【芝居】「Adam:ski」スロウライダー
2007.3.25 15:00
民俗学者・折口信夫(おりぐちしのぶ)をモチーフにして、濃密。105分。三鷹市芸術文化センター星のホールでの公演は終了。
民俗学の研究者のところから逃げ出した男が語った話は、その研究者が死んだあとに残こされた四人の弟子たちが「先生の自伝」の続きを自分たちで完成させ、出版しようとする日々の物語だった。
「先生」自体は出現せず、四人の弟子たちや男をダメにしたと思われている女のもう一人の弟子、そしてメールをやりとりして居て弟子だと言い張る男たちを取り混ぜて進む物語。やがて見えてくるのは、男の弟子たちとも関係を結んでいる先生や、あるいは別の人格を弟子達に憑依させているような異様とも言える光景なのです。
アタシは折口信夫という名前すら知らなかった不勉強者なのですが、wikipediaを読む限り、口述筆記という手法や、マレビトや常世(とこよ)という言葉など、伝記されている事実も沢山盛り込まれています。が、実話の異様さが際だって、サイコスリラーのような仕上がりになっています。もちろん、弟子と言い張る男の存在や、異性愛でもあるという設定など創作されているだろう部分もあるし、知らずに見ている間はおかしな世界を作り上げた作家の力だと思っていたのですが、wikipediaを読んでしまった後は事実の凄さにひれ伏してしまうのです。
三鷹市芸術文化センター星のホールという劇場は、精力的に面白い劇団を探してきたり、当日でも電話で予約が出来るようなホスピタリティの良さなどいいところが一杯あるのですが、劇場の空間は間口が広くタッパが高いために、空間を埋めることができずにスカスカにしてしまって玉砕する劇団が多いのです。が、今作は額縁(プロセニアム)を取り払い、菱形状の舞台の二辺に客席を急傾斜に配置しているのは相当に秀逸な空間の梅方で、濃密な空間をちゃんと作り出すことに成功しているのです。三鷹においては、かつてのbird's-eye viewの空間構成と並ぶほどの空間です。
スロウライダー「Adam:ski」(アダム・スキー)
2007.3.16 - 3.25 三鷹市芸術文化センター星のホール
作・演出 山中隆次郎
出演 山中隆次郎 數間優一 日下部そう(ポかリン記憶舎) 夏目慎也(東京デスロック) 渡辺いつか
金子岳憲(ハイバイ) 板倉チヒロ(クロムモリブデン) 村上聡一(中野成樹十フランケンズ) 山口奈緒子(明日図鑑) 竹井亮介(親族代表)
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