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2007.03.31

【芝居】「妻の家族」ラッパ屋

2007.3.31 14:00

ラッパ屋の新作は少々複雑な兄弟姉妹と配偶者たちの夏の数日。140分。1日まで紀伊國屋ホール。そのあと大阪。

下連雀の古い家。盆休みにも帰ってこない子供たちをびっくりメールで呼んだ母親は病床で伏せっている。妻や夫が居たり、それぞれに困ってることがあって…

バラバラというよりは自由に育てられたらしい娘たちはそれぞれに自由で奔放な感じ。その相手をも見事に個性的で、それぞれ。母親自身も三度の結婚を経ていてまた自由。入籍したばかりの四女の夫が初めて訪れた「妻の実家」での個性的な人々との出来事を描くのかと思うとそれはわりと最初だけ。俯瞰した視点で、それぞれの事情やら想いやらを並列して並べて描いています。

借金を軸にして、姉妹たちの興味は古くて広い家の行く末に向かうという点では束ねられている気もしますが、それぞれがそれぞれの人生観を語りっぱなしという感じも受けて少々勿体無い気もします。

庭に池がある家の縁側という構造の舞台はラッパ屋の得意技で、人の動きを規制しときには、ドタバタを効果的に見せる働きはあるのですが、今作では少々、池落ちを使いすぎな印象は否めません。

「切って落とせない、いろんな人々がいる親戚の家族」という世界は確実に描いています。役者も手慣れた感じで安定した感じではあります。が、THEATER/TOPSで見せる濃密さや、「いろんな人々」の先が描ける筈の彼らだと思うのです。

元々、決して若々しい感じの劇団ではありませんが、介護、相続、果ては老いらくの恋やら高齢出産と、劇団も観客も歳とったなあと感慨を覚えます。一緒に歳をとり、観客がちゃんとついてきているというのは大したものだなあと思うのです。

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【芝居】「HONOR」TEAM NACS

2007.3.30 19:00

「水曜どうでしょう」でブレイクして全国区(微妙にサブカル)になっている大泉洋が所属する北海道の劇団。銀河劇場(旧アートスフィア)でのほぼ一ヶ月の公演。120分。日曜日まで東京、そのあと、大阪(ドラマシティ)、札幌(道新ホール)。

太鼓を叩く老人たち。村が合併する最後の日。酔っぱらった男の見た夢のような話。村には昔大きな木があって、その元では会えなくなった人に会えるのだといい...

取れないよなぁと思っていたのだけど、譲ってくれる方が居て初めて見る劇団。北海道からの劇団にイキオイを感じる最近。

太鼓を叩く老人たち、かつての風景、かつて見えたもの、昔の喧嘩。多分3,4世代にわたるような長い時間の話を前半でコンパクトに説明。そのおかげで共有できる背景を全員が持っているような構造。前半こそ着地点が見えずにイラっとする所がありますが、後半は実に味わいのあるいい芝居だとおもうのです。村の合併、出ていく子供達と残らなきゃいけない人々という地方の視点。居なくなってしまった人が見守ってくれるということ。HONERという言葉の持つ「敬意」の想いをベースに、そこから派生するさまざまな言葉、名誉や貞節、あるいは葬儀なんて発想を物語に織り込みつつ進むのです。

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2007.03.29

春ですね。

いやぁ、ものすごく暖かいのですが。オフィスから眼下に見えるサクラもボチボチ。多分、近くの公園のサクラも。職場でも異動する人、会社辞める人、さまざま聞こえてきて。気持ちが揺れます。

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2007.03.26

【芝居】「月葬(げっそう)」ダムダム弾団

2007.3.25 18:00

アタシは初見です。2002年結成の劇団の新作、三本からなるアダルトファンタジー。120分。公演は終了。

隕石衝突で軌道が変わり遠ざかる月が見えるヘカテラという街。弾圧された修道士たちが暮らすこの街では死者を月に送る、という。彫金術の男が死んだ。
(1)「呪縛」流行病(はやりやまい)の恐怖のなか二人組の逃亡者が街に、修道院に現れる。死ぬ寸前の男と連れてきた男。水を欲するが水を与えると死んでしまうという。連れてきた男は修道院の裏、かつての弾圧のあと、キリングフィールドと呼ばれる聖地に興味がある。死にかけている男の指に光る指輪は、修道院の看護士の女にも。
(2)「故郷」サーカス団の楽屋。見世物の「垢男」とそれを見守るダンサーたち。垢男は皮膚が見えないぐらいに厚い垢に覆われた男。水を与えると毒素を吐くのだという。ダンサーの一人は密かに垢男に水を与え、企みを成功させようとする。
(3)「輪廻」死んだ彫金師、一ヶ月経った今でも死神は大声で笑うばかりで連れて行く気配はない。現れた神父は魂の状態の人間を増やしたいといい、キリングフィールドでは流行病を広めていて...

