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2007.05.30

「揺れる思い」

入社したばっかの頃でした。ドリカムと並んでCD結構買ってたのがZARD(坂井泉水)でした。休日や徹夜のときは冷房の止まる建物で、Tシャツ姿で半田付けしたりして(ほんの十数年まえなのに、この古くさい感じは何だ。)。大音量でCDかけて、当時の課長はドラムの凄さをさかんに誉めていたのを思い出します。実家住まいだったから車借りてドライブいって、一人でも二人でももっと多くても、何回もパワープレイしたなぁと思うのです。今でもiPod nanoには3アルバムぐらい入っています。ライブの姿をついにみられなかったのだけど、同年齢の彼女が向こう岸に行ってしまったのは、ホントに残念なのです。

でも、歌はちゃんと残る。モノや歌や映画や舞台を作るというのは、そういうことだと思うのです。アタシはこれを携えて(他の歌もあるけどね)、生きていけます。

全てが見られないのは確定の、ものすごい競争率な週末。なぜこんなに集中する。

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2007.05.28

【芝居】「サロ・ギュラ」zupa

2007.5.27 17:00

山の手事情社の水寄真弓とOrt-d.dの倉迫康史の二人のユニット、zupa(ズッパ)、旗揚げ作を半年弱経ての改訂再演。「印象」スタイルの90分。29日まで、下北沢・小劇場楽園

「サロメ」と「カリギュラ」からテキストを抽出・再構成する「印象」の手法。好きでたまらない気持ちの歪みを数多く見せるのは初演と同じ。たったひとつのシンプルな気持ちを肥大化させ、膨大なシーンで繰り返して見せるのです。ほんとはこの二本、読んでから観るべきだったなぁと思いつつもまたしても忘れてしまうアタシなのです。

初演から変わっている感じを受けるのは、「水の底から水面にある月」というモチーフになっている感じがします。時間としては大差ないのですが、シーンのバリエーションとしては、ゲームやアドリブっぽいシーンを減らして、よりテキストに近づいている感じを受けます。美しさや張り詰めた緊張感は今作ではレベルアップしている反面、少々小難しい感じも受けます。「(好きでたまらなくなり)追う女」はより明確に示され、いくつも舞台を走り抜ける女優のシーンがあります。

劇場は真ん中に大きな柱、ほぼ正方形の舞台を隣り合う二辺から観るように客席をしつらえています。初演ではあった二階席はなくなっています。当日パンフによれば演出の力点にそれは影響しているようです。

好きなのに好きになってもらえない、まあ片想い。それが鬱屈してしまう想いを執拗に描くこの一本は、アタシはホントに好きなのです。

新たに追加されたであろう「殺し屋」が秀逸。男の身勝手さを描いた後に、女とこの殺し屋の会話で気持ちの動きを丁寧になぞります。「好きな人を殺したいと思う瞬間は絶頂の手前」、という女二人の会話もいいのです。アタシが何より好きなのは、終幕、酒飲みの男の一人呑みのシーンが一番好きなシーン。柿ピーで泣けるこのシーンは、初演で観てて、今回その予兆だけで泣いてしまうっていうアタシもどうかと思うのですが。

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2007.05.26

【芝居】「ウオーターメロン/葬式/他」ワワフラミンゴ

2007.5.26 19:00

断片的な「さえずり」を楽しむような55分。27日まで下北ファインホール。部屋にやってくる女たち、入れ替わり立ち替わり。口笛教室らしいが、あまりに高度な課題で先に進まず、好きな人のはなし、拾ってきたカバンを調べたり、死んだ人が詰められているというガムタムのことを話したり..

女性ばかり、断片の話がわからないままでもなぜか引き込まれてしまうあたしはオヤジですかそうですか。話は繋がらないようでいて、微妙につながっていたりして。ファインホールは奥が舞台なのですが、それを逆に窓側を使うのが彼女たち流。その客席後方になっている幕の向こうに何かがある、という設定。なぜかブラックホールの話になってみたりします。

ネタバレかも

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【芝居】「お願い放課後」ハイバイ

200705261400

3月にプレビューを行った公演から改訂を加えた本公演。ほぼ110分。6月3日までこまばアゴラ劇場。売り止めの回もありますが、客席すこし替えて当日券を出しているようです。

大学生なのにどう見ても60歳の男・志賀。演劇部に所属し仲間たちも一目置く実力がある。言い出せない好きな女の子のことに悶々としたり。ある日、新任の顧問がやって来る。世界的に有名な演出家だった。志賀のカツラを奪いとり、そこに嘘があるからなのだといって理不尽にしごく。志賀ファンだという同級生の姉が一計を案じる。いよいよ本番の日..

