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2006.12.29

【芝居】「男奉(おとこまつり)」SUPER☆GRAPPLER

2006.12.28 19:30

スタイリッシュ、ボケ倒しが魅力のスパグラの新作。105分。最終日31日にはカウントダウンの企画もあります。サンモールスタジオ。

会社員の若者。仕事も日常もテンション・体温低く。知り合いの女は借金返済のためにキャバ嬢になっていたが、ふとしたはずみで冷たい一言を言ってしまったが為に、彼女は姿を消す。その心の奥底にわだかまったものを抱えて目覚めると、褌姿の男ばかりの村だった。不作の年には一人の男を奉納するしきたりがあり...

大音量でテンションの芝居が身の上。スピード感もあって気楽に楽しめます。スタイリッシュも売りではあるのだけど、今作に限れば、「お好きな方には堪らない」感じの少し特殊なビジュアルではあります。

人を想う気持ちも、自分の生き方の熱さも知らない若者が目覚めていくという骨子。ビジュアルに隠れて見えづらいけれど、ごくシンプルな感じがします。現実と、それとは別の二つの世界を用意して行き来させるという構造は作家の得意な世界の描き方。彼女には世の中がこう見えているのだなぁと、アタシは思うのです。終盤の疾走感も得意とするところで、楽しめます。

友人が云うには現代に戻る終幕で男の衣装がそのまま、というのは事情はわかるけれどちょっと勿体ない。鮮やかに早変わりできればもっとカッコイイのにと思ったり。せめて現代に戻った状態にはしてほしい。あるいはオヤジなアタシとしては女優少なめというのはちょっと悲しいけれどこれは作品の世界ですからねぇ。

見やすく作ろうとしていたり、あるいは開演前の携帯電話・お喋りの抑止を映像を使ってわかりやすくしたり、楽しませようとするホスピタリティの高さは相変わらずでとてもいいのです。演劇慣れしてない客が多いのも悪いことではありませんが、喋り続けたり食べ物の袋を開けることに無頓着な客が毎回居てしまうのは、カンパニーの印象にマイナスです。開演直前に入ってくると映像での注意事項が伝わらないというのは痛し痒しではあります。

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2006.12.28

【芝居】「テーブルクロス」ミナモザ

2006.12.28 14:00

瀬戸山美咲の作演で続けるユニットの新作。130分。29日までOFFOFFシアター。

崩落したレストラン閉じ込められた女二人は中学からの友人。男一人は妻との待ち合わせに遅れて来て。救助の望みも薄い中、女が死んだ筈のウエイターが見えると言い出して。

夫婦の間の冷めた関係と戻る想いの流れ。幼なじみ女二人の互いに依存するような関係の少し怖い感じ。二組の関係を オカルト的なつくりであぶり出していきます。 オカルトはあんまり好きじゃないアタシですが、人物の想いから発して物語の枠組みを作っていて、それだけに結末を依存していないという点でアタシは好きです。

終盤近くになって、終幕を思わせるような演出が何回か繰り返されるのは観てる側からは少々肩透かし感もあって勿体無い気がします。

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【芝居】「みんな昔はリーだった」パルコ劇場

2006.12.27 19:00

後藤ひろひとの作演という最近ではなかなかお目にかかれない新作。一応出来てはいますが、7500円に見合ってる感じはあまりしないのですが。130分。

今は四十代の男たち。中学生の頃のヒーローはブルース・リーで、彼に近づくことが全ての価値観だった。転校生が憧れのマドンナと仲良くしたのに腹を立てたりもしたがいつの日か欠かせない関係となり…

転校生を巡るイジメ→仲直りを主軸に、三十年後の再会と変化の話。

が、どうにもヌルい感じは否めません。ユルい友情の話を描こうとしている感じはするのですが、何かを乗り越えて結束が固くなった感じがしないのは致命的です。ハンカチや鍛錬、謎のドキュメンタリービデオなど様々な仕掛けをしてもなお、厳しい感じになってしまっています。イジメは執拗なのに仲良くなったという感じがしないし、居なくなった後に大きな穴となっていることを語りだけで云われてもなあ、と思うのです。

何人かの役者の違和感に原因を求めるのは簡単ですが、期待が多すぎたせいか、今作に限れば作家の作り出す世界そのものの薄さを感じずにはいられません。描こうとしてる世界はなんとなくわかります。公園で昔の話をする男と若者の会話という雰囲気は多くの作品で登場しますし、物語で意味があるのはわかりますが、前半は殆ど無駄な感じすらします。