チラシに書かれたのとは相当に違う物語。アダルトファンタジーというかダークファンタジー的な仕上がり。3つのエピソードはゆるやかに繋がってはいるものの、それが大きな世界を描くという力にはなっていません。物語自体も静かに進むシーンが多いこともあって、追いかけるのは相当に大変で、あたかもメモをするかのような気持ちで見ていかないと厳しい感じはあります。

ルポライターと名乗る男を演じた石井壮太郎は安定感があるのと同時に会話する相手との距離を計るような会話に味があります。アイドル、なのだという(不勉強にして知りませんが)久保亜沙香はツンデレ的な造形ですが、見た目にあっている感じ。どもるダンサーを演じた音室亜冊弓はかなり器用に振り幅の多い役を演じますが、どもり、という設定を導入する必要はない気がするのは作家の作業の側でしょうか。

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【芝居】「Adam:ski」スロウライダー

2007.3.25 15:00

民俗学者・折口信夫(おりぐちしのぶ)をモチーフにして、濃密。105分。三鷹市芸術文化センター星のホールでの公演は終了。

民俗学の研究者のところから逃げ出した男が語った話は、その研究者が死んだあとに残こされた四人の弟子たちが「先生の自伝」の続きを自分たちで完成させ、出版しようとする日々の物語だった。

「先生」自体は出現せず、四人の弟子たちや男をダメにしたと思われている女のもう一人の弟子、そしてメールをやりとりして居て弟子だと言い張る男たちを取り混ぜて進む物語。やがて見えてくるのは、男の弟子たちとも関係を結んでいる先生や、あるいは別の人格を弟子達に憑依させているような異様とも言える光景なのです。

アタシは折口信夫という名前すら知らなかった不勉強者なのですが、wikipediaを読む限り、口述筆記という手法や、マレビトや常世(とこよ)という言葉など、伝記されている事実も沢山盛り込まれています。が、実話の異様さが際だって、サイコスリラーのような仕上がりになっています。もちろん、弟子と言い張る男の存在や、異性愛でもあるという設定など創作されているだろう部分もあるし、知らずに見ている間はおかしな世界を作り上げた作家の力だと思っていたのですが、wikipediaを読んでしまった後は事実の凄さにひれ伏してしまうのです。

三鷹市芸術文化センター星のホールという劇場は、精力的に面白い劇団を探してきたり、当日でも電話で予約が出来るようなホスピタリティの良さなどいいところが一杯あるのですが、劇場の空間は間口が広くタッパが高いために、空間を埋めることができずにスカスカにしてしまって玉砕する劇団が多いのです。が、今作は額縁(プロセニアム)を取り払い、菱形状の舞台の二辺に客席を急傾斜に配置しているのは相当に秀逸な空間の梅方で、濃密な空間をちゃんと作り出すことに成功しているのです。三鷹においては、かつてのbird's-eye viewの空間構成と並ぶほどの空間です。

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2007.03.25

【芝居】「おたのしみ」ラックシステム

2007.3.24 19:00

関西、わかぎゑふ率いる関西弁にこだわった2年ぶり新作。120分、28日までスズナリ。

敗戦、帰国してきたのは、乃木印刷という町工場。闇市の男が持ってきた進駐軍のパーティのケーキに描く絵のデザインをしたことをキッカケに仕事が舞い込む絵描き。が、その活躍や絵の巧さゆえに...

終戦もしくは敗戦の1945年(1500円のパンフレット、おしまいの方に年表がついてるのだけど間違ってるし、再開を再会とか細かく間違ってるのはどうなのだ、人のこといえないけど。)を起点に朝鮮特需に沸く5年目までの間の物語。

ラックシステムは勝手に女性視点の物語を紡ぐのだと思いこんでいましたが、今作はちょっと違います。笑いも多いし、ベタなネタもあるのだけれど、昨今の何かを作家が感じ取り、少しイデオロギーを混ぜつつ描くというのはあまりなかった形だと思います。それは単に作家のきまぐれなのかもしれませんし、あるいは何かの怒りの静かな姿なのかもしれません。「お正月」の重厚さや「お願い」の心を強く震わせるような物語というよりは、時代の雰囲気を描く方向に徹しているのです。

「悪人が出てこない芝居を描きたかった」という終演後挨拶(+パンフ)は確かなのです。上が決めた時代の中で目一杯生きている感じ、殺されそうになる絵描きを助けるための奔走はまさにそういう感じがします。

あたしが気持ちを動かされるのは、勘違いからプロポーズになるシーンや、あるいは終戦からたった5年で再び戦地に赴く軍人とそれを見送る女の姿なのです。

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2007.03.24

【芝居】「いやむしろ忘れて草」五反田団

2007.3.24 15:30

五反田団の中ではもっとも普通にスタンダードな仕上がりの再演。80分。25日までアゴラ劇場。

ベッドの上で寝起きを繰り返えす三女。母親はおらず、八百屋を営む父親と四人姉妹。子供の頃と、大人になって入院し、家の八百屋を畳んだ頃と…

いい歳した俳優たち。幼く見えるとはいえホントは無茶な設定の子供役。それか痛々しくならないのは、子供の他愛ない喧嘩をリアルに描き切る五反田団の得意技の賜物という側面はある気がします。

