2007.4.27 19:00
真っ青で美しいチラシが印象的。時代劇なのにアコースティックシアターの手触りがアタシは大好きです。GWも含め客席は空き気味と聞きます。ちゃんとしたクオリティ、当日券でもぜひ。5月6日までサンシャイン劇場、そのあと福岡、神戸。120分。
旅一座、目隠しをして立ち回り女剣士として舞台に立つ女。そんな女を養女に迎えたいと小田原藩の家老から使いが来る。娘を亡くした夫婦が、あまりにそっくりな彼女をどうしてもと呼び寄せる。やってきた家は外国船の到来を予期し、台場を置き大砲を据えることに心血を注ぎ金を使いすぎて保守派と呼ばれる人々から狙われている。
ある日改革派の武士が斬られる。左腕に怪我を負わせたものの、犯人は逃げおおせてしまう。が、女はその鋭い直感で怪しい男に気づいてしまう...
アタシ、実はキャラメルボックスの時代劇が少しばかり苦手で、熱い男達の疾走する話という、えらくざっくりした括りで、みんな一緒に見えてしまうなぁ、なんて思ってたりするのです。いや、もちろん楽しむのですが。
が、本作は少しテイストが違います。初めて女性を主役に据えた時代劇は、アコースティックシアターのような緩やかさ、時代の持つ厚みから生まれる力強さの手触りが実にいいバランスなのです。
政略結婚が日常で女の結婚が自分の意志ではどうにもならかったり、武士と芸人、あるいは武士同士の石高の違いといった、格差や身分制度といったものを人々の背景に置き、その中で懸命にもがく若者達。あるいは
黒船来訪前夜にそれを真剣に対応しようとする志と抵抗抵抗勢力を時代の背景に置いた物語の道具立ては、やけに社会派っぽい感じはします。時代劇というフォーマットのおかげで、格差や意識持ちようの差が鮮やかに見えてくるのです。
なんてことを感じながらも、あくまでもエンタテインメント。笑いと泣きをテンポ良くおりまぜていく感覚はやはり時代劇というよりは現代劇の感じ。むしろアコースティックシアターよりも前の、若い頃の彼らの作品に近いのかもしれません。
まったく違うところから武家という世界に飛び込み、懸命にそこの住人であろうとする娘を演じた温井摩耶は、落ち着いて見える佇まいとは裏腹に甲高い声を多用した一杯一杯感が、コミカルと一途を併せ持つこの役によくあっています。演技かと思えばさにあらず、カーテンコールでもそのままイッパイな感じが親しみ。
粟根まこと・坂口理恵を配した「父親たちの世代」を、必要以上に軽やかな笑いをベースにした造形にしたのは違和感がないわけではないのだけど、裏切りだの斬り合いだので殺伐としがちな後半にもそれを崩さないことでリズムを与えているのも事実で。
筒井俊作の演じた旅芸人の親方は若い役者なのにこの深み、オッと思わせます。實川貴美子の演じた武家の娘も時代枠組みの中での女のあり方を丁寧に描いていて、時代の基準線を引いてる感じが、この役者の佇まいによくあっています。
チラシに限らず、当日パンフも舞台も青が実に美しいのです。新しい時代の息吹とか、先を見通すマナコの強さとか、熱い想いというよりは「先を」という感じをよくあらわしているなぁ、とアタシは思うのです。
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