池田成志はきっちり盛り上げます。竹下宏太郎は物語世界を淡々と作ろうとしていてある程度成功しています。

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2006.12.27

【芝居】「月と牛の耳」いるかHotel

2006.12.26 19:00

遊気舎の、というほうが東京の観客には馴染みがあるかもしれない谷省吾率いるいるかHotelの公演。東京公演は実に6年ぶり( 1, 2)。 王子小劇場の作家企画・トリビュート001の、畑澤聖悟シリーズの二本目。 2001年に弘前劇場で上演した作品を関西方言に置き換えた、いるかHotel版@大阪での1月上演からわずか一年での再演。110分、30日まで王子小劇場。年明けから、ピッコロシアター。東京での動員の苦戦が伝えられますが、物語には暖かく確かな力があって、楽しめます。

修業時代の壮絶な自伝が有名な武闘家の男、個室病室に入院してしばらく経つ。息子・娘たちも道場で鍛えてそれなりに強い。久し振りに子供達が見舞いに訪れる日。長女が彼氏を連れてくると聞き、落ち着かない。連れてきた彼氏は空手をやっているとはいうものの...

どこか嘘っぽくてドタバタと落ち着かない感じのする序盤なのだけど、後半は徐々に明かされる彼らの背景が見えてくるにつれて、ドタバタの理由も明かされてしっかりと着地。よく考えたらありえない無茶な設定なのだけど、畑澤聖悟作品のこういう漫画っぽさが、あたしは好きなのです。

以下ねたばれかも

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2006.12.25

クリスマスが過ぎて

まあ、呑んだくれてたわけですが。

会社もやはり人少なめ、電車もやっぱり少なめ。徐々に静かになっていく街なのです。

この時期のドラッグストアが好きなのです。掃除が好きじゃないのに掃除用具は好きだったり、風邪をひいてないときの風邪薬は楽しかったり。残った休暇を消化するために水曜からお休みに入ります。(すまん)

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【芝居】「食卓夜想」風琴工房

2006.12.24 17:00

風琴工房では初めての劇団員だけでの芝居。食をめぐる話を魅力的な役者たちが自由が丘の小さなギャラリーで。60分。毎晩26日までギャラリーサイズ

食卓のある部屋、男を連れ込んだ女、娘と息子が居るが奔放で。いい子だったはずの息子が帰宅、女を連れて、違う姿で。

「ガラスの動物園」をモチーフにしているとは言いながら、当日パンフで作家が云っているとおりもとの物語の枠組みはあまり残っていません。が、たしかに印象は似てる感じがしてしまうのは、父親が不在だったり、息子+娘だったりするためだろうと思うのですが、それにしてもここまで違うのになぜなのだろうと思うのです。

食と家庭をめぐるさまざま。序盤では食欲と性欲が同一になるような不思議な雰囲気で始まります。そこから小さな娘(21歳なのに)がなぜその大きさで成長を止めてしまったのか、なぜその姿で戻ってきたのか、男の趣味の特殊さ、謎の女の生業をたった60分に濃密に詰め込んでいるのです。

かといって早口というわけではありません。小さな会場もあって台詞は明確です。見た目の鮮やかさ、色っぽさに眼を奪われますが、きちんと言葉で紡ぎ出す世界は好きなのです。アタシは繰り返しの演出があんまり好きではないのですが、今作では時間の短さ故か二回目では微妙に短縮版になっているなど観ている側への配慮があります。

円周率の話は検索すればすぐ出てくるネットのそのまんまだったりはします。あるいはあるパイの話も知る人ぞ知るようなネタ。断片だけではものがたりではないのだけれどそれを編み上げる確かな力があります。

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2006.12.24

【芝居】「少年ラヂオ」キャラメルボックス

2006.12.23 19:00

キャラメルのクリスマス公演も終盤。120分。25日までサンシャイン劇場。前売り完売ですが当日券もあるとか。

プレビュー以来ほぼ一ヶ月ぶり。開演前にはプレビューにはなかった(あたりまえ)DJがあったりしてちゃんと盛り上げるのです。

一ヶ月という時間は確実に役者を成長させ、演出を洗練させています。地道に改良した結果、テンポが良くてスパイもの少年向け小説のようないい味わいになっています。

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2006.12.23

【芝居】「虹」グリング

2006.12.23 14:00

一年ぶり、初の紀伊國屋ホール進出の新作。24日まで。110分。

11月頃、長野の小さな教会。住み込みの神父、頻繁に訪れる兄弟夫妻や信徒たち。浮気や子供が出来ないやら婿姑の確執やら。ある日、近所の主婦が、敷地内で幽霊を見たと言って相談に来る…