自分のせいで家族が自由な道を選べない。みんな心から彼女を想う気持ちに嘘偽りはなく、何かの解決策があるわけでもない行き場のなさを丁寧に描くのです。

姉妹のカシマシさ、恋バナが何物にも優先するあたりの感覚も、アタシには好みの感じです。

初演のときは、「あの五反田団が」という驚きが一番インパクトがあったところだったのですが、再演、しかも全体像としてはあまりいじらなかったようで、インパクトは少なめ。もちろん、スタンダードな芝居としての肌触りは健在で、見てない方にこそ勧めたいと思うのです。

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【ライブ】「EPO with 笹子重治 Spring Tour 2007」

2007.3.23 19:30

EPOと、長年一緒にやってきたギタリスト笹子重治。小さな空間で二人のライブ。 かつて幡ヶ谷にあった「たまははき」というライブの出来る居酒屋(でもアタシは行ったことない)で続けていたライブのような雰囲気なのだと思います。20分の休憩を入れて約3時間。代官山・「晴れたら空に豆まいて」にて。

100人ほどの小さな空間。代官山駅すぐ近く、地下2F。ゴハンもお酒も楽しめて、キャッシュ・オンな気楽な感じの店。基本的にテーブルと椅子。上手側最後方は厨房・カウンターで、その前に高くなった桟敷。下手側後方は音響・照明でそのすぐ前にも桟敷。で、遅めに行ったアタシは上手側の桟敷に見事収まって。見やすくてゆったりできて実は凄くいい席なのではないのか、ここ。

笹子重治のギターの圧倒的な安定もさることながら、この二人の間に流れる安心感というのは何物にも代え難いのです。客からリクエストを募っても大抵なんとかなってしまうぐらいに一緒にやった曲も多く、また名曲が揃ってる強み。AQUA NOMEに比べると、ほとんどEPOだけが喋るような感じではあるけれど、小さな空間で表情を見てるだけで楽しいというのは、ちょっとマニアックに過ぎますかそうですか。

大貫妙子をネタにして見たり(怖いのかぁ、そうかぁ。)、あるいは国府弘子の即興の相性がいいことに唸ったり。しかもここの日替わりゲスト(4/6)とは、どんな繋がりだっ。>あたし

カバー曲、参加したこれから出るアルバムの曲、昔の曲、まだレコーディングしてない曲を取り混ぜて21曲。喋りも多く、アルコールがあるのもあって3時間はあっと言う間なのです。リリースも多いようで、楽しみな一年になりそうです。とりあえずはあれですか、SMAP×SMAP(4/30)ですか。

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2007.03.22

【芝居】「the who's TOMMY」テレビ東京+ニッポン放送+梅田芸術劇場+ぴあ

2007.03.21 17:30

ミュージカルどころかロックオペラですら得意じゃないアタシ、なぜか取ってしまったチケットなのですが、アタシは意外なほど楽しめました。休憩20分を含んで125分。31日まで日生劇場。(実は初体験じゃなかった...)

1940年、戦争の中で生まれた子供、親の犯罪の現場を目撃してしまったトラウマで、見えない・聞こえない・話せなくなってしまった。彼は鏡の向こうに閉じこもり、あちら側ではポップに暮らしているのだが、こちらの現実側ではほとんど何も動かなかった。ある日、ピンボールで圧倒的な高得点をマークし、人気者となって..

イギリスのバンド、"THE WHO" のアルバムがもとにあるのだといいます。洋楽をことごとく避けてしまってきたあたしは、何も知らないまま見ていたのです。世間の評判は決して良くはなく、また客席も満員というわけにはいきません。セリフらしいセリフは殆どなく、アルバムの楽曲を(日本語訳ですが)ほぼそのまま、演奏し歌い続けるのです。おそらく、これは舞台版フォーマットから来る制約された契約なのでしょう。

ミュージカルは殆どダメなアタシですが、これがちゃんと面白いのは音楽の力もさることながら、メタルマクベスでお目見えした、明るく自発光するスクリーンを実に巧く使っているというテクニカルなところもあるでしょう。二面用意して、左右に動かせるようにすることで、扉も部屋も自在に表現できる「デジタル書き割り」を高次元で作り出すのです。映像はCGが中心、状況説明の序盤は可愛い感じの絵柄。閉じこもるTOMMYの内面はポップでビデオドラッグのような印象の強さ。あるいはクレーンを使って画面から飛び出てくるようにするのも印象的。

難点がないわけではありません。チケットが高すぎる気がするのは置いておいても、一幕目の終盤のピンボールが「しょぼい」感じがしてしまうのです。あれをするなら、物量でもの凄い量を客席に打ち出すか、あるいは一つ巨大に作って客席に落とすように圧倒さを作って欲しいと思うのです。

