【芝居】「Nf3 Nf6」パラドックス定数
2006.12.1 20:00
頑なに男ばかり、現場をハードに描くパラ定の新作。80分、3日までplanB。
捕虜収容所、地下室。目隠しされた男と軍服の男。かつての知り合いは、僅かな間に敵同士になっていた…
冷たいコンクリの壁、板張りの床に机と椅子とチェス。どちらかというと入り横と手前側の客席の方が二人芝居の表情を更に楽しめます。
数学者とチェス、美しく構築された世界に魅せられた二人だったのだけれど、時代と彼らの高い能力ゆえに、巻こまれていってしまうです。望んでなんかいないのは明白だけれど。
いままで日本の男たちの「現場」を描いてきた彼らには珍しく外国の話。確かにこの題材を選ぶなら手堅いのです。役者が外国人にはどうしても見えないという弱点はありますが、大きな問題ではありません。
もうひとつ感じるのは、彼らの芝居でここまでウェットに肉親の話や想いを描いたものがなかった気がするのです。剃刀のような息詰まる瞬間の切れ味という意味では、ウェットさはプラスに働かないと感じますが、いままでとは違う次元軸を加えて、深みというか濃淡がでていると思うのです。
数式を前に語るシーンは、アタシにはちんぷんかんぷん(理系、だった筈なのに(^_^;))ですが、その「わかりあう空気」は涙が出るほど素敵です。
チェスの話にしても、わかっていればもっと深く入りこめるとは思いますが、ゲームのルールそのものはあまり重要ではありません。その小さな盤の上に、この部屋の外で起こっていることを箱庭のように見せることが、実に効果的なのです。この地下室の中で孤独に闘うことはどれだけ怖いのだろうと考えるとすっと血の気が引くのです。
パラドックス定数第12項「Nf3 Nf6」
2006.11.30 - 12.3 中野planB
作・演出 野木萌葱
出演 十枝大介 小野ゆたか
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