大きな流れはプレビューから変わらないよう(ちょっと記憶曖昧)。志賀君の親の設定が母親から父親に変わり、年に4歳年をとる設定が辻褄が合わなくて3歳になったり。もともと青年団の名優・志賀廣太郎客演ありきで計画された公演のようです。プレビューでは若い役者が顔にマジック(みたいに黒くくっきりした)で皺を描き、どんなシーンでもふざけているように作っていたのに対して、しっかりと年輪の刻まれた役者によって演じられることで、それが笑いに結びつけづらくなってるところもあります。結果、うっかり叙情的でどこかリリカルで、下手すると感動すらしてしまいそうな仕上がりになっているのはいいのか悪いのか。

設定は大学生なのだけど、オトコノコの行き場がなくてもやもやとしていて、時に臆病で時に臆病なアンバランスな、中学高校あたりで最高潮に達するであろう、「あの感情」を丁寧に執拗に描きます。親への反抗というかどうしたらいいか距離が掴めない感じ、オンナノコへの想いがストレートに自慰に走ってみたり。かっこ悪いどころか、甘ずっぱいというよりは妙に汗臭い感覚の描写。ところが終幕は一転、暗い中で二人きりの会話、夢というか幻のような不思議な感覚の描かれ方。

志賀廣太郎は見事に好演。古舘寛治は理不尽な演出家、という作家お気に入りのキャラクタがはまり。石橋亜希子はプレビューとは違う役なのだけど、垢抜けない感も含めて彼女っぽい絶妙さと色気。反面、プレビュー時の役のかなり色っぽい衣装でなくなったのは残念、オヤジなアタシ。永井若葉の挙動不審さが絶妙さを。

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【芝居】「業に向かって唾を吐く」エレファントムーン

200705251930

生理的に好き嫌いは分かれそうな85分。29日まで王子小劇場。

教師の部屋を突然訪ねてくる母親。最近急に生活態度が改善され勉強までするようになった娘に戸惑い混乱する。教師の部屋、襖の向こうから聞こえてくる呪文は教師の兄のものだと説明され、兄がかつてこの部屋で…

アパートの一室の新興宗教を巡る物語。率直に言って前半は実時間に比べて数段長く感じます。宗教の現場であることをきちんと描こうとしているのだと思うのですが、アパートの一室という普通の風景とはいえ、服装と言動はステロタイプな描かれ方で、背景はすぐにわかります。変わりすぎた娘に困惑する母親というところまでは理解出来ても、明らかにずれてしまっている母親の姿というのは妙な感じなのですが、チラシとの整合を取ろうとした結果なのかもしれません。あたしはそこまで辻褄をあわせなくてもとも思います。

もっとも、生理的に嫌悪されてしまいそうなシーンもいくつかあって、映像ではなく「ライブ」な舞台だけに、そう思いこんでしまうとダメかもしれません。こればかりは好みの問題なのでしょうがないのですが。

平板でステロタイプに続いて終わり、なわけはないのは、さすがに王子セレクションの劇団。ねたばれかも。

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2007.05.22

はしかですか。

大人のはしかが流行しているとか。アタシははしかを経験してないのだけど、親から貰ってきた母子手帳を見るとしっかりと予防接種の記録が。ちゃんとやってくれていた親に感謝する気持ちと、記録することってのはやっぱ大切だなぁと思ったりする火曜日。

今週に公演予定だった北京蝶々( 1, 2)が公演延期のお知らせ。一週間と一日延期しての公演を告知しています。たしかにねぇ、見に行くことがリスクになっちゃいますものねぇ。公演直前の時期でちゃんと決めて周知できるかが彼らの今後に糧になります、かならず。

