2007.10.20 14:00
Mrs.fictionsがホストとなって開催している15分ずつのショーケース企画。21日までザムザ阿佐谷。休憩込みで130分。終演後に面会時間+トークショーで構成する「おわりの会」も設定、+30分ほど。
●虎のこ「三途野川の手前で」
死んだまま迷って待ち続ける男、通りがった男それぞれの想い。
二人の男の逡巡。特に今通りかかったほうのスーツ姿の男の方に軸足があります。徐々に見える彼らの拝啓、「生き返る」ことができるかもしれないという気持ちと、その困難さと乗り越える気持ち。わりといい話を淡々とやろうとしているということはわかります。王道な話を王道にこなすには少々物足りない感じの役者、セミという特別な存在を話に持ち出していながらも、それがあまり効果的に生きてこないもどかしさもあって、単にローテンションなまま続く芝居担ってしまっている印象があってもったいない。
●多少婦人「嘘→lie」
小学校時代の同窓会、通りがかった女が同級生だと名乗るが記憶がない、が、調子を合わせているうちに。
自分は覚えていないのに相手は覚えていて、正直に告白できないままに話が転がっていってしまったという気まずさが複数に連鎖。誰にでもあるその気まずさは実感があって、地に足がついた感じ。前半はそれを「心の声」を録音で聞かせるという古典的と云うよりは古くさくすら感じてしまいます。後半はその「場に」応じた「人の配列」が会話に影響を与えると云いだし、Tシャツに欠かれたアルファベットの順列でいろんな単語を作り出して場を作らせようとするアイディア。このワン・アイディアはそこそこにおもしろいのです。でも、もっとできる可能性がと思うのだけど、暗転中で単語作ってみたり、あまり単語が広がらなかったりと、徹底していない感じで冗長な感じが勿体ない。
●ろりえ「アイスコーヒー」
喫茶店で待ち合わせする女二人、嘘だったり笑いあったり。
女二人の会話、意味なんかなにもわからなくてもぼおっと観ているだけで楽しいというのはアタシがおやじだからですかそうですか。まるでかみ合わないように見える、不条理劇かと思う展開。暗転あとの展開も実はよくわからないというよりは訳わからない感じがします。それでも、アタシは舞台から目が離せないということが起きるのです。もちろん綺麗な女優が二人舞台にいるということによる部分もアタシ的には大きいのだけど、それだけでなく、かみ合わない会話が実にリアルな口語劇になっている、というある種の衝撃をアタシは受けたのです。トークショーでの作家によれば、「女の子はかわいいよね」というところに立脚した視点だといいます。で、それを観たアタシもそう思うのです。ちょっとまた観てみたい感じ。
●圧力団体イクチヲステガ「『昇華』奔流の果て、静謐の畔」
閉じこめられた奴ら、扉が開いて出られる日を待っているが、その順番はなかなかこないうち、罵りあったり、誘ったり。
閉じこめられた人々、というある種のステロタイプな設定から始まり、仲間割れやら女が誘ってみることやらあるのだけど、それが実は別のものを表している、という展開。それ自体は期待させるものではあるのだけど、それを説明する録音の音声やダンスっぽいもので長い時間見せるというのは、それだけではオチとしては弱いものをさらに薄く冗長にみせてしまっている気がします。
●M.O.E.Project「天使のオシゴト」
ある日部屋にメイド姿の女が現れた。魔法学校の卒業試験のため、男を幸せにする必要があるのだという。萌えキャラ好きな男はぞっこんだが、幼なじみの女の気持ちには気づいていない。
萌えを正面切って取り上げる、というのは今更感も漂ったりしますが、腹は据わっているとも思います。トークショーで見せていた感じでは、これが萌えアイテムだよね、ということに関心があるだろう作家の視点にはぶれがない感じがあります。反面これを感動に結びつけたいのか、それとも笑いに結びつけたいのか、という着地点がいまひとつみえてこないのです。どちらにしても、その現象を醒めた目で観て、笑い飛ばせるような視点を作家が持って欲しいとアタシは思うのです。その冷静さを持つことができれば、「ヒーロー物の発砲B-ZIN」と同様の「萌にはMOE」の可能すらあると思うのです。
●柿食う客「傷は浅いぞ」(未放送版)
芸能界を干されかけているアイドル。最後に来たオファーは、過酷な試練のあまり挑戦者が皆引退してしまうというアイドルの過酷なゲームバラエティだった。
気がつけばここだけが圧倒的なテンションと、スピード感のある芝居。つか芝居っぽさのかっこよさもあってアタシは結構好きなのです。最後に設定された食材の謎は、想像するとかなり気持ち悪くて客席が引いていくのがわかります。それでも、その後にちゃんと引っ張る力。テンションで押し切ろうという心意気があたしは好きなのです。
●Mrs.fictions「秋にまたない」
突然消えてしまった女友達が残した手紙を支えにして、毎年集まり続ける男友達たち。もう期待しないという気持ちと、まだ待ちたい気持ちと
前回とはうってかわっての、静かな会話劇。待っているのが男たちというのが時代の気分を反映ししていて、固執するのが男というのもよくあっています。待ち続ける気持ちの減り方に偏りが出てくるところ、それでもそこから去ることができない気持ちはある種のゴドー待ちとういう気もします。
終演後に住宅地である外で面会をさせないためか、劇場内にとどまらせるような「おわりの会」を設定。前回のグタグダな感じに比べると格段に進歩していて、面会の時間と、トークの時間をはっきりわけていて、どちらも意味のある形になっています。
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