【芝居】「朧の森に棲む鬼」松竹
2007.1.5 18:00
新感「染」と題しての演舞場公演。完成度は高いのですが、あたしは少しひっかかります。210分。27日まで、新橋演舞場。
争う二つの国。落ち武者狩りをしていた同郷の二人。口が達者だが腕っ節はからきしの兄貴分と、喧嘩は誰にも負けないがすこし頭の鈍い弟分。森の中で出会った森の魔物。王の座が欲しくないかと囁かれ、兄が手にした「オボロの剣(舌のように動く剣だという)」は森の中を歩いていた武将に勝ってしまう。二人は街に降り、その武将の妻や帝に会い、手柄を立てて取り入っていく。
息もつかせぬようなスピーディな展開。悪役の染五郎も格好良く。物語にもちゃんと力があって、笑いもある。装置も凄い。完成度は高いのです。リピートする気持ちも、ハマル気持ちもよくわかるのです。悪魔に命を売った男の悲惨な末路を手抜かりなく描ききります。
市川染五郎はカッコイイし鬼気迫るのだけれど、色気というより乾いた感じ。秋山菜津子は物語をこの舞台で背負える数少ない女性。阿部サダヲの哀しみとリズムを崩す感じが楽しい。真木よう子は別人類のように顔が小さくて印象的だが声は課題。古田新太は一歩引いた感じだけれども少ないシーンも圧倒的な存在感。
が、これでもかという残虐非道の限り。自宅で映像で、あるいは映画館でというのならば何の問題もありませんが、演舞場という場所の空気にこの物語がふさわしいのだろうかと、疑問に思ったりするのです。シアターガイドのインタビューによれば、メタルマクベスに衝撃を受け、発憤して書いた芝居なのだといいます。まっすぐ、まっすぐ淡々と悪の道を進む物語、あたしはメタルマクベスの方が好きだなぁ。
とはいえ、この迫力の凄さは、舞台故だともおもうのですが。
メタルマクベスの時も書きましたが、この規模の公演でもちゃんと無料の配役表を配っているのは実に正しいと思います。小劇場でもたまに入れてないところがあったりするのですが、これがないと役者は永遠に名前覚えてもらえないワケですから、ここでけちけちしてはいけません。
松竹「朧の森に棲む鬼(おぼろのもりにすむおに)」
2007.1.2 - 1.27 新橋演舞場(2006.12.29-30プレビュー 12.30カウントダウン公演)
作 中島かずき 演出 いのうえひでのり
出演 市川染五郎 阿部サダヲ 秋山菜津子 真木よう子 高田聖子 粟根まこと 小須田康人 田山涼成 古田新太
逆木圭一郎 河野まさと 山本カナコ 礒野慎吾 吉田メタル 中谷さとみ 保坂エマ 村木仁 川原正嗣 前田悟
横山一敏 藤家剛 武田浩二 佐治康志 富永研司 矢部敬三 加藤学 川島弘之
愛田芽久 安藤由紀 生尾佳子 池永悦美 岡久美香 戸田朱美 NAMI 松下美穂 優花えり
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