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2007.08.13

【芝居】「恋愛」富士ロック

2007.0812 18:00

葛木英と板倉チヒロの二人芝居のユニットの旗揚げ。違う作家の四本を100分で。公演は終了。

飲み屋のトイレの前で悶絶する男、出てきた女はかつてひどい別れ方をした恋人。障壁が高いほど燃える女は..「たちはだかるもの」(池田鉄洋・作)
12年ぶりに月にから戻ってきた男、地球で待っていた女。本当に久し振りの再会、コンビニ袋を下げて女の家に歩き始める「月とルチオ」(山中隆次郎・作)
月に一度、ホテルでカラダを重ねるだけの関係を続けている男女。いつもに比べて豪華なホテルを予約した男が切り出したのは、別の女と結婚するのでこれを最後にしたいと切り出す..「月に一度だけ〜Only Once a Month」(渡邊一功・作)。 介護とホステスを昼夜働きづめの女、その家のユニットバスにつかったまま居るのは人魚だった。ある日、女のバッグから母子手帳を見つけてしまった人魚は..「泡-ユニットバスの人魚」(葛木英・作)。

男女二人をめぐる話を4つ。役者二人の特性をさまざまに生かすようなバラエティがあって、笑いもびっくりもあって濃密で楽しめるのです。シリーズ化されるかどうかはわかりませんが、また見続けたいと思ってしまう楽しさなのです。

「たちはだかるもの」のあまりにエキセントリックな女と翻弄される男がスピーディーでテンション芝居が楽しく。扉を挟んだ二人がそれぞれ思い出語りをするというスタイルもリズムを生んでいます。夢遊病者や歯ぎしり、なぜかラジオ電波を受信してしまうってあたりの無茶苦茶さ加減も楽しい。

「月とルチオ」は、実に不思議な手触り。一度見ただけでは物語を掴み切れてない感じがしますが、気弱な男が地球に居られず、逃げるように月に移住し、そこも追われて戻ってきた時の芝居がベースだと思うのですが、その別れる瞬間や月と地球に離れている電話の会話を通しながら、時間の経過を見せた上で、もう40歳にもなる、というセリフを喋った二人が互いに若い頃の姿のままに「見えている」という当たりが素敵。そういう話なのか、もっと深い仕掛けがあるのかちょっと計りかねるところはあるんですが。

「月に一度〜」は、リュカ.ではあまり見られない、ドロドロ濃密な男女の話。別な女との結婚を切り出した男はそれでもこれが最後だとカラダを求めるが、女は納得できないあたりの描写がアタシは好きです。今までだって恋人同士ではなかったのだから、その関係を続ける提案を女がするが男はそれを断り、じゃあ一年近く前から付き合っていたのになぜ云ってくれなかったのかと、すれ違ってしまう男女の立場の差が鮮やか。冒頭は女がこれから会う男の話をしていて、終幕では男がカラダの感触をどうしても忘れられない女の話をするという対称さも美しいのです。

「泡」は、人魚を男に設定し、彼一人では生きていけないし、子どもを作ることさえできない、という想っているのに交われない関係がもどかしく、きちんと描かれています。設定自体はファンタジーだけど、そういう気持ちの関係もある、というところのエッセンスはいろいろに応用がききそうですが、この設定で見せているのがちょっと面白いのです。

幕間はヘタウマ的なアニメというか映像をそれぞれに。引きこもり男が自分に絶対服従な、女の姿をした「フェロえもん」を作るが、てんで相手にもされないし、無茶苦茶な目にあう、というほぼギャグの話。たしかにいろんな物語を繋いでいるので、その幕間にこういう小ネタを挟むのは巧い方法かも知れません。

富士ロック「恋愛」
2007.8.10 - 8.12  王子小劇場
作 池田鉄洋(表現・さわやか) 山中隆次郎(スロウライダー) 渡邊一功(Lucas[lyka]) 葛木英(メタリック農家)
出演 葛木英(メタリック農家) 板倉チヒロ(クロムモリブデン)

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