二組の夫婦はそれぞれに子供が居なくて、そろそろ諦めようかという時期。が、それには背景があって、一人で悩んだ末だったり、待ちきれなくてあれこれ。

ありていに云えば結局はオトコの駄目さに起因する話。が、駄目は駄目なりに誠実だったり切実だったりする行動なのだけど、糸はどんどん絡まってしまうのです。

主軸となるのは神父の妹夫婦の話なんだと思うのです。長男や母親の話はからむけれども、後から思えば主軸に寄り添う話。どれがメインかなかなか判らないし全てが対等でもないので、アタシは身をどこに委ねたらいいのかわからず少々戸惑います。

主軸が妹夫婦だとわかったのは随分後半になってからなのですが、絶妙で抑えながら緊張感がしっかりある空気はさすが巧い。これをもっと長く見たいと思うのです。なぜ子供が居ないままそこまで来たのか、これからどうして行くかの想いをキチンと。

反面、近所の主婦や警官、保険会社社員など、脇のキャラクタは少々突飛に味付けされていて役ごとの差が気になります。

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2006.12.22

【芝居】「ドッペルゲンガーの森」マグネシウムリボン

2006.12.22 19:00

静かで淡々とした不思議な感覚。物語と言うよりはとりとめなさというべきか。100分、23日まで、阿佐ヶ谷アルシェ。

事故で記憶を失った男が妻とともに近郊の故郷に帰る。暖かく迎えた家族だったが、献身的に見える妻は、本当は愛していないのではないかと妹に言われ..

その主人公の男は無対象で、照明で場所が示されるのみ。「なにわバタフライ」での方法に似ています。主役の男を観客に投影するような効果が期待できるかと思いきや、あまりそこに狙いがないような気もします。幼い頃の怪我が大きな傷を顔に残した男は一途に女に迫る。不倫の蟻地獄にはまり込んでいた女はふとしたキッカケで結婚して。男は不器用な男と設定されていて、周りからも浮いていて、女を妻にはするけど、愛しては居ないということになっていて。

何もかもが低い体温な雰囲気。ところどころの人物の造形がやけに凝っていて凄いと思うのだけど、それがそれぞれの役者の個人技になってしまっていて物語りを形成することをそもそも放棄している感じがします。あるいはなれそめの話は憧れの女だけをワンショットで追っているような感じがあって魅力的。が、これも状況説明ではあっても物語になっていないと感じるのです。

いくつかのピースは凄く魅力的なのです。 この近郊の土地の伝承、「なりすまし」という妖怪の伝説があって、山道で迷った者の皮をはいでまとってその人に入れ替わるという話は実に面白いのです。怖い存在であると同時に人が心底辛いとおもって願えば「入れ替わってもらえる」という面もあったりと奥深いアイテムなのです。主役の男がこの「なりすまし」されているという方向かと思うとそれも積極的には示されないのです。

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2006.12.20

【芝居】「俺の屍(かばね)を越えていけ(プレビュー)」王子小劇場プロデュース

200612192000

王子小劇場が年末年始を通して上演する三本建て企画の第一弾。若い役者がこれをちゃんと作る安定した舞台は、会社員にこそ見て欲しい。90分。初日20日→千秋楽24日まで王子小劇場。木曜・金曜夜が薄いとも聞きます。

地方のラジオ(+テレビ)局。経営立ち行かなくなり、呼ばれた社長は、360度評価と称して入社間もない若手に密室会議で首を切る一人の管理職を選べと命じる。呼ばれた若手、ディレクター、アナウンサー、エンジニア、営業たちは…

会社員としての居場所、世話になった先輩のヒトとしての繋がりを描く戯曲。2003年初演で、今現在に照らしてみると、「理不尽な首切りを告発できない社員」とか「会社にいなければならないと若手が思う」のはリアリティが薄い気もします。が、これはホンの数年前の日本の会社の見え方だと思うのです。

