にキャラクタや見た目などの属性をきちんとしていて、実に見やすいのです。

いままでの印象、たとえば王子小劇場やモリエールクラスの狭い舞台ならば、紙芝居のように目の前の舞台を切り替えていくことがスピード感を持ち、グルーヴ感を醸します。今作においては広い舞台に何カ所かのステージを置き、並行させたり、裏で起きたりしていることをみせています。舞台の広さの中で出来ることを最大限にやっていますが、慣れない感じは残りますし、後方から観ていると、あちこちでちまちま芝居をやっている感じになってしまって勿体ない気もします。

題材は援交だの殺人だのと殺伐としていますし、言葉は相当に下品だったりガサツだったりします。おそらく受け付けない観客も間違いなく結構いそうです。が、びっくりするぐらいに、視覚的に刺激を求めないのも、歪んだ愛情の表現も、どこか、つかこうへいっぽい感じもします。

これを観たのは1/5。 昼にゲイ、夜にレズを扱う芝居という一日でしたが、同性愛の扱いに関して云えば、夜の今作においては比べてしまうと当事者でない分、少々雑な感じは否めません。

とはいえ、ちゃんと走りきってみせるのは大したモノ。細かいところまで気持ちが行き渡っているのでしょう。たとえば死んでしまった仲間と、それが見える女が一人という処理も巧い。タバコは目の前の面倒なことから逃げる為の手段になるという視点もらしい感じで面白い。「マサコ」について語るうわさ話も、やんごとない方を想像させてちょっと巧い。

芝居そのものではありませんが、 近くのファーストフードでぼちぼちしていると、観客風やらの人々も入れ替わり立ち替わり。大きな劇場であることを素直に喜び、ほんとに楽しみにしている風の人々。上り調子の劇団固有の、周囲に見える熱気ようなものを感じます。

アタシの観た土曜夜はトークショーが設定されていました。内容というか語り口に少々疑問を感じないことはないのですが、劇場や制作がしっかりツボを押さえた進行になっていて、トークショー運営としてはかなりレベルが高かったという記がします。

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速報→「tea for two」フライングステージ

2008.1.5 14:00

サンモールスタジオ昨年春の最優秀作品賞・主演女優賞を受けて、以前の作品の再演作。115分。8日までサンモールスタジオ。

1980年、札幌のビジネスホテル。予備校の冬季講習講師として滞在している男が目覚めると、隣には見知らぬ若者が寝ていた。記憶は定かではないが泥酔しているところを助けられ、そのイキオイで、一夜を共にしてしまったのだという。妻も子供もいる男は動揺するものの、大学生だというその男と、毎年その季節になると逢瀬を重ねるようになる。

バーナード・スレイド作の「セイム・タイム・ネクストイヤー」(日本では加藤健一事務所の上演が有名)と同じような枠組み、日本の札幌、1980年からの25年間に置き換えた形の翻案。性別と時代や場所を巧く設定していることで、ある種の相似形をなすようになっていて、見応えがあります。もちろんもとの話を知らなくても大丈夫。

ゲイであることを自ら表明している劇団らしく「自分たちの問題」としてきちんと描いています。 ことさらに派手や笑いに走ることはないものの、ところどころにスパイスのように見どころを効かせていて、静かな2人芝居ですが飽きずに見続けることができます。

「セイム〜」は1950年代からのアメリカ、女性の自立やヒッピームーブメントという時代を背景とした厚みを持っていました。今作にも時代の流れが見えてきます。1980年からの25年はゲイということが、エイズなどの負の面と一方の社会的認知を受けていく期間。あるいは安定しているかに見えた仕事や家庭が必ずしもそうでもないということが露呈してしまった期間でもあります。

それも東京ではなく地方都市という設定は微妙な影と、すぐ近くに少し進んだ地域が見えるというところで巧いなぁと思うのです。

出産など、感動するポイントが数多くある「セイム〜」に比べてしまうと、妻・息子や母親や別の恋人という一本で押すことは一本調子になってしまう感じは残ります。が、これはこれで世界をきちんと描いているし、日本の話、ということで見やすいということもアタシには嬉しいところなのです。

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2008.01.04

速報→「新年工場見学会08」五反田団

2008.1.3 19:30

五反田の町工場だった建物がアトリエヘリコプターとなる前から続けている「新年工場見学会」。廻りの建物も様変わりするのを見るのも楽しいのです。「アングラのニセモノ」という芝居を2本、間にコンサートで4曲。120分。4日まで。3日夜は終演後にもう一本コンサート。去年まではレギュラーだったオムトンの澤口希と友人達のバンドを。(4日夜もあるようです)

橋の下で産み落とされた赤ん坊が自殺しようとしていて夫婦の夫に拾われるが妻は死んでしまう。夫は赤ん坊を育てることにする。見世物小屋に入った二人が観た世界「珍徳丸(ザ★天井)」。
母の胎内で30年居続けた男・黒田が産み落とされる。中学17年生として学校に通うがその学校に大量の寄付をしている老人・白田が云う「思いやり予算倍増」をどうしても許せずに。「思いやりをすて、母を出よ(劇団黒田童子)