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2007.05.21

【芝居】「界」POTALIVE小竹向原編

2007.5.20 15:30

街を歩きながら土地の話や物語を作るポタライブのシリーズ、小竹向原編の再演。週末を中心に6月2日まで。小竹向原駅改札前集合から約2時間。

晴天の20日、初演は3月だったのですが、日が長くなったのに合わせて少し遅めの時間からのスタートになったのだといいます。確かに終わりの頃は日が傾いてきていい感じの空気が流れる時間。ゆっくりとはいえ、2時間ほぼ歩きづめで結構な距離を歩くのですが、気持ちのいい時間なのです。

案内人自身の話からスタートし、周辺での取材を織り交ぜ、歴史も織り込みながら進みます。役者がやる案内らしく、役を演じるようなところも多くて語りの芝居を見てるように楽しめます。いままで拝見しているシリーズ( 1, 2) では、物語をほとんど乗せなかった印象だったので、物語がのっているのは初めての体験。今までのはガイドツアーの印象が強いのですが、本作は作家の想像力による物語もあって、もっと芝居よりの印象なのです。

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2007.05.20

【芝居】「アメリカをやっつける話」チャリT企画

2007.5.19 19:00

バンカラポップ、世相を斬るというよりつっつく感じに。85分、21日まで王子小劇場。

大学のサークル棟改築に伴って廊下に間借りするサークル・アメリカ研究会。新歓時期、遊びのサークルと思ってる人と固く問題を研究するメンバーとの対立は決定的になる。突然停電になり…

実はアタシは大学のセクトやらの問題は実感を伴っては感じとれません。居た大学による差なのでしょうが、確かに彼らの描くサークル棟のある場所の姿、というのはアタシに想像上のリアルを感じさせるある種の迫力があります。アメリカ研究会というサークルの内部対立をめぐってサークルに求めているもののバラバラさ加減も、なんかありそうな感じ。

ネタバレかも

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【芝居】「失神」げんこつ団

2007.5.19 14:00

女性ばかり、「世界一の喜劇」をうたう劇団の新作。20日までタイニイアリス。130分。

20余りのコントっぽい短篇を映像で繋ぐ。父親の仕事を繋ぎたくない息子の苦悩やら、情報保護で公的機関の場所すらわからなくなってしまったり、様々な役割をプロ雇って交換したりという世界の中の様々。

ネタバレかも

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2007.05.19

【芝居】「7」studiosalt(スタジオソルト)

2007.5.18 19:30

横浜の劇団、ソルトの新作。決して明るく楽しい芝居ではないのだけれど、ずしりと響く深さと力を感じる70分。24日まで相鉄本多劇場。

愛護管理センターという場所。働く男たち。動物を「処分」するところ、自慢できる仕事ではないが毎日を着実にこなしていく。長年連れ添ったペットを持ち込んできたり、引き取るといって来たり。

この劇団の芝居には大きく二つの流れがあります。笑い、暖かい系統(「トントコトン」「ピクニック」)と、少し突き放した感じで救いが少ない感じの系統(キヨシコノヨル」)。今作はどちらかというと後者にあたります。本公演の他、ここ数作のリーディングも含めどちらかというと前者に近い作品が多かったので、久し振りな感じを受けますが、初見から一年半を経て、役者も物語もスタッフも、見応えを増してきています。好きかキライかで云えば、断然「ピクニック」を取るアタシですが、これも確実に彼らの物語なのです。

ねたばれかも

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2007.05.17

五月病じゃないけど

昨日はちょっと一休みしてしまったわけですが、何気なくHuman Player(先週書いたあれです)を押したら、画面につっぷして寝ている画面。説明は「ストレスで倒れています」。いや、ストレスと言えばストレスなんだろうけど、こんな奇妙な一致にちょっとびっくりしたりしなかったり。

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【芝居】「『鱈。』の(ふ)」Hula-Hooper

2007.5.16 20:00

Hula-Hooper(フラ・フーパー)が、「部活動」と称して音楽と芝居のコラボレーションを目指した企画公演。公演は終了。渋谷の7th-floor(On Air Westの上)休憩を挟み140分ほど。

オープニングゲスト「おかくらまえ」や音楽班「Feeedily」が出演してるライブハウス。ウエイトレス兼ダンサーな日本人ではないオンナノコたちの中に新人が入ってくる。記憶をなくしていて、自分を「トマト」と名乗る。ステージで歌わせてみると巧く、そして可愛らしく。記憶をなくしているのだが、それを呼び起こすような..

