【芝居】「幻想の虹」zupa(ズッパ)
2006.12.10 14:00
山の手事情社の水寄真弓と、Ort-d.dの倉迫康史のユニットの旗揚げ公演。原作テキストを抽出するスタイルで巧者揃いで。90分、pit北/区域の公演は終了。
「サロメ」と「カリギュラ」にテキストの原作を求め、好きでたまらなくて歪んだ愛情を核に様々に変化して見せる趣向。水寄企画「プリズム」から芝居を抜き出し、笑いを少し抑えて構成した、という雰囲気。テキスト再構成という芝居は数あれど、殊更静かすぎたり緊張感や様式の美しさに演出の興味が行ってるものが多くて、90分もの時間、アタシの緊張感が持たないものが多くなりがちです。 今作はそれに比べて笑いを混ぜて、テンポがあってアタシには見やすいのです。色気と笑いを自在に行き来する技量と、どこで踏みとどまり、どこでもっとふざけるかというセンスの良さだと思うのです。
生演奏ではありませんが、スタイリッシュなバイオリンは、クリスマスらしい感じがします。「ア・ラ・カルト」見てるからかもしれませんが。
劇場は少し特殊な空間で、二階部分がバルコニーのように舞台を囲みます。二階部分の芝居は後列の観客には殆ど見えません。それほど重要なシーンではないと言いますが、気になってしまうのが客の性。これは惜しい。色気というか、求める気持ちがやけに色濃くでていて、それに男女とも見目麗しい役者を加えて実に眼福な感じです。見事にやられて、その感覚がぼんやり胸元や背骨のあたりに残っている感じ(意味不明ですが)。テキストを味わうには、もいっかい見なきゃなあという感じなのですが。
月と鏡をモチーフ。何を云ってるかわからない男、キスして欲しい気持ち、独占したい萌芽。不倫後帰ろうとする女を脅して帰さない男、バランスの取れない愛情。化粧品の匂いを指摘してセクハラまがいの仕事場。絵を描く男、眼で見て欲しい女。ドリフな工事現場、忘年会の余興。メイド達、盆に載せて首持ってこいと云った女のうわさ話、殺したくなる瞬間。台詞(=もとのテキスト)と動き(=三角関係)が乖離している芝居。身体が欲しくて触らせてほしくて、唇が欲しくて。月は生娘。不死身なんてものはない。俺が生きるための力は遣い尽くしていない、心の渇き。メイド達のうわさ話続き、みんなの幸せを守るために3人殺さなければいけないという論理。クリスマスの買い物帰りに押しかける3人、有or無というゲーム。約束が反故、ヤったから進んだと思う、そこが刹那だと思う女と男の意識の差、というん十年前の悔しい話を今さら持ち出してオオモトを殺さなければ幸せになれないと思う女。工事現場の夕方、腹を割って話し合う男達の真剣勝負。帰宅する男、猫、みんなが離れていく寂しい気持ち。地球連邦作ることにしたなんて言い出す男、死んでるのか、どうなのか。帰宅した現場監督、独り言、酒、写真を置いて、自分は生きてる、死んだ人を想い続ける。
と、書き出してみれば(←メモしたらしい)、たしかに欲しいから始まって罪を犯し、寂しい気持ちという流れ。ちゃんとあるのです。
男が何云ってるかわからない序盤の話が切ない。化粧品セクハラまがい、見て欲しい女の描写にぞくぞくする。ドリフの工事現場は面白い。メイドたちの井戸端はやがて怖くなる。やったから思う意識の差は男女の永遠のテーマか。終盤の猫と酒飲みの二つのシーンはじんとして、切ない。
zupa「幻想の虹」
2006.12.8 - 12.10 pit北/区域
原作 ワイルド『サロメ』 カミュ『カリギュラ』 他
構成・演出 倉迫康史(Ort-d.d)
出演 水寄真弓(山の手事情社) 大井靖彦(花組芝居) 八代進一(花組芝居) 藤谷みき(リベルタ) 牧山祐大(カブ)牛乳や) 緒田果南
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