【芝居】「コントローラー」北京蝶々
2007.11.23 19:30
北京蝶々の新作。90分、早稲田大学大隈講堂裏劇研アトリエ、23日までの公演は終了。
音大時代の同級生の女二人。仕事を辞めた同棲男の代わりに働きに出た女は、音大時代に寮で一緒だった同級生の女の家に行く。ピアノ教師を辞めた彼女はデイトレードで稼いでいるのだという。絶対に損しない秘密は、過去の生活や行動をデータとして入力することで未来を予測する一種のネットワークコミュニティなのだという。その中で彼女は大学時代の寮での生活を分身として緻密に再現していた。
セカンドライフのようなアバターを使ったコミュニティを枠組みに、その世界を俯瞰して見ているという視点が全体のベース。序盤のシーンは終盤のシーンの「未来予想図」になっているのだけど、その予想とは違うことが起きて、最後はほろ苦い感じを残します。
「電子マネー」や「ネットの民意の危うさ」など、テクノロジーに近い時代の空気を自分のものにして芝居を作り上げているという感じは、ありそうでなかなかない感じなのですが、アタシはこのタイプの題材が大好きです。第三舞台の「朝日のような夕日をつれて」にハマル気持ちも、そこに端を発しているのですが、芝居としてのテンションはともかく、時代に対する視線の確かさのようなものは感じます。
コントローラといタイトルは、そのゲームを俯瞰する人、という枠組みの他に、自分のまわりの出来事、とくに同級生の女を自分の思い通りにしようとして、嘘を塗り固めてコントロールする、ということが物語が進むうちに見えてきます。
ここまでの固執の理由付けとか、その割にはものすごい久しぶりらしい出会いとか、納得しづらい感じがするのも事実です。 序盤が終盤に対しての未来予想図になっているなどは鮮やかな感じもしますが、仮想世界が現実を追い越す瞬間というのがこの構造の中ではもっともクライマックスになりうるのに、意外なほどあっさり。アタシはここにわくわくが欲しい感じもします。「こういうタイプの人たち」を丁寧に描いてはいるのですが、物語が転がらない感じは少しモドカシいのですが、これこそが、「セカンドライフ」的な箱庭世界を眺めている、ということなのかもしれません。
二つの場面を行き来させる見せ方や構造はなかなかこなれていて巧い感じがします。笑いを抑えて、静かでナチュラルな芝居が多いのも彼らの成熟を感じさせます。
北京蝶々「コントローラー」
2007.11.16 - 11.23 早稲田大学大隈講堂裏 劇研アトリエ
作・演出 大塩哲史
出演 赤津光生 帯金ゆかり 鈴木麻美 森田祐吏 垣内勇輝 岡安慶子 田渕彰展 白井妙美 松崎美由希 桜井健太郎
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