ライブはライブである程度独立させながらも、そこに踊り子としてポジションしている女優たち。記憶をなくした女をめぐる恋愛を軸にしながら、外国人と日本人といった境界(音楽と演劇の境界、ってことかもしれませんが)を壊せると歌いあげ、バンドを辞める辞めないの部活動的に熱い想い語らせたり。といっても、自身を「茶番劇」と笑うことを忘れないバランス感覚はさすがだなぁと思うのです。コントユニットも名乗るのは伊達ではありません。

もっとも、派手なキャラクタ達で賑やかなステージ。しかも若い女性が踊る、笑わせる、開放的な色気もあると来たらまあ、それはオヤジ的にはそれだけで喜んでしまうわけですが。バンドとのコラボとなると、どうしてもまったく別個になったりバンドのまねごとする方向に行きがちですが、三組のユニットがちゃんとかみあってる感じに作り上げられていて飽きることがありません。

セットリスト、といいたいところですが、まあ、「ここでの出来事は口外無用」ってパンフに書かれていれば以下略。

バンドとしてはいってるFeeedliyは、少し懐かしい感じもする70年代ポップ的な曲(ポータブル・ヘヴンとか、ワンダーランドとか)もあってアタシは嬉しい。ほぼ主役を演じた上田遥は舌足らずなキャラクタを好演。男装の麗人的な梅澤和美にアタシはノックアウトされるわけですが。

前回もそうなのですが、単に女友達とは言い切れない、「女に惚れる女」というごく狭い狭い瞬間を描くのが圧倒的に巧いのは彼女たちの特性で、本作もそれに漏れません。こんなに小さな一瞬をこんなにもバリエーション豊かに、しかも綺麗で、直接的な色気に走らないままでオヤジの脳みそを溶かしてしまうというのが大したものだなぁと改めて思うのです。

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2007.05.13

【芝居】「絢爛とか爛漫とか(モダンガール版)」赤坂RED/THEATERプロデュース

2007.5.13 14:00

再開発の進む赤坂に出来た新しい劇場、赤坂RED/THEATERのプロデュース公演の第一回。 自転車キンクリートSTOREの1993年、1998年の戯曲は見応えがあります。男性ばかりのモダンボーイ版と交互上演で23日まで。140分。モダンガール版のみはe+の得チケ(半値販売)も出ています。

昭和の初め、小説家を目指す若い女の離れの部屋。評論家や小説家を目指す女ともだちたちが集まっている。最初の小説を発表したものの次の作品が一文字も書けないまま思案にあけくれ焦っている女は、友人達が先へ進んでしまう感じがして更に焦り..

見てないとおもってたのだけど、実はじてキン版の再演(1998)を見てました(モガモボ)。記憶は曖昧ですが、見てる最中にぼんやりストーリーは思い出したのでした、わはは。

よく練り込まれた脚本を、妙な手を加えず丁寧に作り込んだという印象。良く喋り、議論し喧嘩する若者たちは、「自分がどうなっていくのか」という不安に根ざしながらも、真剣に将来を考える姿が「アツい」のです。アタシ自身がどうなっていくか、なんてことを考えてしまうなぁ、とも思ったのだけど、98年版でも同じことを考えてた気がします。何も成長してないのか、アタシ。

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【芝居】「犬は鎖につなぐべからず〜岸田國士一幕劇コレクション」NYLON100℃

2007.5.12 19:00

岸田國士(青空文庫)の七本(+α)の短編戯曲を潤色・再構成したナイロンの新作。笑いは少なくても、深く気持ちに染みこんでくる大人の芝居。6月3日まで青山円形劇場。休憩10分を含む180分。