序盤を引っ張るのは報道部のシニカルな台詞と間の巧さ。五年目のふたりの男の間の距離は序盤、ディレクターが早口すぎたりと、かみ合わない感じがありますが、後半2/3でがっちり組み合います。開場からずっと舞台に居続ける若いディレクターは観客の視点なのですが、実にいい表情の(営業から売れ残ると言われたり)瞬間があります。今年の芝居で飛躍を見せた役者。営業と二人のシーン、「まわされる」という言葉が刺さる感じがします。

5年目ディレクターの「やりたいことがいっぱいある」、という台詞は若くて眩しいのです。そういえば忘れてた感覚。唯一の局の顔であるアナウンサーは若い役者です。きちんと美しいのですが、もっとカッチリしていて、ここぞで崩れて欲しい気もします。

何かのしこりを残す終盤は苦いのです。先輩の言葉、身を切る辛さ。表情を見せないという方法で表現していますが、効果的。終幕があっけないのは少し勿体ない気も。

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2006.12.19

生涯忘れられない舞台って

まあ、あたしの場合はblog名からしてバレバレなわけですが、何か一本きっかけとなった舞台とか、忘れられない舞台ってのはあるもんでしょうかね。それが忘れられなくて、劇場通いをしてしまうってところは確かにちょっとある気がします。

折り込みチラシ代行のネビュラプロジェクトから独立し、演劇制作業務をサポートする「ネビュラエクストラサポート」が、「東京劇勢調査」を実施しています(1月10日まで)。携帯電話からも投稿できるようですが、ごく簡単なアンケート調査で、抽選でチケットや戯曲、DVDなどが当たることになってます。結果が見たいなぁと思います。

さて、いよいよ年末モードな世間。週末はクリスマスです。

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2006.12.18

【芝居】「ソウル市民・昭和望郷編」青年団

2006.12.17 19:30

ソウル市民シリーズの完結編。若手中心の構成は軽くエンタメ寄りの仕上がりです。120分。吉祥寺シアターでの公演は終了。

1929年の商家。かつては資産家だったこの家も昔ほどは余裕なく、満州を新たな希望とするも今ひとつうまくいかず、長男も精神を病んでしまう。その退院する日。満州へ文化交流しようとする興業団が訪れて…

人種の問題は完全に定着してしまい、その枠組みの中での日常。暮らしている人々の生活は悪くなったとはいえ、相当な資産家のままでまだどこか甘く考えている人々。

気の弱い長男は精神を病み、鋭い事を言ったかと思うとあきらかにおかしい言動があったり、看護婦が二人いたりというドタバタが後半に。もはや静かな演劇でも関係性の芝居でもなく、定番的小劇場のネタであり、懐かしさすら感じます。

全体の空気はユルユルで、どこかシステムがゆっくりと音を立てずに崩れていく感じや、この資産家たちは夢の中で生きているよう。どこか「三人姉妹」の味わいに似た感じがあります。

若手を多く起用していることと、笑いを多用していて、相対的に日本と朝鮮の問題が芝居の中で占めている割合は高くないように感じます。20年も経つとここまで普通になってしまうということを描いているという意味では怖いわけですが、それは三部作を全て見てるから言えるわけで、これを単独の芝居として見るとすればエンタメの芝居に見えてしまうのです。

長女の婚約者として「株屋」と呼ばれる男が登場します。精神病者が居るいえの評判が悪くなるとか、この家の資金繰りはもはやショートしているというまっとうなことを云っているにもかかわらず、癖のある人物描写もあいまってまるで悪人のような扱い。あるいは文化交流のために派遣されてきたと云う一団は実は裏ミッションを帯びているということも少々唐突な印象はあります。

信用取引は景気が上向きの時は成立しても下降局面では破綻すること、それが現実の問題として静かに近づいていること、信仰と政治のつながりなど、現代のアタシ達にも繋がるネタも多数。

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【芝居】「ソウル市民1919」青年団

2006.12.17 16:00

ソウル市民から10年後を描く三部作の二本目。90分。

10年後。三・一独立運動の起きた日の朝。商家に巡業の相撲取りが来る日。外では現地人が集まっていたりして、少し騒がしいが、何が起きているかは彼らは知らない。徐々に使用人たちも姿を消して..

