【芝居】「繭文」黒色綺譚カナリア派
2007.2.12 19:30
アングラ・耽美が得意だった黒色綺譚カナリア派の新作。作家と女性と家族を巡る骨太で見せる、全く新しいテイスト。115分。13日夜までザムザ阿佐谷。
七人兄弟の子供たち。長男は壊れ、長女は嫁ぎ、次女は切り盛りし、三男は酒に浸り、三女は派手で四女は子供のままで家からでない。小説を書いていた次男はそれを観察し、多少の悪意を持って日記に書き留め。実は出版もされ。見られていることを意識し、後ろ指さされないようにして。
向かいに越してきた家の餅まきに出かけ、その後やってきた娘に次男や末娘が馴染むが、勝手に上がりこまれて次女は面白くない。
アングラ的な見た目は残し、七人兄弟なんて背景は現代の芝居としては成立しませんから、昭和な空気の舞台。しかし描かれているのは作家、とくに女性が何かを書くことの気迫と背負っていること。自意識過剰もあるし、苦しい生活もあるし。
話はまったく違うのに、なぜか頭に浮かぶのは「頭痛肩こり樋口一葉」なのです。多少のオカシサはあっても生活できるし、背負ってしまうのも、面倒みなきゃと思い込む流れでそう感じるのかもしれません。
幾重にも積みかさなる物語は、あまりに過剰な感じがしなくはないのだけれど、隙のない物語を構築しています。笑いはあまりあるとは言えませんが、目が離せないように展開していきます。
こんなにも若い作家がアングラ的な芝居なのが珍しくはあったのだけど、それが必ずしも芝居の面白さに繋がらないのが弱点だったのです。今作では、時代の風景こそ昔風ですが、オンナの自意識過剰を描くのは、(本谷有希子的な)地に足がついている安定があるのです。
終幕近くの赤い布のシーンは実に美しい。その中で行われる、仲間に入りたい気持ち、入って安心する気持ち、あるいは決まりにハマルことの安心と退屈が短い時間で提示されるのです。芝居的で楽しめます。
黒色綺譚カナリア派「繭文~放蕩ノ吊ラレ作家~」
2007.2.8 - 2.13 ザムザ阿佐谷
作・演出 赤澤ムック
出演 山下恵 吉川博史 斎藤けあき 柴原弘 赤澤ムック 牛水里美 眞藤ヒロシ 佐々木幸子(野鳩) 池田遼 町田彦衛 升望 間野健介(InnocentSphere)
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