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2007.03.21

【芝居】「一丁目二十三番地金子某の家のこぐまが居るといふ」トリのマーク

200703211300

向島で一年間の在住を通して作品作りを進めるトリのマーク、拠点となるカフェでの初の演劇公演。21日のみ、50分。アート&カフェこぐま。

カフェの椅子に座るひと。なぜか名前を呼ばれるのを警戒する。マスターとの会話を通して近所のこと、ここのこと。時折現れるもうひとりは要領得ない会話したりして…

「場所から発想する」彼らの新作。正にいま日々を過ごしているここ、約4ヶ月ほどの在住を通して作家の見ている「ここ」の記憶を辿る会話。blog読んでいれば知ってる出来事は、それを知らない客へも終演後パンフの形で解説されます。

ボケ・突っ込みの構造が二つ生まれることで、深みと味わいのある構造。のんびりと見ているだけでも楽しめるのです。

カフェの名前、「こぐま」の名前の由来は明らかにはされなかった気がしますが、ヒントというか、こぐまっぽさは感じる仕上がり。ストーリー重視なアタシの普段の好みとは違うジャンルなのだけど、紡がれる世界は何故か好きなのです。

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スイート、スイート。

オフィスに入ってる売店。やけにスイートが充実してて、今まで禁断だった、食後の甘味。シュークリームなんか食後に食べるアタシじゃなかったのに。怖い怖い、週末の体重計が。気のせいか夜中の酒を我慢出来るのは、やっぱ何かの因果関係があるのではないかと思うのだけどどうだろう。

先週、水曜日分のトリのマーク、Who's TOMMY。多分見る五反田団、スロウライダー、まで書いてしまったので、そこから漏れたモノリストアップ。

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2007.03.19

【落語】「ノスケ第19回」喬之助+三之助

2007.3.18 19:00

柳家喬之助と柳家三之助の二人会。20日の喬之助の真打ち昇進を目前にした二ツ目最後の高座にして、ノスケとしての最終回。ゲストは三遊亭天どん。日暮里サニーサイドホール・コンサートサロン(ホテルラングウッド)にて。

税務署に確定申告にやってきたおばさんは実は殺し屋だった「はじめての確定申告殺し屋確定申告(ご指摘感謝)」(天どん)。客が捕まらない駕籠屋の二人がやっとこさ捕まえた客は「蜘蛛駕籠」(三之助)。貧乏長屋と揶揄されてる大家が店子を集めて提案した花見は「長屋の花見」(三之助)。女遊びが過ぎた大工が女房子供と別れてから改心して三年ぶりに子供に出会って「子別れ」(喬之助)。(演目のタイトルは栗ッビングさんを参照させていただきました。聞いただけではタイトルまでは判らないアタシです。)

円丈師匠の弟子という天どんは新作で。円丈師匠がパソコン好きってのが売りだったころがあって、アタシ的には馴染みのある感じ。見付かっちゃいけない商売なのに還付金欲しさに申告に来るっていうワンアイディアが膨らんで楽しい。

「蜘蛛駕籠」は三之助のネタおろしで、妙な客たちのキャラクタ、表情が楽しい。「長屋の花見」は多彩な顔が揃う長屋の住人たちの表情の変化。貧乏ながらぶつぶついいながらでも、盛り上げていこうっていう心意気が小気味いい話でアタシは好きです。

「子別れ」は前もどこかで(といって喬之助を見てるとすればノスケだけだと思うのだけど)拝見した記憶。会の雰囲気とは違うけど、あえて好きな演目を二ツ目最後に、と云いながら始めた人情話。喬之助が演じる子供の無邪気というよりは健気な子供は一歩間違えると嫌みになると思うのだけど、その直前で踏みとどまり、そしてこの健気さの向こうに母親の強い愛情を印象づけられるのです。

喬之助の真打ち直前の効果かどうかはわかりませんが、ホールはまずまず埋まっていて、しかもちゃんと笑いどころを押さえた気持ちのいい客席。ノスケの最終回、という触れ込みだった気もするのですが、7月からはセカンドシーズン、だそうです。(つまり続く)。

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2007.03.18

【芝居】「狂想のユニオン」イキウメ

2007.3.18 14:00

濃密にSF。アタシは好きです。110分、21日まで吉祥寺シアター。

山間に迷いこんでたどり着いた三人、歌舞伎町での捜査の最中に気がついた男。暮らしている人々はいるし、酷い臭いはするが、町には見えるがGPSが示すそこには町などなくて…

個々人の願望が現実化し、拮抗するバランスポイントが共有される世界。このややこしいルールを説明なしに観客に納得させるまでの道筋はさすがに少々手間取っている感じはありますが、それがわかってからの世界の中でくり広げられる綱引きは実にスリリングなのです。

妄想が現実化するという設定は数あれど、バランスする点の拮抗を共有というルールは(現代、というよりもっと短いスパンで今の雰囲気を表してるという意味で)現在的で鋭い視点だと思うのです。

終幕は余地を残しているとも言えますが、結論を見せないという感じでアタシにはモヤモヤも残します。

当日でふらふら伺ったのですが、ちゃんと満員。RB(上手バルコニー)席では上手側ベンチが見切れたり、下手袖のライトが眩しすぎて見えにくいシーンがあったりしますが、結果的には大した問題ではありません。開演前に上手上側にスライドで少しばかりの背景説明があるのですが、パンフと合わせて世界の導入の助けになります。

