【芝居】「犬は鎖につなぐべからず〜岸田國士一幕劇コレクション」NYLON100℃
2007.5.12 19:00
岸田國士(青空文庫)の七本(+α)の短編戯曲を潤色・再構成したナイロンの新作。笑いは少なくても、深く気持ちに染みこんでくる大人の芝居。6月3日まで青山円形劇場。休憩10分を含む180分。
英語教師の男の一家の飼い犬が近所に迷惑をかけたために、近所の失業中の男が町内を集めて平和会議を開くといい..「犬は鎖につなぐべからず」。隣同士に住む二組の若い夫婦、柔らかだが優柔不断、強気で自由な気質合わずに夫婦の気持ちは離れているが、互いに相手の異性は同じ気質で好意を持っているある日、四人で活動写真を見に行く約束をするが「隣の花」。数年経った姉夫婦の家に、新婚旅行に出かけたばかりの筈の妹がやってきて、旅行先での夫があまりなものだから離婚したいのだと泣き出して「驟雨(しゅうう)」。女と同棲している音楽家志望の青年の家に田舎の兄が様子を見に来るが、同棲を内緒にしていて「ここに弟あり」。デパートの屋上で偶然で会う二組の夫婦、夫同士は友人だったが、数年ぶりで明らかに勝ち組負け組になっていて「屋上庭園」。夫が妻に夢の話をしている「ぶらんこ」。結婚一年目の夫婦の休日の会話「紙風船」。
岸田國士という名前は、岸田國士戯曲賞という演劇賞としては知っていて、新劇の父と呼ばれているという知識は持っていても、機会がなくて戯曲としても公演としても実は見たことがなかったアタシなのです。今作は断片に構成されて実はどこがどこなのか、新たに追加されているテキストがどの程度なのかはよくわからないのです。同じ町内での出来事と言う形で再構成された物語は実に自然に一つの世界の中での出来事を切り取ってみせているような空気感があります。大正から昭和初期に書かれた話は、ほぼ和服で統一された衣装とあわせて、雰囲気も素敵なのです。
勝手な男の言い分と「男なんて」の見え方が楽しい「驟雨」や、二組の夫婦の想いが交錯する「隣の花」のテキストが好きです。「紙風船」「ぶらんこ」は切れ目無く繋がってしまっていてどこがどちらやら判らないけど、こんな空気に憧れて。「屋上庭園」はこの中では男の会話で、鬱屈した男の気持ちの扱いづらさ加減がリアル。「犬は〜」は不条理劇的なニオイを感じますが、これはこれでちょっと別に見たいかもしれない。
ナイロンの舞台としては異例なほどに笑いも衝撃も少ない舞台。いくつかある断片のうち、特に男と女というより夫婦の間の表面的には静かな会話、その奥底で流れる熱い気持ちの揺れを感じ取れるのです。なんかやけにしっとりとした色気や艶があるのです。小津安二郎的な、語尾を上げるような女性の喋り方は時代の要請なのでしょうが、女優達をしっとりと見せる感じ。食わず嫌いだった岸田國士の作品、もう少し見てみたくなったり。
NYLON100℃30th SESSION「犬は鎖につなぐべからず 〜岸田國士一幕劇コレクション〜」
2007.5.10 - 6.3 青山円形劇場
作 岸田國士 潤色・構成・演出 ケラリーノ・サンドロヴィッチ
出演 松永玲子 みのすけ 村岡希美 長田奈麻 新谷真弓 安澤千草 廣川三憲 藤田秀世 植木夏十 大山鎬則 吉増裕士 杉山薫 眼鏡太郎 廻飛雄 柚木幹斗
緒川たまき 大河内浩 植本潤 松野有里巳 萩原聖人
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コメント
紙風船見てませんでしたっけ?
投稿: きいちゃん | 2007.05.18 00:44
きいちゃん、
コメントどもです。見てないんですねぇ、紙風船。あんなにあちこちで上演されているのにねぇ
投稿: かわひ_ | 2007.05.18 00:51