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2007.10.28

【芝居】「私の知っている男は、これだけ」mon

2007.10.27 14:00

女ふたり(山本ゆい+大久保亜美)のユニット、monの新作。語っていく中で、薄れていく記憶を語るかのような60分強。28日までギャラリー・ルデコ4。

姿を消した女についてのインタビュー。さまざまな人々、アクアリウムセラピーに通う男たちだったり、友人らしいおんなたちなど。

消えた誰かに対するインタビュー、その背景となるいくつかのシーンをつなげていく構成。たぶん自覚はしていないと思うのだけど、チェルフィッチュに感じる語り口。暗いといわれる女、消えた女と唯一電話をしたらしい女、その恋人の男、その男が通うアクアリウムセラピーをやっている熱帯魚屋店主と、同じセラピーを受ける客の男を並べ見せていきます。大久保亜美演じる女がすべてのハブ、つまり中心になって見えている、ごく狭い、しかしゆるやかにつながっている人々を、ゆるく描くのです。

ねたばれかも

消えた女は結局姿を現しません。そのうえ消えた彼女について語られる言葉はほとんどなくて、「そんな娘いましたっけ」という台詞に代表されるような印象の薄さ。むしろ消えた女よりもまわりの人々がいくつも面白く見えてしまうシーンが数多くあります。 そのため観客は彼女についての手がかりを殆ど持ちませんし、周りに広がる人々の間で彼女についての想いが見えてくるわけではありません。人々から消えた彼女への距離が等距離ならばまた違って見える気もするのですが、ほとんど知り合いの友達の友達、ぐらいの遠い距離にある男が語る言葉は、物語にしずらいのです。

観ているアタシにとって中心に見えているのは、先に書いた、「消えた女と唯一携帯電話で話す間柄の」女。その彼女から発せられる、「あれから一年経ったんだ」という言葉は、そのころからの記憶が時間と共に薄れていく感覚をアタシに感じさせます。

観ていて面白いシーンはいくつもあります。怪しげ無理な前向きなセラピーの違和感とか、バイクで送る男とタンデムに座る女の気持ちが「まとわりつく」ような感じのシーン。そのあと、男が帰りたいと云って、盛り上がった気持ちのもって行き場がなくなってしまう女の葛藤と、それでも冷たいぐらいに別れ、走り去っていく男の後ろ姿を罵倒したくなってしまう気持ちの男女二人のシーンの流れは圧倒的にあたしの気持ちを掴みます。あるいは、最後のセラピーのあと、川原で二人が語り、一人になってからドリブルしながら子供について、運命のひとについての語り口もアタシは好きなのです。

その全てのシーンに関わる山崎皓司の瞬発力と空間や空気を把握する力は安心して楽しめるし迫力があります。

シーンをつないでいっても物語にはなりませんから、物語をキーにして芝居を観ることが好きなアタシにはちょっと物足りないというか難しいのですが、それでも上に書いた女と男のしっとりした感じはなぜかアタシの気持ちにダイレクトに伝わってきます。

mon「私の知っている男は、これだけ」
2007.10.24 - 10.28 ギャラリー・ルデコ4
作・総合演出 mon  演出 大久保亜美
出演 齊藤庸介 シトミマモル 山崎皓司(小指値) 野村麻衣 大久保亜美

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