アングラというもののイメージは何だろうと思うのです。アタシの印象だと小劇場の中だと桟敷童子のフォーマットが近い感じです。この2作でいうアングラはどちらかというと暗黒舞踏に近い感じを受けます。これもアングラっていうのかなぁ。どちらも生まれ出て、母の死で、みたいなところをアングラの感じ、と読んでいるようです。

「珍徳丸」は物語を追うのはそう大変ではありませんが、時間が長いこともあって印象としてはスルリと抜けてしまって残らない感じ。岩井秀人が圧倒的に記憶に残ります、その瞬発力はライブの合間のトークにもかいま見えます。見世物小屋の女役の木滝りまの「痛いキャラ」的なものはアタシの好みではないかんじ。繰り返すことでさらに馴染めない感じがします。

「思いやり〜」は、ライブの合間のトークに寄れば、「アングラは反体制だろう」から発想し、反体制のシンボルとしての「思いやり予算反対」なのだそう。それはともかく、芝居としてどちらが好きかと云われたら短めで筋肉質、しかも盛りだくさんなアタシはこちらを取ります。五反田団が得意としていた、中2男子的な造形は真骨頂で、家に戻ってきて母親に学校でのことを話すあたり、喧嘩の仲裁に中途半端に入るあたりは圧巻です。更に80年代小劇場的だったり、フォーマットが自在に変化して飽きさせません。それがアングラか、といわれるとまあ違うわけですが(^^)。

ライブの方は去年までのオムトンに変わり、京都からのザ・ノーバディーズ。脱力系とでもいえばいいのか、ちょっと毛色の違いに戸惑います。おまけのライブのほうも含め、各1曲で斎藤庸介による即興のダンスを入れていて時間が長いこともあり結構圧巻。ダンスに疎いアタシですが、こういう見せ方はちょっと嬉しい。

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速報→「火宅か修羅か」青年団

2008.1.3 15:00

青年団の代表作のひとつ。12年ぶり再演。85分。14日までこまばアゴラ劇場、そのあとキラリ☆ふじみ。あたしは初演(しかも初青年団)観ていたようですが、記憶がっ。

旅館で執筆する父親を訪ねる娘たち。そう年齢の変わらない再婚相手の女性を初めて紹介されたりもする。同じ旅館に宿泊する、高校ボート部OBの人々、わけありげな男女。

初演は見てるのかどうか怪しいのだけど、どこかで見ている物語。父親を巡る娘たちと再婚相手の女性の間の揺れ動く気持ち、というのが軸となる物語なのだろうけど、そこにはあまりアタシの気持ちを揺らしません。

むしろ、スタンダードな青年団スタイルの芝居を味わう感じなのです。完全に並行して進む二つの会話、他方の会話が間に漏れ聞こえて来るものをつなぎ合わせながら、うっすらと様子がわかってくるうち、三女がOB会の一人に、会話に漏れ聞こえていた過去の事故のことを尋ねたり、聞かれた側もうっすら漏れ聞こえていた作家らしいことを聞いたり。非日常の場所ゆえの他人途の会話が始まるところが実にスリリングな感じです。旅館の人間関係やら、謎っぽい男女の会話にしても立ち聞きというのではないけれど漏れ聞こえてきたものから転がる話。

むしろその技術的なところ、方法論のようなところが全面にでている感じがして、あまり心を揺さぶられない感じはあります。アゴラ劇場は狭い劇場ですが、遠い方のテーブルでされる会話は、距離以上に遠く感じます。アタシは下手でしたので、上手側の椅子の会話が遠い感じなのです。

旅館の二人についてのあれこれとか、編集者が作家の娘から渡された漫画で作家に叱責されるシーンなどのシーンでは笑いも多く。初演のころは笑いなど起きていないでしょうから、演出がかなり変わっている、ということかもしれません。

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2008.01.01

2007年私的ベストテン

遊びすぎがたたり、かなりのことを残したまま年を越してしまいました。まあ、それでも酒はやってくる(違)。さだまさしの年越し番組を横目で見ながら、ぽちぽち書いてみたりします。実家にPC持ち込むのは便利だなとちょっと思ったりもしつつ。

毎年のことですが、気持ちの残ったものを選ぶことにしています。全体を見渡し切れていないのと、50本ぐらいから先を絞り込むのはもうホントに難しいのですが、季節物ということでご勘弁くださいませ。

去年・2007年は芝居が279本でした。今年の一覧表はGoogle documentを使ってみました。結構便利な気がします。

今回もWondarlandの回顧特集に載せていただいております。そちらともかぶりますが、まあご容赦。「振り返る 私の2007」。CoRichはどうしよう。折角だから、ここと同じようにして投票しますか。

去年の感覚としては格差を描いた芝居が多かったのと、その反動としてかどうか、女性の強さを意識した感じでした。女性は既に男性を必要としていないのではないか、ということは感覚でそう感じるだけなのだけど、芝居のそこかしこに感じる、ということはも一度どこかで考えてみたい気がします。

もう一つの去年の話しとしては各種のコンテスト・ショーケース類があげられます。CoRichの演劇祭や、15minutes madeというスタイル、あるいは新宿村LIVEやお台場SHOW-GEKI城など。いい結果のものもありましたが、短かったりその場の特性を生かす劇団は決して多くなかった感じがします。次のステップに期待しつつ。

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