あまり空気は変わってないような感じは受けるけれども確実に進んだ時間というのも事実で。日本人と朝鮮人と二分ハッキリ二分されているオリジナルに比べると、時間が経ている今作は事態はもっとややこしいのです。ここで生まれた人がいたりします。

日本人と朝鮮人の支配構造は自然に受け入れても、日本に嫁いで地主と小作人の差が日本人の中あることが受け入れられずに出戻ってきた娘。人種の問題だと言われていることが、じつは経済的な階級の落差に帰着していることをごくシンプルに、明確に見せるシーンで印象的です。意識したかどうかはわかりませんが、女たちが興味深げに力士の腹に触れるのも、同じ人間を何か違うモノでも見るかのように見る視線という意味で根っこは同じところにある気がしてなりません。

オリジナルではなかった音楽がふんだんに。当日パンフで作家が語るように賑やかな中に見えてくる怖さを見せる効果は抜群に効いています。 無邪気で楽しげな歌を歌う人々の終幕のシーンは、普通の人々に植民地が根付いていることを、見た目と背景の落差で見せていて、空恐ろしさを感じさせ印象に残ります。

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【芝居】「ソウル市民」青年団

2006.12.17 13:00

「静かな演劇」の起点となる劇団代表作の一つ。110分。吉祥寺シアターでの公演は終了。

1909年のソウル、成功した商家。朝鮮人の女中も働く家の中。それでもわりとリベラルで自由な空気。日韓併合を前にした静かな日々..

当時としてはリベラルな家を描きながらも無自覚に、文化も含め人種に上下をつけてしまう関係や場を、静かに描くテイスト。関係を丁寧に提示することを舞台に載せる「関係性の演劇」の古典を見てるような安定感はゆるぎないのです。

「一緒の国になる」ということを、少なくとも日本人は良いこととして認識していて、それは相手も喜んでいるという一方的に思いこんでいる、という描き方。それが史実に忠実なのかどうかはアタシには知る由もありませんし、それ自体にはあまり興味がありません。が、認識の違いによるアンバランスがこんなにも明白に現れても気づきもしない、ということが起こりうるということはこの舞台は静かに向き合って訴えかけてきて、アタシを揺さぶるのです。

吉祥寺シアターという劇場はコンパクトな劇場とはいえ天井は高さがあります。すだれ状のつり下げも含め実に美しい空間造型。反面、観客であるアタシがその場から逃げられないと感じる度合いは薄い気もします。もっとも、前回観たのは世田谷パブリックシアターだった筈なので、単にアタシが馴れてしまっただけかもしれません。

「関係」を見せる芝居らしく、物語はあまりちゃんとすすみません。限定された部屋の中に出入りする人を執拗なまでに丁寧に描くことで外で起きていることを観客が外挿することが出来るのは、この濃密さゆえだろうと思うのです。

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2006.12.17

【芝居】「嘘かも知れないけどオリジナル」Hula-Hooper

2006.12.16 20:00

10年遅い学園モノと銘打つ、劇団としては初めての一本オリジナルものとか。90分。17日まで新宿村スタジオlive。これからご覧になるなら、入り口入って右手奥側、コの字の縦棒のあたりを。

毎朝の教室の風景、はやり言葉で挨拶したり、微妙に無視してみたり、抱き合うぐらいにくっついていたり、好きだったり..

女子校らしい風景を点描。女の子同士で恋愛感情だったり、すれ違ったり。イジメやら妊娠やらを取り込んでい ます。アタシにはホントの感情としてはわからないけれど可愛いと思う感情と恋愛感情と性愛感情がないまぜになってるハイティーン固有の感覚だという気がします。セックスだのなんだのは登場はするものの、何処か一枚ベールな印象で生々しくはありません。最近見かけないt.A.T.u風な見た目、無自覚に若い色気を出してしまう感じは、アタシのようなオヤジには色香に溶けてしまうぐらい刺激は刺激なのです。

が、少なくとも物語の中の彼女たちは実に真剣に愛だの恋だのセックスだのという興味のあることに気持ちの殆どが没頭していると思うのです。あたしよりもだいたい10年ぐらい若い女性たちの高校生の頃の感覚、と言う風に思うのですがどうですかね。

チェックの短いスカートで踊り歌う姿は、彼女たちの年齢を考えると痛々しくなりかねないのだけど、実に見事にすんでのトコロで踏み留まっていて、年齢であることを笑いにするという照れを見せないことも含め、実にセンスがいいのだよなぁと思うのです。太い柱が劇場に二つ。奥が教室で、入り口に近い側を廊下に見立てて。教室ではさえずるようにカシマしい感じ、廊下ではダンスシーンも多く、人数が多いことも相まって迫力があります。終幕は美しく素敵なシーン。

