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2007.08.26

【芝居】「猫と針」キャラメルボックス

2007.8.25 19:00

キャラメルボックスの新しい試みを行う、チャレンジシアターの中でも異色な一本。恩田陸の初戯曲としても前評判が高いのです。100分。9月9日まで俳優座劇場。前売りは完売しているようですが、前日予約や当日券も出ているようです。その後福岡。

同窓生の葬式帰りらしい喪服姿の男女5人。会うのは随分久し振りで同窓会のような状態で、酒も少し入ったり、同窓生たちのうわさ話に花が咲いたりする。このメンバーを集めたのは、それとは別の意図があった一人が...

写真スタジオにあるような白ホリゾント(でいいんだよな..名前良く知りませんが)と椅子が数脚、喪服姿の役者達で、白と黒の強いコントラストが美しいのです。音楽はチェロの生演奏だけ、派手な演出のない、淡々と静かに進む会話劇ですが、適度な間隔で本筋には関係なくてもちょっとした笑いを生むように構成されているおかげで全体が平板にならず、心地よいリズムがあります。戯曲の指示には影響を与えない範囲で演出によって付加されている笑いもある感じがして、実力のある役者揃いであることも含めて、魅力のある舞台に仕上がっています。確かにキャラメルのテイストとはまったく異質だといえますが、それは大きな問題ではありません。

ネタバレかも

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喪服姿の高校の同窓生たちは、葬式のためというよりは、映画監督として仕事をしている女が、新作のエキストラシーンでのために集めることにしていた日に、たまたま同窓生の葬式が重なった、というシチュエーション。カウンセラーだか精神科医だかという同窓生が殺されているのだけど、まだ犯人は捕まっていない。それぞれの人物には人には隠していることがあったりするのだけど、同窓生たちにある情報のアンバランスが、その場に居合わせる人居合わせない人の状況によってうわさ話を作り出して、情報が共有されたり誤解されたりしていく流れは、わくわくするぐらい楽しめます。

全体としては、殺人と、高校生のころにあったある事件をめぐる話なのだけど、犯人をめぐる激しいやりとりがあったりはしなくて、作家に、その犯人にすら本当に興味があるかどうかすら怪しい感じがします。そういう意味では決してわかりやすい感じはしないし、終幕のあっさりさ度合いも、会話劇に慣れているならともかく、誰にでも「芝居を観たっ」というカタルシスを与えてはくれません。が、あたしは割とこの仕上がりが好きです。静かに進む会話劇というのは数あれど、その静かさを「緊張させる割に平板に進む会話」ではなく「ゆるさを持ちながら抑揚をつける」仕上がりにしているおかげで、実に見やすい仕上がりになっていると思うのです。

終幕で語られる「記録されたものにしかリアルを感じない」という言葉が印象的。この言葉が映像の作り手ではなく、作家(=恩田陸)から紡がれたということが少し驚きます。が、アタシも記録として書いたもの、たとえばこのblogに書き散らかしているものがむしろアタシにとってのリアルだというのは感じるところで、アタシには腑に落ちる感覚の言葉なのです。

前田綾の演じるほぼ主役は、神経質に見えるのだけど抜け気味のキャラクタを抑え気味に持っていて印象に残ります。坂口理恵は柔軟で、あらゆるシチュエーションで堅くも柔らかくも場面を支えていて何の不安もなく。久保田浩は、そこかしこで笑いを作りますが、たとえば遊気舎で見せるような過剰さは一切無くて、「だれもがやりそうな普通のレベルの」おかしみを実にスルリとこなしてしまう感じで、巧いなぁと思わせます。

演劇集団キャラメルボックスチャレンジシアター Vol.5「猫と針」
2007.8.22 - 9.9 俳優座劇場
2007.9.13 - 9.16 西鉄ホール
作 恩田陸  演出 横内謙介
出演 岡田達也 坂口理恵 前田綾 石原善暢
久保田浩

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