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【芝居】「トレインホッパーズ」桃唄309

2007.3.17 19:30

毎回全く違う顔を見せる桃唄の新作。110分、18日までザ・ポケット。

アメリカで列車に飛び乗りながら旅をする日本人たち。ふとしたきっかけで知り合い、また会ったり、会わなかったり。「白い谷」にたどり着いた7人は、伝説となる。数年後、日本に戻ってきていた面々は、仲間の死を知り、葬式に集う…

テンポが命な物語。しかし作家は3つの時間軸の物語を鋭利な刃物で切り刻んでしまいます。切り口は真っ直ぐで、コマがどのコマにでも繋がりそうで、一度見ただけでは、頭の中では再構築するのは難しい気がします。 物語を拠り所にして芝居を見ようとすると、スピード感も相まって、振り落とされてしまうのです。当日パンフでは作家が「少しは頭を使おう」という趣旨のことを言っていて、意図したわけではないのでしょうが観客に対して挑発している感じ。

それでも、自在に飛び回る空間と時間。細かく作り込んでいかないとこういう舞台にはならないと思うのですが、役者たちは自由でアナーキーな感じに見えて、作り込み感が表に出てこないのがカッコイイなぁと思うのです。

前回が「おやすみおじさん」だったことを考えると、ほんとに振り幅というか間口の広い劇団で、見るたびに違うアイディアを違う見せ方で見せてくれる、と言う点で楽しみだし、観客の側も油断が出来ず、舞台と観客が毎回向かい合うという形を見せる数少ない劇団だと思うのです。

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【芝居】「ヒッキー・カンクーントルネード+お願い放課後(プレビュー)」ハイバイ

2007.3.17 14:00

テンションの低い会話に底意地の悪い(というかあまりに冷静な)観察眼。 旗揚げ作の再演60分に次回作プレビュー100分を組にして。18日までアトリエヘリコプター。

一本はプレビューとはいえ、本番並に作られていて、結果的に2000円で二本立てのお徳用パッケージ。

プロレス好きで引きこもり10年目の男。妹はそれなりに仲良くやってるが、治療のために母親が連れて来た「出張お兄さん」はいつの間にか居座ってしまう。彼を帰すためカウンセラーに相談に行くと…「ヒッキー〜」。

19歳なのに肉体的に76歳の男は演劇部に新しくやって来た顧問に理不尽なシゴキを受ける。憧れていた女の子に告白も出来ず悶々としていたが、顧問の言いなりになっている男に、彼女は…「おねがい〜」。

どちらかというと淡々とした語り口なのに微妙に変な人物たちに味。物語というより、人物スケッチや理不尽だったり情けなかったりする場面の執拗さ。反面、終幕のアッサリした感じは食いたりなさを感じるのも、まあいつもの通り。

ヒッキーの方は改訂版は見たことあるのですが、オリジナルは初体験。作家自身が引きこもり男を演じるバージョンで見たかったのですが、ああ勘違いしてしまったアタシです。妹と兄の微妙な距離感の作り方が絶妙で、ちょっとほっこりしてしまったりします。

「おねがい〜」方は5月新作公演に向けてのプレビュー。青年団の俳優・志賀廣太郎を客演に迎える予定で(で、アタシの観た回には向かい側の客席に)、その名前そのままの役名に。品川幸雄なる演出家役キャラクタもかなり卑怯な造型で楽しいのです。

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2007.03.17

【芝居】「男三人で寺山を」

2007.3.16 20:00

つよしとひでき、の大塚秀記の朗読に踊り手、音響を二人を加えての公演。日暮里にある震災前からの一軒家を使ったバーで。公演は終了。

寺山修司のテキスト、「老ポパイ」「フリーダムソング」などからの朗読。テキストをきっちりと聞かせる魅力。アタシはちゃんと読んだことがないので、新鮮なのです。

場所は圧倒的な魅力があります。その場所に居るのは嬉しい感じ。反面、劇場ではない空間、二つに分けられた客席で、坐る場所を間違えると、まったく見えない場所にアクティングエリアを置いての朗読、踊り。二つの客席の交点となる場所(バーカウンターが鎮座している)の前の僅かなエリアが使えればこうはならないと思うのです。

三人がこの場所に想いを持ち、何かをしようという心意気が好きなのですが、公演として見た場合はバランスをどう取るか、が難しいなぁと思ったりもするのです。

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2007.03.15

【芝居】「ふたりが見た景色」play unit - fullfull

2007.3.14 19:30

小さい空間で、客演も多い布陣フルフルの新作。100分、18日までギャラリールデコ5。

沈むような冴えない畳敷きにせんべい布団の部屋。喪服姿の兄弟たちは久しぶり。妻と子供を残しこの部屋で死んだ男が、隠していたものは…

その女と二人で見る景色を大切に思うこと、といえば聞こえはいいけど結局は浮気相手との駆け落ちの部屋。男の生前と死後を重ね合わせながら描く風景。

随分会ってない兄弟たちへの久し振りのアクセスは叶わないのに、現在近くに居る相手には言い出せないこと、という「ねじれ」がある、という視点がアタシ的にはこの芝居の中心。想いの深さと、その言いよどむ感覚はアタシにハマります。

