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2007.09.10

【芝居】「The Perfect Drug」smartball

2007.9.9 15:00

三鷹市芸術文化センターの若手セレクションシリーズ、"Mitaka NEXT"の4本シリーズ。130分。公演は終了。

(1)「ビアン」オンリーのバンドの練習にピアノの女がやってこない。同じ日にやってきたバンド担当とか。(2)裏世界につながる若者、やばいビデオやあれこれの情報が集まり。(3)動物病院とペットホテルを歓楽街の真ん中でやってる院長。実は裏の顔は動物虐待からエスカレートして幼女猟奇・陵辱のビデオを販売していて。(4)タイ人のコミュニティ、幼い娘を襲われた男が犯人とおぼしき男を監禁・拷問するが、その男は無実で...(5)大きなピアノ、一組の男女。女は裸で、部屋の中で二人で居続けて、出かける気さえない。

三鷹の椅子をそのまま使いつつ、普段よりも段差を強めにつけたみやすい客席。ほぼ5つの場所を設定しそれぞれの場所というか場面でおこっていること事を点描し積み重ねる構成。舞台では一番上・中央にあるグランドピアノと裸の女と恋人らしい男が単に甘え合っているのを結束点(上記5)として、二つの枝に分岐。バンド内恋愛感情の三角関係というか嫉妬心を描くパート(上記1)と、幼女や動物の猟奇と不法滞在外国人コミュニティを巡る話のパート(上記2,3,4)。一組の男女のピュアに求め合い、耽って繭の中に閉じこもったかのように外界をシャットアウト。両者が社会から姿を消したことで起こる大変な事件。女が姿を現さないことでバンドの中での恋愛や方向性の均衡が崩れ、幼女猟奇の犯人である男が行方をくらましていることで、誤解をふくめた裏社会を巡って暴かれ、裏切られ、たきつけられ、地獄絵図さながらが起こるのだけれど、籠もっている当の二人は興味すらないのです。

新宿大久保界隈で起こっているかもしれない裏社会での(アタシからみれば怖い)ある種のリアルを感じさせる手法はさすがに巧い。セックスや暴力やある種の変態性の混沌が強みの彼らなのだけど、公共ホールである三鷹市芸術文化センターの面目を保つ様々な手法。全裸でも膝を抱えたままだったり後ろ姿だったり、暗転のタイミングを妙な感じでずらして声だけのシーンをいくつも作ってそこにヤバいシーンを押し込んだり。規制故に考え抜いたであろう手法が必ずしも全て成功しているわけではありませんが、それでも描きたいという熱意に打たれます。性表現には劇場も厳しいことを云ったのでしょうが、都知事の外国人差別的視点を揶揄する台詞はそのままで、このあたりのロックな感じがあたしは好きです。

たったひと組のピースが失われるだけで、その外側の世界は物凄く悲惨に崩れることになる話、とアタシは読みました。が、それは芝居が終わってから頭の中でぐるぐる考えた結果。芝居を観ている最中は、結束点となる男女の居る意味や、バンドの話がほとんど他のシーンにからまない理由がわからず困惑していたのです。男女が愛し合って耽ってしまうこと(=Perfect Drug)が影響する社会を二つの枝にしていると思うのだけど、バンド側のことは(恋愛というやっかいな代物ではあるけど)やけに小さな世界の些細な話なのに、裏社会側のことは時間の殆ども占めている上にわりと刺激的なシーンも多く、どうしても物語の上でメインとなってしまう。このふたつのバランスがいまひとつ悪いがために、結束点が掴めずに見失ってしまうという感じがします。

とはいえ、シーンそれぞれがそれぞれに面白いと思うのです。バンドをめぐる三角関係や嫉妬や方向性の相違は緻密な感じはしますし、動物病院をめぐる変態さ加減と、一番清楚に見える一人の隠れた役割の落差の付け方も得意な方法という感じ。

通常当日券を電話で取り置いてくれるなど、細やかなサービスの劇場なのですが、それを出来ないぐらいの完売、当日は列に並んでのみの発売。とはいえ、空調の効いたロビーで、椅子に座って待てるわけでそう辛いものではありません。受付スタッフが並んでる列にきちんと目を配って勘違いした別のホールの客を適度な間隔で誘導したり劇場スタッフのレベルの高さ。あるいは販売時には座席の段の位置まできちんと伝えて販売するという点で、販売のスタッフが行き届いていると思うのです。

smartball「The Perfect Drug」
2007.9.6 - 9.9 三鷹市芸術文化センター 星のホール
作・演出 名執健太郎
出演 青島江里子 荒木拓 石井舞 岩瀬亮 宇田川千珠子
遠藤留奈 尾倉ケント(アイサツ) 河西裕介(国分寺大人倶楽部)
坂倉奈津子 白神美央
仗桐安(RONNIE ROCKET) 露口健介 深谷由梨香(柿喰う客)
松本慎平 美館智範 横山宗和 吉水りふ 鷲尾英彰 

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