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2007.11.17

【芝居】職員会議」studio salt

2007.11.16 19:30

横浜の劇団、スタジオソルトの新作は2週末にわたるロングラン。95分とのアナウンスのあとの2日目は90分ちょうどぐらい。日替わりのゲストを迎えながら25日まで相鉄本多劇場(月曜夜は別イベント)。

中学校、まだ暑い9月の午後、職員室の工事で、教室を使っての職員会議は迫った体育祭についての議題のあれこれ。

学校の芝居なのに生徒が出てこない芝居。教師でないアタシにとっては、今からおもえば、職員室というのは普通の大人たちの場所。それぞれの関係の難しさやある種の幼さがあるのは、アタシが四十超えたからの感想かも知れません。

ネタバレかも

治安も偏差値もあまりよくない、いわゆる底辺校。教師だって望んで居るわけじゃなく、それでもそれなりには前向きで。余計なことをさせないためにイベント漬けにする、という話はどこか他でも聞いた気はします。

職員会議では黒板に書かれた9つの議題、本人たちはいたって真剣なのだけど、その世界の外から見ているアタシにとっては、その真摯さゆえにずれてしまった感じが愛おしいのです。来なくなった教師、服装、校歌斉唱、生徒たちのコントロール、理科教師のズレ具合、父兄の面倒くささなどが、脈略なく議題に上り、それぞれが真剣に、しかし根本的には解決していない感じにこなしていくのです。

会議後半の話題、「宴会要員」の議題はどこか「召命(弘前劇場または畑澤聖悟)」に似ている感じはします。が、それは話し合いではなく、「雰囲気が生け贄を生む」という意味でより日本人ぽい感じはします。芝居のダイナミズムは薄まるかわりに、「ありそうな感じ」はよくでています。教員たちの立場が最初からバランスしておらず、決められた生け贄をどうして差し出すかという意味でより悪質。この痛みの感覚はホントはアタシにはわからないのだろうけれども、刃を突きつけられたような感じを受けるのです。

会議の間は、何が起きているかはわかっていても、芝居として見ると物語を語るでもなく、関係や空気をひたすらに描いている感じがします。そういう芝居はわりと役者の力で作り込まないといけないし、わりと自然なスタイルの芝居にしないと違和感を生みがちです。今作に関して言えば、その部分、役者も決して巧い人ばかりではないし、「芝居っぽい」した感じの人も居たりとわりとばらばらな感じなのは決してプラスの要素ではありません。それでも、その「ばらばら感」は結果としては、まとまるようでまとまらない会議の雰囲気は良く出ています。エイサーという沖縄の踊りを、慣れない教師達がばらばらに踊るというあたりは少し好き。

むしろアタシが好きなのは終盤。会議のあとなのです。それまでとは随分違う雰囲気なのだけど、このシーンのためには会議の部分の細かいことが効いてきたりはします。不器用な人々の、ごく小さな細かい話なのだけど、ここの空気感が絶妙なのです。キレイにまとまりすぎているとも云えますが、アタシはそこで泣いてしまったり、中学生の初恋のようにキュンとしたりするのです。

ゲストのシーンの大枠は同じなのだといいます。16日のゲストの岩本幸子(イキウメ)は、誘われた呑み会を断りながらも最後にちょっとうれしさをにじませるあたりが絶妙。さすが。

Studio Salt「職員会議」
2007.11.15 - 11.25 相鉄本多劇場
作・演出 椎名泉水
出演 桑原なお(タイムリーオフィス) 丸尾 聡(オフィスプロジェクトM) 平沼寧(オフィスプロジェクトM) 高野ユウジ 環ゆら 東享司 両角葉 麻生0児 木下智巳 長慶子 小川 雅功(劇団川崎演劇塾)

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投稿: 国松里香 | 2007.11.17 21:57

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