【芝居】「雨の一瞬前」ユニークポイント
2007.10.14 15:00
ユニークポイントの新作は、太平洋戦争中の東京の古い旅館を舞台に当時の朝鮮人と日本人との関わりを描く90分、14日までシアターグリーンBox in Boxシアター。
戦争も末期になり、本郷近くの古い旅館。両親が亡くなり姉妹で引き継いだものの、時節柄営業もできず休止している。姉は毎日の手入れを欠かさず再開の日を待ち、妹は軍需工場へ働きに行く。姉には近所の傷痍軍人が言い寄ってきたりする。ある日、脱走した朝鮮人の男たちが二人けがをして訪れる。
そこにあった差別というか恐れや深い恨みの、ある視点ではきっとあったであろう感情をあぶり出すような構成。特定の史実をとりあげているわけではないようで、作家の創作なのでしょう。
全体に隙がなく作られています。傷痍軍人が殺されることで、この旅館の中で共生する関係が生まれるというのは「なぜ行かないのか、行かせないのか」ということに一定の理由付けをしています。姉の同級生とその連れという二人を登場させることで綻びの端緒をつくり、作家の想いのようなものを語らせる場もつくります。
それでもアタシに腑に落ちないことはいくつかあるです。同級生が連れてきた傷痍軍人の妻、明らかに常軌を逸している彼女を知り合いでもないのに連れてきたのはどうしてだろう、きっかけは何だろうとか、その彼女は(一応の説明はしているにせよ)軍医を見かけて声をかけるには関係が薄いのではないかと思ったり。あるいは姉が旅館再開にかける想いが、アタシには少々ぶれます。当初の印象は理由付けだけかと思ったのだけど、心底そう思っているようで。
韓国人の俳優を招くことでの言葉の音に確かな感じ。主役の姉を演じた洪明花が翻訳を行っているという劇団としての力を感じます。
セットは美しく上品な日本家屋という雰囲気によくあっています。イデオロギーとしてはいろいろありましょうが、局地的にはあっただろうと想いを馳せることは重要だと思うのです。
ユニークポイント「雨の一瞬前」
2007.10.11 - 10.14 シアターグリーン BOX inn BOX THEATER
作・演出 山田裕幸
出演 山路誠 安木一之 チョソンヒ 中村匡克 北澤輝樹 東誠司 洪明花 衣川真生 高田愛子 大野由美子
| 固定リンク
「演劇・芝居」カテゴリの記事
- 【芝居】「メモリーがいっぱい」ラゾーナ川崎プラザソル(2025.02.12)
- 【芝居】「Yes Means Yes」serial number(2025.02.02)
- 【芝居】「飛び出せ!還暦」おのまさし(2025.01.22)
- 【芝居】「父と暮せば」酔ひどれ船(2025.01.19)
- R/【FORKER】遊気舎(1999.04.24)
コメント