【芝居】「ソウル市民」青年団
2006.12.17 13:00
「静かな演劇」の起点となる劇団代表作の一つ。110分。吉祥寺シアターでの公演は終了。
1909年のソウル、成功した商家。朝鮮人の女中も働く家の中。それでもわりとリベラルで自由な空気。日韓併合を前にした静かな日々..
当時としてはリベラルな家を描きながらも無自覚に、文化も含め人種に上下をつけてしまう関係や場を、静かに描くテイスト。関係を丁寧に提示することを舞台に載せる「関係性の演劇」の古典を見てるような安定感はゆるぎないのです。
「一緒の国になる」ということを、少なくとも日本人は良いこととして認識していて、それは相手も喜んでいるという一方的に思いこんでいる、という描き方。それが史実に忠実なのかどうかはアタシには知る由もありませんし、それ自体にはあまり興味がありません。が、認識の違いによるアンバランスがこんなにも明白に現れても気づきもしない、ということが起こりうるということはこの舞台は静かに向き合って訴えかけてきて、アタシを揺さぶるのです。
吉祥寺シアターという劇場はコンパクトな劇場とはいえ天井は高さがあります。すだれ状のつり下げも含め実に美しい空間造型。反面、観客であるアタシがその場から逃げられないと感じる度合いは薄い気もします。もっとも、前回観たのは世田谷パブリックシアターだった筈なので、単にアタシが馴れてしまっただけかもしれません。
「関係」を見せる芝居らしく、物語はあまりちゃんとすすみません。限定された部屋の中に出入りする人を執拗なまでに丁寧に描くことで外で起きていることを観客が外挿することが出来るのは、この濃密さゆえだろうと思うのです。
青年団「ソウル市民」
2006.12.6 - 12.17 吉祥寺シアター
作・演出 平田オリザ
出演 篠塚祥司(客演) 山村崇子 山内健司 松井周 辻美奈子 小林亮子 古屋隆太 兵藤公美 石橋亜希子 角舘玲奈 村井まどか 大塚洋 松田弘子 足立誠 立蔵葉子 熊谷祐子 安倍健太郎 川隅奈保子
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