初日は客席設備のトラブルで客席の配置し直しなどあり桟敷席の多い構成だったよう。まあ、お陰であたしは最前列で見られたわけですが、芝居そのものの影響は感じませんでした。

難点が亡いわけではなくて、正直な話、アタシから見ると細かく書き込まれ、し過ぎるぐらいに説明することと、わりと大きい骨格なのにアッサリと扱われて、説明が少ないと感じるバランスは微妙なところがあります。オカルトっぽい色が突然出てきたり、あるいは、悪意や善意が強すぎたり、愛憎のねじれが必ずしも物語に大きく影響しないなど弱い点はある気もします。が、あたしは作家が書こうとしている世界、というより風景が愛おしいのです。

勝平ともこ、この「あからさまでない色気」の強さは意外だったり(失礼)します。M.O.P.の前回公演に続き囓る力。太田善也はちょっと卑怯な役ということはありますが、笑いも多くて印象に残ります。菊池美里は強くデフォルメされた役が続きますが、さすがに強い。

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2007.03.14

カードの日々

社員証が非接触ICカードで、もうそこら中のセキュリティに必須な日々。食堂の決済もこれ一枚、というのはなんか便利な日々なのですが、よく考えたらこれで、誰が何処にいるかある程度特定出来るってことで、怖いことだと思う反面、ちょっと何か面白いこと出来るんじゃないかと無邪気に考えてしまうあたしです。

そういえばPASMOも18日から。パスネットの中でも地下鉄路線図がデザインされたやつが好きだったので、これが見えなくなるのは寂しいけれど、一分を争う劇場間移動では、非接触カードのメリットは確かにありそうです。

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2007.03.12

【芝居】「スワチャントッド」千年王國

2007.3.11 17:00

北海道の劇団の新作。溢れるリズムが楽しい。90分、「劇」小劇場での公演は終了、4月に北海道で。

家庭教師に来た家は女二人暮らし。姉はモールスを打つ通信を引き受けて家計を支え、妹は喋れないために喉元の楽器を鳴らす。楽しいリズムに気付いた家庭教師は電鍵を打って港に流すが、そのリズムが流された日は殺人がないということがわかり...

打楽器を基本としてリズムを刻みながら一人の台詞を代替させる趣向。芝居全体を打楽器、ならばSTOMPやNANTA!などの前例もあるのですが、一人の台詞だけ、というのが面白いのです。

彼女の終盤の台詞をゴールにするために、家族の関係をいたずらに複雑にしてしまっている感じはあって、アタシは関係を一瞬見失ってしまいましたが、たいした問題ではありません。小さな劇場でビートに溢れる舞台は見ていて楽しくて、特徴のある舞台なのです。

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【芝居】「次の出発」見学者

2007.3.11 14:00

日本書紀のイザナギ・イザナミのくだりの引用をベースに。吉祥寺シアターでの公演は終了。120分。

土手に立つバス停。何も無い村からの渡し舟の着き場から降り立った夫婦と旅の道連れ…

吉祥寺シアターの中央にうず高く段を組み、中央にバス停。来ないバスを待ち続ける人々の光景に重なる日本書記かららしい引用で生まれなかった命の話をまといます。

日本の神話からの引用とうっすら伝え聞いていても予習を怠り、ましてや知識を持ち合わせないアタシには、貫かれている話の背景が結果的に見えなかったのは少々厳しく。観客にどこまでの予備知識を求めるかはナイーブな問題なのでいい悪い、ではないのですが。

三月に切り取られたシートで雨を凌ぐシーンは灯かりと相まって美しく。舞台上にタープがあるシーンは光の様子が変わり、何故か好きなアタシです。

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2007.03.11

【芝居】「僕たちの好きだった革命」KOKAMI@network

2007.3.10 18:00

鴻上尚史の演劇のブランド、KOKAMI@networkの新作。高校での学生運動が現代に蘇るのだけれど、楽しい160分(休憩15分込み)。11日までシアターアプル。そのあと、宮城・山形・愛知・大阪・北海道。

1969年の高校、自由な文化祭を訴える高校生が機動隊が水平に発した催涙弾を受けて意識を失ったまま30年。奇跡的に目を覚ました男は母校への復学を果たす。が、管理が行き届いた高校の中で熱い気持ちを持つ男は煙たがられる。文化祭のクラス企画インディーズのラッパーのコンサートは学校側に禁止される。男は実現のために立ち上がる。

この前みた、早稲田の学生たちに比べるとほぼ倍の年齢の作家。ノスタルジーに過ぎる感じはありますが、楽屋落ちとかエンゲキのルール、客席を巻き込み、あるいは細かなネタを仕込みながら飽きさせないように見せ続け、想いをしっかりと描くのはさすがだなと思うのです。終幕に語られるのは、やはり言葉がいつか人に届いていくということを信じる信念なのです。

