【芝居】「ジューゴ」チーム発砲B-ZIN
200704131900
15周年記念にして解散公演。きちんと「笑って泣けるヒーロー物」というコンセプト通り走り切ったのはたいしたものなのです。100分ほど。29日まで本多劇場。そのあと大阪、つくば。
特殊ゴーグルで意識を仮想空間に送り、撃ち合いするアトラクションゲーム。そこで働く妹を連れ戻しに来た兄。突然、空間は大きく揺れ、外部との通信も途絶える。仮面にマント姿の謎のプレイヤーに現実世界に戻るリセットの手立ても奪われ…
脚本が遅いと言われ続けている作家ですが、ここ数本は役者の力も含め安定している気がします。今作、初日時点でもちゃんと大丈夫。
「笑って泣ける」を謳ってきた彼らの集大成。派手なアクションや仕掛けは抑え、シンプルなセットで想いや意志を細かく描く流れ。仮想空間ゲームなどの道具だてや謎の設定などは彼ららしい感じがしますが、アクションやオチの凄さよりは、人間たちの小さな会話や味のある演技に強みがあります。芝居が小さい感じもあって、疾走感には欠ける気もしますが、10年ほど付き合ってきたアタシも彼らも歳とったなあ、ということなのかもしれません。初日は客も役者も距離を測り兼ねます。ましてや解散公演。しかし、客席はオープニングの劇団の出囃子(あれはなんと呼ぶのだ、オープニングテーマか)で拍手して待ちわびます。役者たちも波を掴むのに少し時間がかかります。徐々に暖まる客席。ちゃんと組み立てられていく想い、役者たちのキャラクタを生かした楽しさもそこかしこに。劇団としての強みをみせたのは西ノ園達大が中央で(やや説明のセリフを)言い淀んだ瞬間。舞台に居たほとんどの役者がそれを拾い、ギャグにし、元の物語に戻す力。彼もその後は何事もなかったかのように繋ぎます。ちゃんと知り尽くしているから、何が起きても怖くないという強固な繋がりなのです。
ややネタバレかも。
働く妹、実家に連れ戻そうとする兄、現実から逃げる女社長、水商売の女。遣える男たち、悩む男たち、謎めいた男(青色)、拘る男。それぞれの役者達の「らしい」キャラクタや人物のありかたを見てるだけで楽しい。主題歌を歌う彼(ラヴ&ピース川津)や、記念DVDを編集した彼女(タケウチヤスコ)、客席を見守る制作(余田かおり、吉村暁子)など、役者だった人々の断片が見え隠れするのも、ラストらしくてちょっといいのです。
素敵なセリフもあって、「あなたの中にはアタシは存在しないかも知れないけれど、アタシなの中にはしっかり存在してますから」なんてねぇ、そりゃ云ってみたいし云われてみたい気もしますよねぇ。
乗り合わせた人々がバラバラになったり疑心暗鬼になったり、気持ちがわかったり、はしゃいでみたり、孤独を感じたりしながら進む様子は、ツアコン的キャラクタも含めて「あいのり」な感じがします。(あたしゃ見てないけど、TV。
何かに頑張る力、へこたれそうになっても前向きになる力。サラリーマンは気楽な稼業、という時代はとうに過ぎている今だから、勤め人の心にダイレクトに響くこういう芝居はもっともっと存在していて欲しいとあたしは切に思うのです。
TEAM 発砲・B・ZIN15周年記念&解散公演「ジューゴ」
2007.4.13 - 4.29 本多劇場
2007.5.12 - 5.13 松下 IMPホール
2007.5.19 つくばカピオホール
作・演出 きだつよし
出演 平野勲人 工藤潤矢 小林愛 武藤晃子 西ノ園達大 森貞文則 伊波銀治 福田千亜紀 大橋夢能 きだつよし
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