【芝居】「甘い丘」KAKUTA
2007.1.20 19:00
同年代の群像劇、という作家の得意技とは少し違う新しい路線。笑いは少なめですがブレが少なくて安定している感じではあり、誰にでも勧められる強みがあります。120分、28日までシアタートラム。
ケミカル(またはゴム)サンダルの工場、山の中で携帯電話すらままならない。ワケアリの工員、女性が多く。
面接に訪れたのは、出所したばかりという若い女と、身なりのしっかりした主婦だという女。
大人の、色んなことを背負った女性たち。がさつだし、決して良くはない環境で働く人々。劇中で外から来た女がうっかり「落ちるところまで落ちる」と言った言葉を云うのだけど、それを笑い飛ばすようなバイタリティのある住人たち。アオハルポーズが近い感じはしますが、もっと深刻で全体に笑いは少なめに感じます。そんな人々を四季を通して描く構成。
作家の、ひいては劇団の強みは、いままでは身の丈に近い感覚、とでもいうものだと思うのです。久しぶりの新作は、おそらく作家の実体験にはないような環境が舞台。少し背伸び、少し地に足がついていない感じは残ります。が、酷い状況にあってもバイタリティに溢れる人々に向ける視線はやはり優しくて。
工場の中の仮眠室のような設えの場所、事務所、キャットクォークなどが組み合わさり、高さのあるシアタートラムをスカスカにしない見事な装置。下手側の方が見やすい感じではあります。舞台の上の方に工場の外、という設定の場所があるのだけどここは席によっては少し見づらい。
ネタバレかも。
二日目にしてこの安定。20日夜に設定された今回唯一のトークショーによれば、いつも稽古初日で絶対ホンが出来上がっていて、(今回は前の客演との関係で二週間で上げたのだといいます)ということの強みなのでしょう。
アタシの違和感は、終盤にある「スカートのシーン」。美しくて緊張もあるよく出来たシーンですし、女のある種の焦りと、朴訥な人間でもある種の欲望は避けて通れないという現実を描き出すという意図はしっかりしています。 が、それを観てた時のアタシには「女性の作家の視点とは少し異なるオトコの目線」の違和感を感じてしまうのです。もっとも、女性の本当の気持ちなど、オヤジなアタシにはわかる筈もなくて思いこみではあるし、見た目には色っぽくて好きなんですが。
アタシ的な泣きポイントは、更に終盤、救出された女が叫ぶ膨大な台詞。一見意味不明なことを叫ぶのだけど、それが彼女自身が過去に浴びた言葉だというシーン。その「人間を支えているモノ」が明確に立ち上がる瞬間が好きです。
KAKUTA「甘い丘」
2007.1.19 - 1.28 シアタートラム
作・演出 桑原裕子
出演 成清正紀 若狭勝也 川本裕之 原扶貴子 佐藤滋 高山奈央子 大枝佳織 野澤爽子 馬場恒行 桑原裕子
椿真由美(青年座) 村上航(猫のホテル) 三谷智子 高島雅羅
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コメント
時期外れですが、あけましておめでとうございます。本年も宜しくお願いします。
私も「救出された女が叫ぶ膨大な台詞」がグッときました。最初の暴力シーンはビクッとしましたが、途中から泣き叫ばなくなったのでそういう演出なのだと分かりました。工場の蒸気の噴出し音が女性のため息に聞えて気になりました。TBさせて頂きました。
投稿: ドラ | 2007.01.22 11:40
コメントありがとございます&あけましておめでとございます。
ああ、同じ所にぐっと来た方が。いえ、トークショーの時もアタシの友人もわりとスカートのシーンを筆頭に挙げる方が多くて、ここに同意してくださる方が。ここに。うれしいです。TBありがとうございます。
投稿: かわひ_ | 2007.01.24 01:16