英語教師の男の一家の飼い犬が近所に迷惑をかけたために、近所の失業中の男が町内を集めて平和会議を開くといい..「犬は鎖につなぐべからず」。隣同士に住む二組の若い夫婦、柔らかだが優柔不断、強気で自由な気質合わずに夫婦の気持ちは離れているが、互いに相手の異性は同じ気質で好意を持っているある日、四人で活動写真を見に行く約束をするが「隣の花」。数年経った姉夫婦の家に、新婚旅行に出かけたばかりの筈の妹がやってきて、旅行先での夫があまりなものだから離婚したいのだと泣き出して「驟雨(しゅうう)」。女と同棲している音楽家志望の青年の家に田舎の兄が様子を見に来るが、同棲を内緒にしていて「ここに弟あり」。デパートの屋上で偶然で会う二組の夫婦、夫同士は友人だったが、数年ぶりで明らかに勝ち組負け組になっていて「屋上庭園」。夫が妻に夢の話をしている「ぶらんこ」。結婚一年目の夫婦の休日の会話「紙風船」。

岸田國士という名前は、岸田國士戯曲賞という演劇賞としては知っていて、新劇の父と呼ばれているという知識は持っていても、機会がなくて戯曲としても公演としても実は見たことがなかったアタシなのです。今作は断片に構成されて実はどこがどこなのか、新たに追加されているテキストがどの程度なのかはよくわからないのです。同じ町内での出来事と言う形で再構成された物語は実に自然に一つの世界の中での出来事を切り取ってみせているような空気感があります。大正から昭和初期に書かれた話は、ほぼ和服で統一された衣装とあわせて、雰囲気も素敵なのです。

勝手な男の言い分と「男なんて」の見え方が楽しい「驟雨」や、二組の夫婦の想いが交錯する「隣の花」のテキストが好きです。「紙風船」「ぶらんこ」は切れ目無く繋がってしまっていてどこがどちらやら判らないけど、こんな空気に憧れて。「屋上庭園」はこの中では男の会話で、鬱屈した男の気持ちの扱いづらさ加減がリアル。「犬は〜」は不条理劇的なニオイを感じますが、これはこれでちょっと別に見たいかもしれない。

ナイロンの舞台としては異例なほどに笑いも衝撃も少ない舞台。いくつかある断片のうち、特に男と女というより夫婦の間の表面的には静かな会話、その奥底で流れる熱い気持ちの揺れを感じ取れるのです。なんかやけにしっとりとした色気や艶があるのです。小津安二郎的な、語尾を上げるような女性の喋り方は時代の要請なのでしょうが、女優達をしっとりと見せる感じ。食わず嫌いだった岸田國士の作品、もう少し見てみたくなったり。

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2007.05.12

【芝居】「冬のユリゲラー」ヨーロッパ企画

2007.5.12

ヨーロッパ企画の2000年作品三本連続再演企画の二本目はテレビ番組「演技者」でも取り上げられた代表的な一本。15日までザ・スズナリ。125分。

クリスマスイブ、冴えない喫茶店に集まる冴えない男たち。実は彼らは本物の超能力者で、謎の店名に魅せられた常連たち。普段はかくしているが、店長の計らいで、思う存分能力を披露したり、話をしたりするために集まった。ひと通りの技が披露された直後、最後の男が現れる。仲間だと思った超能力者たちは暖かく向かい入れるが。が、彼らの能力を目の当たりにした男は妙な反応をして...

すごい能力なのにしょぼく見せ、笑いにつなげることで一見無茶な世界を構築。そこからいくつかのどたばたをおり混ぜながら実はクリスマスの芝居らしい少し暖かい着地点だったりも。が、まあしかし基本は大爆笑編的な作り。

超能力者たちの微妙にしょぼい感じは彼らの持ち味でもあって安心できる感じ。最初の能力披露が少々長い感じは受けますが、だいたい半分ぐらい、最後の男が現れてから先は俄然面白くて密度の濃いスピード感と笑いにあふれています。後半には、びっくり人間の話とADの話という二つの話があり、ADはさらに二つのエピソードからなると思えば、基本的にお膳立てに過ぎない能力披露との分量のバランスが悪い感じはします。

とはいえ、後半に密度が濃いのは観客の満足感という視点でみればまったく正しいともいえ、微妙なバランスなのかもしれません。

「〜ピラミッダー」でも感じたのですが、舞台の上でやけに半円形に固まって坐ったまま話すような感じのシーンが多いのです。映像ならばそれをカット割りにも出来るのですが、笑いを主体にした舞台の場合だと、この動きの幅のなさはちょっと厳しい感じも。上演前にある近年作のDVD告知などを見ると、最近のものはもっと舞台っぽいようですが。超能力者とはいえ、登場人物たちは善意の塊のようなところはあって、この人物の造形がADにまつわる二つのエピソードに効果的に効いてきます。みた後に残る爽快な感覚は、笑いというだけではなくて、このいい奴ら加減ゆえなのかもしれません。だれでも笑って楽しめるこういうタイプでクオリティを維持している芝居というのは、もっといろんな人に気楽にみてほしいなぁと思うのです。

