【芝居】「素振り」渡辺源四郎商店
2007.1.6 19:00
畑澤聖悟の作品を三本連続上演する王子小劇場のシリーズ、のトリ。毛色は違うけれどたっぷりとした見応え。80分。7日昼まで王子小劇場。
三つの物語。断片にして入り交じりながら上演。
ねたばれかも
素振りをする男、最初は年齢すら明かされません。マネージャ風の女も知り合いであることはわかりますが、どういう関係かが見えないまま、じゃれ合うようにちょっかいを出す女、素振りをしたりすぐサボろうとしたりする男で物語が進みます。女は男に興味をあるそぶりを見せて別の学校のマネージャのことが好きなのだろうと揶揄したり、ホームラン宣言したのにかろうじての二塁打だったりしたことなど、ちょっかいを出していくのです。「十年ぶり」という言葉が出てきて、「変わらないな」「あたりまえでしょ」と会話するあたり(2回ぐらいある)から、その会話が現実の物ではないことが見えてきます。
駄目になった男が自分に向き合うために孤独に素振りをするうちに、脳内で交わされる会話。男が未練たらしくあとから思う気持ちを、こんなにもきっちり描くのです。ほんとうに独りで切ない。これ単独で二人芝居としても秀逸だとアタシは思うのです。
たとえばジムのトレッドミルで30分ぐらい、サウナだったら10分ぐらい(独りで)居ると、脳内でこんな会話してしまいそう、だとアタシがわかったのは30も半ばを過ぎてからなわけですが。(誰とだ)
家族の会話、はもう少し違う感じ。姉と妹の仲の悪さ、間合いの取り方、二人きりか婿がいるかで微妙にかわるパワーバランスが楽しい。そのバランスを取ろうとする婿や弟の姿は滑稽だったりしますが、観ていて楽しめる感じ。
コントの短編では「閉じこもる子供」が馬鹿馬鹿しくて楽しい。二人でやる短編としては、役者の演ずるいろんな姿が見えて楽しい。
確かに、この三本の間に繋がりも構造もなくて、これを一本で上演する意図は今ひとつわかりません。組み立てられた物語を期待してしまうと肩すかしな気もしますが、こういうレパートリーを劇団が持っていることの強みはあると思うのです。ほぼ素舞台でも簡単に上演できるということは演ずる機会を増やすという意味は確かにあって、それはたとえば山の手事情社における「ぴん」のような意味があると思うのです。アタシは。
渡辺源四郎商店「素振り」
2006.12.8 - 12.14 青森・アトリエ1007
2006.12.16 秋田・康楽館 (「第4回北の演劇祭」招聘公演)
2007.1.4 - 1.7 王子小劇場
作・演出 畑澤聖悟
出演 藤本一喜 工藤由佳子 高坂明生 菊池恵子 萱森由介 藤本英円 工藤静香(劇団夢遊病社) 三上晴佳
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