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2007.07.15

【芝居】「魅せられる〜神様の夜(Cプロ)」KAKUTA

2007.7.14 19:00

4週連続のKAKUTAのリーディング。アタシ的最終日は少々のハプニングもちゃんと取り込む力強さ。85分。台風接近でもちゃんと満員。15日まで、ギャラリーsite。

近所の呑み屋の主人、カナエさんが語る若い頃、雪国での不思議な体験「春立つ」。
上の階に住む男から不思議な相談「離さない」。
強烈な失恋の痛手からなかなか立ち直れない女と父と友人たち「魅せられる」(オリジナル)

シリーズの中から、不思議なモノに「魅入られてしまった」人々の不思議な話の二本に、劇団オリジナルの一本で構成。「春立つ」は客演中心で構成、志賀廣太郎の声質の魅力と、麻生美代子演じる呑み屋の主人の味。この二人に限らず、のんびりした呑み屋の風景と雪国での不思議な光景の二つを自在に舞台に作り出します。「寂しい」という気持ちを厚みある表現で。女が男に抱きすくめられ、気持ちも含めて「丸められる」という独特なことばとして選び取ったのは作家の感性ですが、その言葉をこの役者でこんな風な演出に体現させるのは作家も役者のことも信用している演出の確かなちから。

「春立つ」はアドリブ感満載、歳かさの役者と読み手の圧倒的な力。不思議な空間をきちんと作るのです。寂しいという気持ちのこんなにも厚みのある表現に。女を「丸める」という言葉を選んだのは作家の感性ですが、それをこの役者のこんな演出にするのは、役者も作家も信用した演出の力。

「離さない」は再演でほぼ同じキャスト構成のようです。人魚に魅せられ生活すらたちゆかなくなりそうな、すんでのところで踏みとどまった二人の物語。高山奈央子演じる人魚は背中側からのシーンの美しさと、こちらを向いている時の怖いほどの迫力。迫力が勝っているのは物語の意図どおりなのでしょうが、もう夜泣きしそうな残り方。葛藤する二人、特に浜辺での二人のシーンで「誘う声」というあたりから、「私」を演ずる野澤爽子の色気にくらくらするのは、劇中の「エノモトさん」を演じる佐藤滋だけではないと思うのです。ここの濃厚さが初演よりも強くなったように感じるのは、アタシも役者もそれなりに年齢を重ねたからでしょうかと年齢を前向きに考えたりして。

間をつなぐ物語は、結局4本通していることにはなるのですが、時間軸的にはABCDの順では必ずしもないよう。失恋した女のあまりの落ち込みようと、心配しながらも触れることのできない父親の気持ちと、気楽に過ごせる女友達のありかたと、細かく切り取って見せています。読本となる中心の物語を細かいパートにわけることで、このシリーズは独特のリズムが生まれていて、この構成にも唸らせられます。

あたしの見た14日夜の回では、食器を割るハプニング。少々役者の動揺はかいま見えるものの、まるで「食器を落として割る」ことがあらかじめ演出されたかのようにそのあとにフォローされていく流れはたいしたもので、ここでも劇団ってもの圧倒的な強さを感じることが出来ます。

KAKUTAと川上弘美+Friends「魅せられる〜神様の夜(Cプロ)」
2007.7.7 - 7.15 ギャラリーSite
読本 川上弘美「神様」  構成・演出 桑原裕子
出演 佐藤滋 野澤爽子 田村友佳 高山奈央子 麻生美代子 後藤飛鳥 (五反田団) 三浦知之 (InnocentSphere) 原田砂穂 志賀廣太郎(青年団)

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