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2007.12.25

速報→「Crossing2(Aプロ)」風琴工房

2007.12.24 17:00

風琴工房が既存戯曲を使って行う企画公演。Aプロは「鞄」(安部公房)と、「受付」(別役実)。二つあわせて80分ほど。A/Bプロ構成で30日までルデコ5。これからご覧になるならば、役者の顔が見やすいよう、後ろでもなるべく正面を、あるいは下手側を。客席の段差にも気をつけて。

友人らしい二人の女性の茶飲み話。一人が開かずの鞄を持ってきて相談を持ちかける。夫の持ち物なのだが、中身について夫は教えてくれない、気になって仕方がないが、どうしたらいいだろう.「鞄」。
受付に座る女。男がやってくる。肝心の受付はできないのに無駄な話ばかり「受付」。

「鞄」は30分ほどの短いもの。鞄を挟んでの女たちのバランスオブパワーを楽しむ一本。鞄を俳優が演じるというのは、戯曲の指定のようです。当日パンフによれば、男を取り合うサブテキストを当てたのだといいます。おそらく二人の女性のテキストはいじってないのだと思います。 家庭の中、二人の間にある、暗部というか触れられたくない部分、ということが実にシンボリックな感じになっていると読めます。 鞄の中からする音、という設定は算盤から始まりさまざまな音をさせます。ダブルキャストなので日によって違うとは思いますが、初日の漫画の音読は、ちょっとやりすぎな感触があります。バランスオブパワーの緊張感に対して、わりと声量のある役者が、イキオイのあるストーリーを読んでしまうと、メインの会話が聞き取れないということはなくても、緊張感のあるはずの会話なのに、聴いている側のテンションは明らかにゆるんでしまうのが勿体ない。

「受付」は数年前にナイロン100℃が「吉田神経クリニックの場合」として上演したものの原作戯曲。電柱こそありませんが、男が巻き込まれていく型の別役実らしい一本。

わりと柔らかく、会話の速度も現代風の早さで演出されてはいますし、この演出なら笑えてもいいはずなのだけど、アタシはあまり笑うことができません。当日パンフにありますが、戯曲がかかれた当時でこそ不条理ですが、この会話のような、「かみ合うことを当初から放棄した会話」というのはそれこそ巷にあふれています。会社にかかってくる不動産だのなんだのの迷惑電話の類でなされる会話は、まさにこれがリアルなのです。その現実のときの嫌な感情が沸いてきてしまって、ねぇ。戯曲のせいでも、役者や演出のせいでも、もちろんないわけですが。

後半で「あなたは受け付けられたのです」というあたりがちょっと好き。それは私という人間が受け付けられた訳ではなくて、私のある属性の記号が受け付けられただけ、というアタシがもつ感覚によくあっています。

どちらも、今のアタシの感覚によくあったリズムで進む会話は気持ちがいいのです。反面、やはり腕力のある戯曲ゆえに難しくて、役者が戯曲を制圧して会話している、という域には達していない感じもあります。どうみても45歳には見えないだろう、というのも役者のせいではありませんが、たとえばナイロンの「病気」(これも別役戯曲で、中年男性巻き込まれ型)では小林克也が演じたのを見ていると、あの年齢ゆえの何かがあったのだなぁと思うのです。 特に時間の長い「受付」ではやはり大変だという感じで、テンションをあげればあげただけ平板になっていくというジレンマもあって。徐々に巻き込まれている男の傾斜と、平板に言い放つ受付の対比が欲しいと思ってしまうのです。

とはいえ、手慣れた座付き作家ではないテキストと定期的に格闘していく、というのは特に役者の底力をあげていくわけですし、アタシのようにちゃんと読んでない戯曲が多いいい加減な観客にはバラエティのある戯曲との出会いにもなるので、見慣れた劇団でそれがなされると結構うれしいわけですが。

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