【芝居】「西国分寺物語」散歩道楽
2007.11.2 19:30
本公演は久しぶり。散歩道楽の新作は寺内貫太郎一家をモチーフ、序盤はそのフォーマットを使いつつ、固くても、終幕30分は実にいいのです。120分弱。4日までサンモールスタジオ。
西国分寺の一軒家。縁側があって、畳の部屋があって。寡黙で怒りっぽい父親がいて、意地悪ばあさん的祖母がいて、恋人を連れてくる三十路過ぎの娘がいて、騒がしい家の中、切り盛りしてるのは母親で。2年後の家の中、母親が運動に血道をあげて。
金曜夜に関していえば、前半はどうしてしまったのかしらというぐらいに気持ちがかみ合わないのです。あとから思えば演出の意図かと思う祖母(樹木希林は、そういえば当時は若かったのだよなあ)と母親の年齢の逆転のギャップも意図がわからない感じがするぐらい。見かけの下町では当たり前の、がさつな会話。が、印象とは裏腹に細かく書き込まれた言葉をあとから思い出します。
ほんとに細かな違いで印象ががらりと変わってしまうぐらい細かく書き込まれています。2007年になってそれまでうまくまわっていたものが、若夫婦が受け継いでうまくまわらなくなるバタバタ、夫婦のぎくしゃく、店子の顔見世を挟んで、兄弟の確執とか。
作家は当日パンフで自身のプライベートを少し告白しています。そういえば浮かび上がる夫婦の会話とかすれ違い。近くにできるマンションの反対運動にのめりこむ母親は、やがて明らかにおかしいことが明かされて行きます。が、そこでは終わらない、そこまでする理由はきちんと語られます。それはかなり無理矢理な理由なのだけど、それをきちんと納得させる終盤。そういえばそれは前半の祖母の台詞に端を発していて。それを父親がちゃんと受け継いでいて、たとえば息子が父親に似てくるということと同じように、「想いが受け継がれていく」ことの、濃い家族の姿を見せていきます。
終盤、父親の再登場からの部分は、しっとりと物語。更に押し詰まってから訪れる教え子は、物語の雰囲気をシフトする点になります。家族達がみることのなかった教師としての父親。父親との距離を兄弟で違った取り方をすることなど、終幕でこそ「居なくなった父親」の姿が重厚に立ち上がるのです。
散歩道楽「西国分寺物語」
2007.10.31 - 11.4 サンモールスタジオ
作・演出 太田善也
出演 石川美帆 鉄炮塚雅代 天野幹也 郷志郎 藤本樹子 竹原千恵 キムユス 椎名茸ノ介 蘭胡蝶 植木まなぶ いしいせつこ 名取幸政(青年座) 山本与志恵(青年座) 前田こうしん(道学先生) 辻川幸代(ニュアンサー) 坂口候一(81プロデュース/一の会) ザンヨウコ(危婦人) 菊池美里(トリコ劇場) 斉藤佑介(サワズカムパニー)
| 固定リンク
「演劇・芝居」カテゴリの記事
- 【芝居】「エゴ/エバ」酔ひどれ船(2023.01.28)
- 【芝居】「すずめのなみだだん!」やみ・あがりシアター(2023.01.22)
- 【芝居】「gaku-GAY-kai 2022 贋作・テンペスト」フライングステージ(2023.01.19)
- 【芝居】「RAIN~改訂版~」螺旋階段(2023.01.12)
- 【芝居】「パンとバラで退屈を飾って、わたしが明日も生きることを耐える。」趣向(2023.01.08)
コメント