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2007.05.09

Human Playerで遊ぶ

そういえば、友人がmixi日記で揃って購入したのを見て、つられてぽちっとしたのが「Human Player」(amazon)。生年月日と50の質問に答えて初期設定をすると、あとはこのオモチャの中で動き回るのを眺める、というお気楽さがちょっといいのです。

自分の性格やバイオリズムを反映した行動するとかで、「中の人」がご飯食べてるなぁと見ながら食事したりするのも、日常のスパイスとしてはちょっと楽しい。というのは寂しいですかそうですか。そういえばどうぶつの森、最近電源入れておりません。怖くて電源入れられません。あんなに遊んでいたのに。

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2007.05.06

【芝居】「屋上のオフィス」あひるなんちゃら

2007.5.5 20:00

「笑いあり涙なし」、を標榜する彼らの「プライスレス」の無料公演。6日まで王子小劇場、60分。

屋上に折りたたみ机とパイプ椅子。ここがオフィスで男と女が出勤してきて仕事をしている。社長は手紙で指示を与えてきて、雨が降れば休み。二人は仕事をしてはいるがだらだらもしている。下の階の会社の男は用もないのに毎日やってきて...

小難しいことは何もなく、気楽な笑いなのだと彼らは云います。が、大爆笑というのとは違う感じがします。黒岩三佳演ずる女と根津茂尚がボケ倒し、関村俊介がツッコミという構成で、ほとんど不条理劇の様相。大爆笑には繋がりづらいのだけど、じんわり笑える感じ。ミニマルな3人で構成された舞台は、「ダラダラ駄弁芝居」をどちらかというと台詞の面白さで、たとえばラジオドラマのようにすると結構面白いのではないかと思うのです。(Podcastとかやってはくれぬか。)

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【芝居】「東京ノート」青年団

2007.5.5 15:00

青年団の代表作の一つ。色褪せないスンダードの強みを感じる105分。ほぼ一ヶ月のロングラン公演。14日までアゴラ劇場。

美術館のロビー。年に一度兄弟達で会食するために集まっている。今年は東京の美術館のコーヒーハウスで。そのために上京してきた長女。結婚しておらず、親と同居していて地方に暮らしている彼女は絵が好きで、集合時間よりも早く長男次男の妻と連れだって(ご指摘感謝)、食事をしたり美術館で絵を熱心に見ている。ヨーロッパで戦争が起き、避難措置で日本に美術作品が送られてきていて、滅多に見られない絵をみるチャンスでもあったのだ..

1994年の初演(未見)、あたし個人が見るのは、1998年のスズナリ、利賀、1999年の横浜美術館2004年の若手公演に続いての4回目。アゴラでの再演も始めてとのことですので、アゴラでみるのはアタシにとっても初めての体験。

もう、何度見ても結局のところ、カメラを構えて「好きな部分を切り取る」ことを続ける長女と、もう来年は会えないかも知れない次男の妻との会話のものすごさに圧倒されるということに尽きてしまうのです。若手公演を除いて、あたしの見ている上演はいずれもこの二役を松田弘子・山村崇子にあてていて、この二人のもつ空気感に、いつも心が震えるのです。

13年前の初演ということは、それなりの年齢に当てて書いている筈だし、年齢にずいぶんと関係しそうな役の作られ方という気もするのだけど、社会情勢が変わったのか彼女たちが化け物なのか(失礼)、違和感ないどころか、ますますはまっていく感じすら受けるのです。

カメラだけはさすがに「デジカメ」に変わったりして時代を感じたりはしますが、まあ、レンズを使ったものには違いがないのであまり大きな問題ではないかもしれません。それよりも時代の流れに対して深刻なのは、待ち合わせのすれ違いの描写。これだけ待ち合わせのすれ違いがあっても、誰一人携帯電話を取り出さないのは書かれた時代を考えれば当然なのだけど、まあ、ちょっと違和感を感じないでもありません。美術館という場所の想定のおかげでギリギリあり得る感じもしますが。(でもロビーだし)。

