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2007.06.24

【芝居】「ノモレスワ。」クロカミショウネン18

2007.6.23 14:00

パズルのように組み合わされたドタバタなれど、実は気持ちを芯にした一本。24日までザ・ポケット。120分。

度重なる心労で記憶が薄らいでいる妻を連れて夫が来たのは思い出のホテルだった。何度も訪れ、甘い時間も辛い時間も過ごしたここならば、何かが変わると考えたのだった。が、心配してこっそり付いてきた兄と、ベランダから落ちた瞬間、ふたりは時間を飛び越え、二人が結婚した日に現れた。

出会ってはいけない関係や時間と階数を緻密に組み立てていきシチュエーションコメディー風にしながらも単にハッピーエンドにはしないのがクロカミ流なのです。

時間とフロアを激しく行き来するドタバタ。観客は窓の外の景色(と照明)とエレベーターの表示を頼りにしてついて行こうとしますが、それぞれの変化がごく僅かで、いちいち考えないと日時が特定できない感じ。照明はぱっと見には一般的にわかりにくいものだし、エレベータは動いてしまうので。その辻褄を理解すること自体よりも、セリフや役者を注意深く見て人物の気持ちの揺れにこそアタシは注目したいのです。もっとも、この構造の芝居でそれをするのには相当勇気が必要で、物語を追いかけられなくなった時点で放棄してしまう観客も多そうです。

ネタバレかも。

全体としてはドタバタをみせるコメディの作り。が、着地点は少し違います。コメディだからといってハッピーエンドが必須だとは思いませんし、クロカミにはそういうテイストが少なからずあるのですが、少々の違和感。今作に関して云えば、観客がそれまで頼りにしてきた「視点」となるべき人物(夫)の視座をあっさり別に振り分けられてしまっても、鮮やかさよりは、ここまで蓄積してきた「想い」の持って行き場に困る感じ。それをなんとかしようとして終幕に少々長めに想いをぶつけるシーンをクロカミでは珍しい感じで入れていると思うのですが、観客がその気持ちにシンクロしずらい気がするのです。

とはいえ、ナマモノの舞台でこの無茶苦茶さを余地は残しながらもきっちり作っているということは、凄いのだなぁと思うのです。

笹野鈴々音は彼女にしかできない役として少し得な感じもしますが、印象的。渡辺裕也と加藤裕の二人はこの無茶苦茶な時間と場所の飛び回りを見事にキャッチアップ。見せ方という点では余地を残しつつ、唸る一本なのです。

クロカミショウネン18「ノモレスワ。」
2007.6.20 - 6.24 ザ・ポケット
作・演出 野坂実
出演 渡辺裕也 吉田亜貴代  加藤裕 久米靖馬 和田良 青木十三雄(ヒューマンスカイ) 日ヶ久保香 阪上善樹 柴田みゆき 太田鷹史 楢原拓(チャリT企画) 米田弥央(カムカムミニキーナ) 笹野鈴々音(風琴工房)

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