【芝居】「傷は浅いぞ」柿喰う客
2007.11.18 19:00
ここのところ毎月のように規模のある公演を続ける柿の新作は劇団員だけの四人の強いテンションで走りきる75分。26日まで王子小劇場。24日昼に追加公演が設定されています。
鼻血で血まみれになりながら歌番組に出たために干されたアイドル。唯一オファーのあった番組は「電波ガール」。3週間の勝ち抜きで冠番組や写真集などの魅力的なオファーのアイドルゲーム番組。が、それは決してクリアできないどころか、出演したアイドルが皆引退に追い込まれるという番組だった。
劇場の幅いっぱいの円柱を斜めに切り落とした八百屋舞台。たった四人で出突っ張り、高いテンションで走りきります。人数の多い芝居すらなんの問題もなくこなす彼らです。その人数の少なさがハウリングしそうなテンションでそのまま続くのです。
たしかに云われるとおり、普段よりも更にいわゆるつか芝居に似ているところがあります。強烈なテンション、がなるような発声、フォーマットだけではなく、気持ちの奥底に強く切り込むような刃の切れ味もにています。たぶん違うのは当日パンフに作家自身が書いているような、不幸を現実として体験していないということなのかもしれませんが、そんなことはどうでもいいぐらいに見せ続け、走りきるのです。
ダンディな役柄の多いコロは今作ではさらに格別。強いテンションのヒールという位置づけは普段から多いのだけど、後半で見せる女らしさの片鱗も素敵。主役のアイドルを演じた深谷由梨香は崖っぷちアイドル特有のB級感も魅力的なのです。マネージャーを演じた黒一点の玉置玲央はいつも通りの魅力、珍しく脱がないのですが。七味まゆみは役柄として一歩引いた感じですが、要所を押さえます。
芝居だけでなく、いわゆるプロモーション力の強さも彼らの魅力なのです。2週間のロングランのために鏡割りイベントとか、トークショーとか、演出を変えたバージョンとかを企画として繰り出す思いつきのすごさとか、それを実現してしまう制作力。制作といえば、猫耳のサービスだけではなく、張り紙や案内、受付や開演前の告知などが実に丁寧で、グッズ販売の充実なども含め、彼ら自身が意識しているかは別にしてキャラメルボックスのネビュラにも匹敵する感じがします。大きくなる劇団の片鱗を感じさせます。 15分版はきちんと前半のエッセンスで、こういうことを次々と打てるというのも強み。アタシが拝見したのは鏡割り&振る舞い酒イベント。割られた樽から出てきたのは、「傷」に因んでの真っ赤な赤ワイン。いや、こういう細かいセンスが実にたいしたものです。
柿喰う客「傷は浅いぞ」
2007.11.14-11.26
作・演出 中屋敷法仁
出演 七味まゆ味 コロ 玉置玲央 深谷由梨香
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