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2007.11.04

【芝居】「砂漠の音階」風琴工房

2007.11.3 19:00

初演(稽古場初演)のあと、夏の北海道公演を経ての凱旋。105分、4日夜まで

北大の研究室、寺田寅彦の愛弟子の男。留学から帰国して北大で始めたのは雪の人工結晶研究。その大切な一日。

土曜夜のトークショーによれば、山内健司呼ぶところの「前向きシリーズ」、つまり作家は現実がすべてプラスではないことをわかった上、あえてプラスを敷衍する流れ。芝居として見ると、流れがどこか一直線な感じだったり、ことさらに声を張る役者が居たりと芝居っぽい不自然さも多く残るもの確か。もっとも、バンカラなど時代の背景をあわせて考えれば納得できないわけではありませんから、そういう意図なのかもしれません。研究室というものは遠い学生時代の記憶しかありませんが、理系的ながさつさとか、女性がほとんどいない独特の空気はアタシの腑に落ちる感じがします。

初演も見ていますが、先生とか研究者という説得力は初演よりも今作の座組に強みがある感じがします。どちらも癖がある役者ですが、プリンストン帰りの理論物理学者にしても、中谷教授にしても、研究者らしくみえる気がします。

劇場も初演とは変わった要素の一つです。先生の席が一カ所のために上手側の客席にはよくても下手端では主軸となる先生の表情がみえなかったりというのは初演とかわらないのですが、客席の通路を花道的に使い、客席後方に低温室があるように作られています。結果、舞台から客席後方に向かう人々の表情を印象的に見せることが出来て、たとえば理論物理学者が低温室に走り出すあたりとか、秘書の女性の出入りの表情など、「他の登場人物たちには見えない一瞬の表情」のクローズアップを、役者が客席を向いても不自然じゃないやりかたで見せるという点で秀逸なアイディア。

昭和11年の3月という時代の背景、戦時研究とも関係のないある意味牧歌的な、しかし札幌という場所の距離はいかんともしがたい時代を選び取るのは作家の力。先生と妻の話は感動を呼びそうな寸前でとめるのも巧い感じ。個人的な好みからいえば、もうすこし起伏がある物語を期待してしまうのだけど、このやさしい作家の視線は、あたしの気持ちにはすとんとはまります。

風琴工房「砂漠の音階」
2007.10.30 - 11.4 シアター風姿花伝
作・演出 詩森ろば
出演 山内健司(青年団) 小高仁 松岡洋子 笹野鈴々音 浅倉洋介 山ノ井史 宮嶋美子 北川義彦

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