素舞台に近い作り、カーテンを左右に流しながら多くの場面をテンポ良く作るのです。

機動隊がこれをワクワクして待っているという設定はつかこうへいにもあった気がします。この世界における「飛龍」はブレイク直前のラッパー。あり得ない奇跡を起こす為に必要だし、「扇動される」気持ちよさがあるのです。

当時の同級生達の内面の想いとの対立が重要な軸なのです。ほろ苦さも含めてノスタルジーだったりはするのですが。

中村雅俊の暑苦しさはキャラクターにあってる気がします。片瀬那奈の立ち姿と言葉がしっかりとしているのが頼もしい。GAKU-MCきっちり盛り上げる。大高洋夫の圧倒的な安定感なのだけど、鼻の頭を真っ赤にして叫ぶ姿というのは初めて見た気がします。菅原大吉は機動隊という姿が実に似合う。澤田育子の「今の教師」はらしい感じ。武藤晃子は細かくいろんなキャラクタが楽しい。長野里美は物語の根幹を支えるところがあって、軽くおちゃらけた役が少ないのは残念だけど、この役は彼女にしか出来ないなぁとも思うのです。

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【芝居】「激情」ポツドール

200703101430

ポツドールの04年公演の再演。アタシはこの演目初見です。130分、11日まで本多劇場。

田舎の町。借金で親が自殺したが、働かないままで何故か同級生が働いて返すのに罪悪感のない男。近所の金持ちが半分を返してくれ、働かせてくれるといって、真っ当になった筈なのに。
東京から来た友達の友達の酷い言動に田舎の前途のなさを思い知って男は…

丁寧に細かく前向きになる男や周囲を描く前半。東京の友達の来訪が喫水線を越えてから後は崩壊に真っ直ぐに突き進みます。

人物の造形は嘘も極端に過ぎるのもありますが、ありそう。後半は楽しい話ではないのだけど、2時間越えるのに見続けさせるのは確かな力なのです。

下手端の席。当日券の売り手は見にくい部分と言って券を渡します。なるほど、窓の外や降り続ける雪は見づらい感じです。舞台中央の柱で遮られる場面はもう少し減らせるかも、というか 柱要らない気が。

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2007.03.10

【芝居】「きみをあらいながせ」COLLOL

2007.3.9 20:00

原作の断片のコラージュにオリジナルの小さなシーンを挟んだCOLLOLのスタイルを「銀河鉄道の夜」で。80分強、13日まで王子小劇場。昼公演も含め連日トークショーを設定(30分ほどか)。

銀河鉄道の夜(青空文庫)から、各シーンを抜き出し。順番を変えたり繰り返しなどしながらも、主要な部分のテキストは拾ってある感じがします。その合間に友達二人で花火を眺めるシチュエーションの会話のバリエーションをいくつか。

テキストはわりとまんべんなく拾ってあるとはいえ、物語を追うということは難しい気がします。これからご覧になるのならば、青空文庫ででもざっと読んでおくと楽しめると思います。

「銀鉄」のテキストの中で力点があるのは「家」(家で待つ母親に牛乳が届いてないことを気づいて取りに出かける)にあります。オーソドックスな病床に伏せってるものや、PCに向かってるとか、逆に元気いっぱいな感じだったりと、ジョバンニと母親の会話をテキストにはあまり手を加えずにいくつものバリエーションに展開します。トークショーによれば、田口アヤコがこの物語を母親との話と解釈していたり、自分の母親を亡くしたことなどに起因してるのだそうで、いわれてみれば、ここに力点を感じます。

アタシがいいと思うのは、加えられたテキストのシーン。花火を眺めるというシチュエーションで、男×男、女×女、男×女などいくつものバリエーションになっていきます。ひとつひとつには大した物語があるわけではなく、ゆるい感じの「空気感」が作られるだけなのですが、過去2回も含めて、この空気感がアタシは好きなのです。もっとも、これだけでは物語が形成できるわけはなく、テキストを持ってくるということになっているのかもしれません。このテキストを聞き続けたいと思ったとしても、やはり物語がアタシは必要なので痛し痒しではあります。

個人的には芝居の優劣に関係なく、短いシーンを芝居で「繰り返すこと」という意味はよくわかりませんし、どちらかというと苦手です。作演によれば、繰り返すことによって観客の中に蓄積していく何かがあふれ出す瞬間を作りたいようです。繰り返されるシーンに何かの思い入れや、関連する感情があれば、このあふれ出す瞬間を作り出すことができるのかもしれません。

全体はほぼ素舞台。対面構造にしているおかげで客席も影がないのはメリット。中央にそびえ立つ装置は、劇作上必要なものなのでしょうが、真横に坐ると形状が見えないので、これからご覧になるのならば、少しずれたあたりを。

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2007.03.06

風邪をひいて。

埃っぽいオフィスの引っ越しを、マスクなしでやってしまったからか。クシャミが止まらず、微妙にだるくて。思い切って休み。病院行って、ご飯食べて、本買って、ラジオをつけながら寝て、ご飯食べに出て、スーパー寄って、テレビみて。調子はいいようです。早く寝よう..

