【芝居】「癖」メタリック農家
2007.4.1 19:00
葛木英が主宰するメタ農の新作。物語や語り口がすっきり見やすくなっていて、作家の伝えたいことがダイレクトに感じ取れる気がします。95分。3日まで劇場MOMO。
不倫の末、医者の男の家に居る女。その家に転がりこんで来た女はその幼なじみで、闘いを挑んだり、交換日記したり。
第一期の集大成だという当日パンフの言葉通り、明るくはないけれどきちんと描き込まれたエンタメとして出来ている感じがします。混乱しがちな人称(視点)も整理されていて見やすいのです。 「親友」との交換日記などの女子中学生のアイテムで描かれる姿は舞台上方でお喋りするOLの姿、つまり外部からの評価に左右される姿としてにステロタイプに描き出されます。確かにそれは「オンナ目線」の物語や空気。物語そのものではないのだけれど、女性同士が感じるであろう「面倒くささ」を感じさせるには十分なのです。(いや、アタシにはもちろん実感ないわけですが)
過剰な装置(仕掛け)は彼(女)らの持ち味。凝りすぎてたまにおかしなことになったりもしますが、この振れ幅はやりたいことがあって、そこへ到達する術を探している最中なのだとアタシは信じています。
以下ねたばれ。
押し掛け同居人、という異形なるものを舞台に丁寧に描くのは新鮮な感じ。後藤ひろひとが描いていた異形への視線に通ずるところもある気がします。似ているといえば、今作に関しては本谷有希子の世界、つまり妄想に近い女の話は微妙にかぶるところがあります。アタシはこういう語り口は好きですから何本あっても構わないわけですが、この方向を続けるのならば、どこが同じで何処が違うのかを 意識的であるべきではないかとも思うのです。
キル・ビルという映画をシンボリックにする黄色いトレーナーと刀、そしてなぜか被らされる兎の頭というシンボリックなものを早々に導入して世界の中にとけこませます。終盤でそのシンボルを巧く使い分けることで、このおかしな世界を一人の女の頭の中で起きていることだということを急速に理解させる手法は見事です。
「ひとりにしないで」という女の叫び。ひとりだったがために起きた事件への消えない恐れと、一人で居ないために男に頼るという方法でしか自分を安心させられない病的さと、女の感じる愛情と、男が愛だと云ってるもののギャップの谷底の深さに絶望的にすらなります。
細かいところでは不満点がないわけではないのですが、語りたいことの核が確実にあって、そこへ一歩ずつ進んでいることを感じ取れる本作、アタシは面白かった、と思うのですが。
メタリック農家 春とエロスと新作公演「癖」
2007.3.28 - 4.3 劇場MOMO
原作 宮部みゆき「サボテンの花」(文藝春秋「我らが隣人の犯罪」所収( amazon) 作・演出 葛木英
出演 葛木英 中田顕史郎 古市海見子 中島徹 伊藤一将 岩田裕耳 福津屋兼蔵
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