【芝居】「網膜火傷」小指侍
2007.8.26 17:30
アタシは初見の小指侍の新作。蟻地獄の巣の中で暮らす蟻たちの物語はなかなか深みがあります。95分。pit北/区域での公演は終了。
蟻地獄に落ちてきたメス蟻二匹、蟻地獄は毎夜面白い話を聞かせ続ければ、生かし続けるという。意を決して語った物語は蟻地獄の気に入り、生き続けることができるが、実はその物語は。
蟻地獄の巣という設定らしく、全編を通して薄暗い感じ。この劇場の地下二層構造はその穴蔵感覚を更に増幅させます。二つある階段通路の音が、その効果をもりたてます。
生き続けること、を物語のベースに置いている気がします。生き続けるために必死に物語を考え続けるし、やたらに多い喘ぎ声のシーンも、雄たちは自分ではなく遺伝子を、と考えれば物語の奥底は一貫していると思うのです。
時間で1時間ほど、2/3のところで語られる親友と彼氏の関係がポイント。 目に前に居る親友の彼氏の話を、実は自分の話として語っている、というシーンは重要な結節点だとおもいます。思えば序盤で、「どんな話でも」といっているし、彼女がそれを先に語ってしまったがために、本来その物語の主人公であるはずの親友が語るべき物語を失ってしまう、という構造になっていて、秀逸です。
あるいは終盤に羽化したウスバカゲロウが蟻たちに襲われるが、それをひとり背負うメス蟻のシーン。蟻が身体よりもはるかに大きな虫を運ぶ姿というのは良く目にするものなのだけど、身長差のある役者を当てて、その風景を再現し、そこまでの物語を背負わせるってのはなかなか巧いやりかたという気はします。
反面、そこまでの前半は夢語りが幾重にも入れ子になっていて少々長く感じるのも事実。観客の側から見ると入れ子の深さが見えず、どの話が夢でどの話がツクリモノで、どの話が現実かの区別が付きづらく(狙いかも知れませんが)、少々ついて行くのに苦労します。が、確かにいろんな関係を説明するかのように、土台をくみ上げているという感じはあります。
こゆび侍「網膜火傷」
2007.8.24 - 8.26 pit北/区域
作・演出 成島秀和
出演 廣瀬友美 佐藤みゆき 川連太陽 磯部静香 熊埜御堂彩 塚田知彦 西山啓介 福島崇之
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