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2007.04.07

【芝居】「紅の舞う丘」風琴工房

2007.4.6 19:30

80年代に起業した化粧品会社の女性社長と、その会社の物語。女性達の20年前のいくつかの姿を書き分ける作家。面白かったです。11日までスズナリ。120分。

素舞台のような場所、上がってくる二人の女。大手化粧品会社を辞めて会社を起こす気満々の女と、その先輩(だが専業主婦)。仲間達は集まり、研究員を3人、総勢5名(+押しかけ社員1名)でスタートする。肌に悪いものを徹底的に排除し、防腐剤をゼロにするための研究は続けていても、モノにならない。倒産の危機が迫った時に出てきたアイディアは

既に組織のできあがっている会社でしか働いたことのないアタシから見ても、明日をも知れない感じではなくむしろ大企業の1セクションのようで、むしろあり得ない感じを受けてしまったのも事実なのですが、それは大した問題ではない気がします。時代や業種や規模が違うのだからもしかしたらアタシの思いこみかもしれません。お金の問題はありますが、「遺産が」という一言で少々強引でも片付けられてしまえば、客としてはそこを突っ込む理由はありません。

取材を重視する作家らしく、たとえば「薬学と化学の違い」(薬学は治癒が最重要)や、モノを作り売る人々の情熱など、「プロジェクトX」的な力強さがあります。反面、一つのモデルから組み立てず、切り貼りと創作で作られているためにリアルっぽさには欠ける印象もあります。それは悪いことばかりではなくて、ぶっ飛んだキャラクタが出てくる面白さがアタシは好きなのですが。

組織を維持するという点で、作家には主宰の視点も見え隠れします。作る人だけではなく商品を売ってくれる人、売るための方策を考えてくれるひとなど、さまざまな人が、しかし壁を作らずに働いているという小さな組織と情熱への強い愛情を感じます。

アタシ的泣き所は後半に集中しています。「ビジネスの関係」なのに「男と女の関係」が顔を出しそうになる危ういバランス。引導を渡された瞬間の「落とされた」感覚、その直後に大声で泣く女から前向きへと変わるプロセス。その涙がどちらの関係の破綻かはアタシにはあまりはっきりわからないのだけど、それゆえに「ない交ぜになった感情」の吐露に感じられ、アタシの気持ちにすとんと収まります。

紅を引く美しいシーンがあります。自分のためではなく母となり去っていく女へ紅をという背景が美しく。もっともっと前の方で見たら、アタシはダー泣きだった気もしますが、スズナリの規模でも後ろからでは想像力で補うしかないのが厳しいところ。一輪の花を変えていって季節の移り変わりをシンボリックに見せるのはシンプルだけど効果的です。

風琴工房「紅の舞う丘」
2007.4.4 - 4.11 ザ・スズナリ
作・演出 詩森ろば
出演 大崎由利子 江口敦子(燐光群) 永滝元太郎(劇団M.O.P) 浦壁詔一(ポかリン記憶舎) 松岡洋子 笹野鈴々音 宮嶋美子 山ノ井史 浅倉洋介

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