そういえば公開していなかった、週末の予定。

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2007.03.05

【芝居】「ゼリーの空間」空間ゼリー

2007.3.4 19:00

「女性のために演劇、」を掲げる劇団の新作。女子高生のクラスで起きた事を通して見える光景は見応えがある濃密な90分。11日までシアターグリーンBox in Box(中)。

土曜日(休日)の教室。卒業アルバムの写真を選ぶために集まった女子高生たち。カシマシい中、教師と共にやって来た男は、犯人を探すかのように、クラスで2ヶ月前に起きた事件を…。

同質で有ることを至上とする人々の空間を「ゼリーな空間」とタイトルに。イジメを違う質を排除する構造と位置付ける視点は決して目新しいものではありません。が、それを幾重にも、その発端と、それを突き進めるざるを得ない状況と、次の萌芽をきっちり見せるのです。

難点がないわけではありません。事件を説明するために導入された男はエキセントリックに過ぎる造形です。が、事件を手短に説明するためには必要だということはよくわかります。序盤で「18歳の日本人女性」と彼女達が云うのも、云いそうにない気がします。もっともオヤジなアタシには説得力はありませんが。

女優の美しさは彼女たちの特質ですが、まるでコスプレなことも含めて、「クラスの中で目立つグループ」に説得力。

アタシに印象的なシーンが後半に二つあります。男子生徒と女子生徒の二人のシーンの絶望と望み。物語の骨子をだめ押しのように見せつけます。男子高校生の造形は荒っぽいのですが、まあ、高校生の男子ってのはこんなものだとも思います。はい。(何年前のことだろう、自分にとっては)。あるいは憧れを告げる女子生徒二人のシーン。興味本位の視点で描かれがちな関係なのだけど、そうではない純粋さがあるってことを忘れてたアタシは汚れてますかそうですか。

終幕の悲鳴は誰に向けられていたものか。ぶれのない描かれ方だと思うのだけど、意外にあれは誰なのかという声が終演後聞こえていたりもします。芝居ばっかり見てる客層以外に幅広くリーチ出来るのは強みなのですが。

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2007.03.04

【芝居】「unlock#1」東京デスロック

2007.3.3 19:00

青年団リンクの東京デスロックによるアトリエにこだわった公演。「アルジャーノンに花束を」にインスパイアされたといいます。90分、11日までアトリエ春風舎。

テクノポップスがかかりながら、回路基板やらメカたくさんの舞台。ボールの投げ合い、パソコン店の会話、ISPの話、取っ組み合い、パネル、ビデオ、ゲーム、ダンス。

あたしは伺えなかったのですが、春風舎での稽古期間も公開しながらアトリエという作り続ける場所での芝居。これもアタシは観てないのですが前回から作家が気づいたのは、役者の肉体が疲れたり汗をかいたりしていくことに価値があるのだといいます。キカイと肉体のあり方というどこかレトロなテーマを、稽古場で産まれたであろういくつかのシーンを繋いで作り出します。それこそ、狂ったように踊る終幕近くは、役者に大変な体力を強いるわけですが、その「疲れる」ということが生身の役者の面白さなのだということは判る気がします。

どのシーンも、アタシにとっては2割ほど長すぎる印象があります。しつこく続けること、淡々と繰り返すことに価値があるということはわかりますが、アタシの生理ではちょっと長く感じるのです。

3日夜は、青年団演出部の演出家たちを集めてのアフタトーク。掲示は30分ほどとしておきながら、1時間近くになってしまうのは時間を見るスタッフが居ないからだろうと思います。アフタトークの時間は延びるモノだとは思いますが、ココまで長くなるぐらいなら、最初から時間など云わなければ いいと思うのですが。

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2007.03.03

【芝居】「プライベートジョーク」パラドックス定数

2007.3.3 14:00

マドリードの学生寮を舞台に芸術家と科学者たちの物語。110分。4日までサンモールスタジオ。

1926年、マドリード、学生寮。後に芸術家として有名になる3人。大学の講演会に招かれたアインシュタインとピカソは学生寮の気取らなさが気に入って時折立ち寄るようになる。きな臭い時代に入り芸術や科学だけに専念というわけにも行かなくなり…

緊張感溢れる駆け引きが得意な彼らなのですが、本作は少々趣きが異なります。音楽やスライドを使い、空気も幾分ユルい感じで普通の芝居という印象。芸術家や科学者でありつづけ、一線でギリギリに身を削ってる緊張は台詞には現れても、登場する人物たちにはそんな印象がないのは、「天才」と呼ばれる人物を取り上げてしまったがために苦悩が薄いからでしょうか。

この手の歴史には疎いアタシですが、一同に会する機会はない彼らを出会わせるアイディア。 が、アタシは歴史を補完し空想を広げることで何かの物語を醸し出すことを、もっと期待してしまうのです。

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