【芝居】「夜のジオラマ」SPIRAL MOON
2007.12.6 19:30
スパイラルムーンの十周年記念シリーズのひとつ。ジャブジャブサーキットのはせひろいちの手によるSF風味。9日まで「劇」小劇場。120分。
煉瓦づくり、少しわかりにくいところにある隠れ家風情。逃れるように引っ越してくるルポライター作家の女。離婚し娘とも息子とも離れて。謎めいた不動産屋は、契約の条件として、部屋にある調度品はそのまま使い続けることと、退去の時には何か一つ、物を残していくことを求める。
ネタバレかも
2007年、2037年、2019年とその数年後。同じ場所、同じ調度品、つながる人々、変わらないこと。緩やかにみえてくるつながりはやがて、かっちりと組み合わされ、絆とか想いというものを力強く出現させるのです。
2019年にはカルト教団が猛威をふるい、危機がすぐそこに迫っているとともに人間と瓜二つなロボットが現れた頃。2037年は東京らしいこの場所に新たに住む許可がなかなか下りないような世界を描きます。すべての場面に謎の不動産屋が現れるのですが。
役者も演出も違うのに色濃く残る、はせひろいち風味。張った伏線は残らず回収する緻密さも、ロボットやタイムトラベル的なことの効かせ方も、それが現在とあまり変わらない所作の人物たちによって演じられることも作家の特性ですが、見事にJJCな雰囲気を作り出します。劇団のカラーと言うよりは作家によってがらりと変わることこそが、彼らのカラーだと感じます。
静かで、派手な転換もないままに、時間を切り替える見せ方は、作家のスタイルを知っていれば違和感がありませんが序盤ではあれと思ってしまう感じもします。
静かな感じで淡々と進む舞台は120分という時間に対して体感的に長く感じてしまったアタシなのですが、振り返ってみればずいぶんと大河ドラマを押し込んでいるわけで、みかけ上のゆるさに比べて濃密に書き込まれていることに驚くのです。
泣けるかというと、アタシのツボにははまりません。それでも想いはきっちりと、作り込まれているのです。
いいなとおもうところは、外部向けのホンゆえか、終盤近くでかなりわかりやすく解説してしまうところ。ジャブジャブでのホンは観客に察しさせる感じがして、それはそれでスマートな感じですが、べたな感じを受けさせてでも、言葉で説明してしまうのはアリな感じを受けます。
いくつかのシーンで使われるスリット状の窓からの強い光のシーンは見た目にも美しく何かが起きた感じを的確に。時間の流れに残る細かな矛盾をゴミ箱一つでつなぐのは、ことさらではないけれど、自然で巧い方法だと思います。
SPIRAL MOON 「夜のジオラマ」
2007.11.28 - 12.9 「劇」小劇場
作 はせひろいち(ジャブジャブサーキット) 演出 秋葉正子
出演 最上桂子 河嶋政規(プロペラ☆サーカス) 大田美和(広河美和改め) 田中伸一 伊藤十楽成(シアターキューブリック) 北村耕治(猫の会) 新井菜穂 戸谷和恵 浅野千鶴(味わい堂々) 岩崎雄大 野村貴浩(劇団め組)
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