【芝居】「ソウル市民・昭和望郷編」青年団
2006.12.17 19:30
ソウル市民シリーズの完結編。若手中心の構成は軽くエンタメ寄りの仕上がりです。120分。吉祥寺シアターでの公演は終了。
1929年の商家。かつては資産家だったこの家も昔ほどは余裕なく、満州を新たな希望とするも今ひとつうまくいかず、長男も精神を病んでしまう。その退院する日。満州へ文化交流しようとする興業団が訪れて…
人種の問題は完全に定着してしまい、その枠組みの中での日常。暮らしている人々の生活は悪くなったとはいえ、相当な資産家のままでまだどこか甘く考えている人々。
気の弱い長男は精神を病み、鋭い事を言ったかと思うとあきらかにおかしい言動があったり、看護婦が二人いたりというドタバタが後半に。もはや静かな演劇でも関係性の芝居でもなく、定番的小劇場のネタであり、懐かしさすら感じます。
全体の空気はユルユルで、どこかシステムがゆっくりと音を立てずに崩れていく感じや、この資産家たちは夢の中で生きているよう。どこか「三人姉妹」の味わいに似た感じがあります。
若手を多く起用していることと、笑いを多用していて、相対的に日本と朝鮮の問題が芝居の中で占めている割合は高くないように感じます。20年も経つとここまで普通になってしまうということを描いているという意味では怖いわけですが、それは三部作を全て見てるから言えるわけで、これを単独の芝居として見るとすればエンタメの芝居に見えてしまうのです。
長女の婚約者として「株屋」と呼ばれる男が登場します。精神病者が居るいえの評判が悪くなるとか、この家の資金繰りはもはやショートしているというまっとうなことを云っているにもかかわらず、癖のある人物描写もあいまってまるで悪人のような扱い。あるいは文化交流のために派遣されてきたと云う一団は実は裏ミッションを帯びているということも少々唐突な印象はあります。
信用取引は景気が上向きの時は成立しても下降局面では破綻すること、それが現実の問題として静かに近づいていること、信仰と政治のつながりなど、現代のアタシ達にも繋がるネタも多数。
青年団「ソウル市民」
2006.12.6 - 12.17 吉祥寺シアター
作・演出 平田オリザ
出演 井上三奈子 福士史麻 松井周 荻野友里 山本雅幸 高橋智子 小林智 永井秀樹 森内美由紀 古舘寛治 河村竜也 古屋隆太 キム・ミンソ 工藤倫子 鈴木智香子 長野海 渡辺香奈 山口ゆかり 大竹直 山本裕子 村田牧子 二反田幸平 端田新菜 後藤麻美 堀夏子
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