上記二役に比べるとどうしてもアタシにとっては他の印象は薄くなりがちです。全体にオリジナルキャストに近い座組ですが。新しい配役の中で印象に残るのは学芸員を演じた大塚洋。オリジナルの志賀廣太郎の圧倒的な存在感を超えるところまではいきませんが、オリジナルとは少し違う方向を模索している感じはあって、その意味で印象に残ります。

とはいえ、ある意味、現代の日本における小劇場演劇のスタンダードの姿の一つであるのは間違いなくて、一度は見ておくべき、というタイプの芝居なのです。

大きなプラズマディスプレイを設置して、開場中は美術館のデジタルサイネージ(digital sinage)的な使い方で雰囲気を作りますが、上演中はここを使って8カ国語から選択した字幕上演をしています。(あたしの見た回は英語)。タイミングもばっちりで、2002年の欧州ツアー以降、6カ国語DVDなどの成果の集大成を十分に生かした上演なのですが、同時多発の会話となると、やはりちょっと厳しい感じがしないでもありません。

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2007.05.04

【芝居】「苦悩のピラミッダー」ヨーロッパ企画

2007.5.3 19:30

ヨーロッパ企画が2000年に上演した三本を連続再演する企画、その一本目。120分。14日まで駅前劇場。

古代のエジプト、部屋に集められた人々。ピラミッドはすでに3つできていて随分と時間が過ぎている。 集められた人々は新たなピラミッド建設のプロジェクトのチームなのだという。 王が作ると言い出し、そのための資金や労働者などの手当を..

その国が最先端でイキオイがあったころにはチカラワザで出来てしまったとしても、そこから随分経つと国の様子も変わっていて。昔のような無茶はできないし、景気も下向きの今のこの国には荷が重いのです。技術は伝承されておらず、暮らし向きは前よりは楽になっていて、切実さはありません。どこかの国でも最近感じる雰囲気は、古今東西、結局ひとはそう大きくは変わらない、ということなのかもしれません。

古代のような服や建物なのだけど、会社の会議室のような感じ。責任を取りたくなかったり、仕事量が三乗で効くのに思いつきで2倍にしてみようと云ったり、前日のことを教えてもらえなかったり、スポンサーの意向があったり。コピーというのはちょっと面白い。

緩い感じで進むフォーマットなのはわかります。細かく笑いを入れようとはしていますが、あまり成功している感じではありません。一本しか見ていない「サマータイムマシーンブルース」の完成度があまりに高い、ということなのかもしれませんが、もっと緻密に組み立てられたものを勝手に期待してしまったあたしなのです。

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【芝居】「Unit」青年団若手自主企画Vol.32

2007.5.3 14:00

サラダボールの作家を迎えての若手公演。6日までアトリエ春風舎。65分。

段ボールが積まれた部屋、畳と祭壇と壁に掛けられた布や貼られた紙。白や緑の作務衣を着た人々。近隣住民の運動でここから出ていかなければならない日。そこに新たにやってきた若い女は、傍若無人に...

もう、随分いろいろな形で描かれたあの教団に似たコミュニティの内側の話。12年を経て描くところが散見されます。が、時間が経ったなりに解釈や目線が欲しい気がするのです。少しタガが緩んだコミュニティと外乱がぶつかる場所、という描き方は、どっかで見た気がしてしまうのが厳しいのです。

青山、と名乗る人が何人も居るというのはちょっと面白いけれど、それがネタ以上にはつながらないのも勿体ない。外乱となる女、そこに理由はちゃんと示されるのだけど、ほとんどの部分でぞんざいだったり、がさつな人に見えてしまうのです。理由が示されてもその印象が変わらないのは、意識的なのか結果なのか、と思うのです。

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2007.05.02

連休のはざま

連休中です。あたしは今年はこの二日間、会社に行くことにしました。長く休むとリスタートできない気がしたからですが、ちょっと長めに休んで旅行するという選択肢もあったかなぁと思ったり、思わなかったり。

たった二日行けば、まあ週末みたいなもので。

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