【芝居】「東京裁判」パラドックス定数
2007.12.2 14:00
今年、他ユニットでの再演( 1, 2, 3) の多かった野木萌葱の新作、劇団化しての一本目は本家の力を見せつける迫力。90分。2日までpit北/区域。
東京裁判の主任弁護人席、起訴状の朗読が終わり、罪状認否にさしかかるところ。
黒スーツ姿、メガネの男、暗めの照明、ほとんど動かない人々。パラドックス定数の「らしい」フォーマットに乗せられた題材の東京裁判は、この形式にぴたりとあっていて、これが史実なのではないかと思わせてしまうほどの説得力があります。歴史の表舞台の中心とは少しはずれた場所にスポットをあてて、さまざまな発言や背景をコラージュしながら丁寧に創作された舞台は、それ自身が圧倒的な迫力を持ちます。
実際のところアタシ自身はそれほどの知識も持ち合わせないし、イデオロギーとか捉え方もさまざまなこの題材自体が史実なのかどうかにはあまり興味はありません。そこに人がいること、それぞれの想いがあり、目的があること、一枚岩ではないということさまざまな「生きている人間」がそこに浮かび上がることが、アタシにとってのこの舞台の価値なのです。
以前に比べれば、和ませ笑わせる場面を細かく用意し、しかもすぐに本線に戻す緩急のつけかたが圧倒的に巧くなっていて舞台としてみやすく構成されています。訳の分からなくなりがちな法律用語も実にうまく説明していて「わかった気にさせる」のです。枝葉の取捨選択が見事なのでしょう。以前は当日パンフに解説文のようなものが入っていたのですが、それすら無くてもきちんと見せています。
あるいは素人のような人物を置いて自然に説明する場面とすること、英語が判る人物と得意でない仁斑を置くこと、あるいは「腹が減っている」ということから、それぞれの人物の信条まで浮かび上がらせてしまうのも見事。
上演台本には、舞台上には現れない検察や判事たちの発言や、机を飛び交うメモも表現されています。が、現れない舞台のほうが、タイトな感じがよくでていて強みを感じます。映像では見せないわけにはいきませんものね、こういう場合。
パラドックス定数「東京裁判」
2007.11.29 - 12.2 pit北/区域
作・演出 野木萌葱
出演 西原誠吾 井内勇希 植村宏司 十枝大介 小野ゆたか
| 固定リンク
「演劇・芝居」カテゴリの記事
- 【芝居】「昼だけど前夜祭」劇団チリ(2024.09.16)
- 【芝居】「朝日のような夕日をつれて 2024」サードステージ(2024.09.08)
- 【芝居】「雑種 小夜の月」あやめ十八番(2024.09.01)
- 【芝居】「ミセスフィクションズのファッションウイーク」Mrs.fictions(2024.08.30)
- 【芝居】「氷は溶けるのか、解けるのか」螺旋階段(2024.08.27)
コメント