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2007.02.05

【芝居】「シフト」青年団リンク・サンプル

2007.2.4 15:00

青年団の松井周のユニット。青年団リンクとしての旗揚げにして次回は独立とか。相変わらずの狂いっぷりを堪能する110分。4日までアトリエ春風舎。

東京で出会って結婚することになった二人。妻の故郷で暮らすことを承諾する夫。妻は子供を作ろうとせず、同居する伯(叔)母に夫の関心を向けさせ、いわば「種付け」を強要させようとする。 かつて隆盛を誇った家だったが復興の切札のために、伝説の「白子様」授かろうとするが、長年の近親で交わる閉じた社会ではうまくいかず、東京で娘が出会った男の血を入れて「汚す」ことに血眼になる。

今どき(多分)あり得ない風習を持った田舎を設定しています。そこにはリアルはほぼありません。が、人物たちの 行動する規範が彼らにとってそういうものならば、そこにあるのはリアルなのかもしれません。 今の自分の価値観から眺めて彼らを笑ったり切り捨てたりするのは簡単なのだけど、自分が少数派の中でいき続けることの厳しさと脆さが露呈する終幕近くが可笑しくてちょっと好き。つまり、都会から来た夫はその風習に抵抗し続けるのだけど、終盤、相撲という名の乱交の輪に入れてもらうとアッサリ取り込まれたりするあたりで、集団に新参者を取り込む過程を目の当たりにするスリリング。

その風習を堅固に守っているように見える彼らでも、ショッピングセンターは身近に迫り、女が土地に縛られるのに疑問を持ったりということなど、時代の流れへの少しずつの変化も作家の醒めた目線が見えておもしろいのです。

ある社会の問題を解決するための方策(この場合は家の復興の奇跡をうむ「白子様」)が集団に必要とされる時の理不尽なこと。女は産む為の道具(大臣の発言がリンクするのは出来すぎた偶然でしょうが)とされ、役割を終えた女は(社会は養いはするし、ここ一番の発言力はあっても)、普段は認められない存在に描かれます。社会が彼女たちに仕打ちしてきたことの酷さ(これも、観客の居るこっち側の見方ではありますが)。

家庭の中で孤立してる姉と、夫の職場の上司は中盤まで意味合いの分からないポジションなのだけど、現代のこんなとっちらかった寓話を収束させるためには、必要な超越する存在。まさかこんなやり方とは。神なるものを絶対のモノとは出来ない日本の土壌にはあった超越のさせ方が面白いのです。

青年団の役者で、あからさまに性的な話というのもちょっと面白かったりします。辻美奈子はほとんどコスプレ状態ですが、これも芝居の面白さ。石橋亜希子は若いのに、女を超えてしまった存在感を見せます。

青年団リンク・サンプル「シフト」
2007.1.26 - 2.4 アトリエ春風舎
作・演出 松井周
出演 山村崇子 辻美奈子 古舘寛治 古屋隆太 小河原康二 石橋亜希子 荻野友里

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