新宿駅から青梅街道沿いに15分歩いた先、新宿村スタジオは再開発地域の中にある元工場の建物。42ものスタジオを擁しています。初めて行ったのだけど、こういう場所がもっとあるといいのだろうなぁと思うのです。周りが再開発地域で野原になっているというのも、今この時点で見られたことが嬉しいのです。

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【芝居】「ゴッド・セーブ・ザ・クイーン」贅(プレビュー)

2006.12.16 15:00

1月に旗揚げする「贅」のユニットとしてのプレビュー公演。本公演は別の書き下ろしなのだとか。50分。完全予約制で17日まで劇場MOMO稽古場。

マンションの屋上から投身自殺をはかる女。現れる二人の男は自殺は止めさせるが、別の提案で思いを遂げればよいと言い出して…

イキウメの番外公演で公演した短編をテキストに。(といいつつ、記憶はばっさり落ちてましたが。友人に指摘されて思い出した。感謝)

ねたばれかも

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2006.12.11

客入れ初体験。

ほんとは某コンサートに行く(夜なのに夕方から並ぶ気満々だった)つもりで取っていた休暇。おもうところあって、別のところへ、ボランティアスタッフで参加させていただいた一日。

この時に書いた著作権保護の延長問題を考える国民会議」、劇作家も沢山発起人に名を連ねているという団体の第一回シンポジウムのボランティアスタッフをしてきました。( 記事1, 記事2。 多分後日音声配信があると思いますのでぜひ。)知り合いが居るわけもなく、仕事がからむわけでもなく、著作権まわりのことをどうしても考えたい、という自分のためにお手伝いしたいと思ったのですね。客入れ誘導するっていうお手伝いなのですが、結局場内に居るわけで中身は全部聞けたわけですが。アタシの考えはまた改めて。ただ、実演が前提の演劇戯曲やクラシック音楽の側の論理と、著作物そのものが流通に載る映画・漫画・小説の類とはどうしても論点が違うような気はしたのと、この不利な場に堂々と出てきた松本零士という人は意見は相違しても凄いなと、思いました。

客入れというのは人生初体験で、今日のアタシはボランティアベースとはいえ、普段劇場で客入れ・受付をスムーズにこなしている制作スタッフてのは凄いモノだと、ほんとに思います。意図したとおりに誘導して、意図した場所に座らせることの難しいこと。小劇場の制作ノウハウがあればもっとスムーズになると思うけど、ボランティアですからねぇ。いい経験でした。

年末も押し迫ってきた感じですが、週末。

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【芝居】「クローバー・冬」ククルカン

2006.12.10 19:00

春夏秋冬の四本の芝居を月島を舞台に描くシリーズ企画のラスト。105分。公演は終了。

余命いくばくもない兄、夫の浮気で仲がしっくりいかない妹、三十過ぎても童貞な弟。兄の家で過ごす三人は、それぞれの想いやら交錯したりして。

クレジットされた三人に加えて、ククルカンの役者三人、シリーズを通して写真で参加した写真家も出演しての総決算的なつくり。

互いを心配しあう兄弟たち、いいあらそったりじゃれたり、ふざけあったり。静かに死にゆく兄を見送る感じに見せる前半の構造が続くとおもいきや、妹の妊娠や先行き不安ながら弟の恋のゆくえなど先を見せる方向への流れ。

兄弟というごくプライベートに、その外側の一人との関係。芝居が終わっても、その瞬間を描いていて、その先に何かがある感じがしないのです。企画公演という特性では仕方ないのですが、もっと物語をアタシは欲するのです。

買い物の約束を反故にして浮気する夫のシーンがちょっとどきどき。ぼんやりした物をポケットから出すドラえもんの話はちょっと笑う。今年は「蕎麦つゆをお茶代わりに飲む」というネタを使う劇団がやたらに多いのですが、これははなまるマーケットか何かのネタですか。

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【芝居】「夜明け舟」菅間馬鈴薯堂

2006.12.10 16:30

売れない演歌歌手・影山ザザの地方廻り舞台の劇団人気シリーズ。公演は終了。

小樽のストリップ小屋に乗り込んで来た福岡ヤクザ。ザザのマネージャー・三枝に迫り、女を返せと迫る。若い踊り子が上達したいと望み、それを叶えようと二人で福岡を逃げ出して落ち着いた先が小樽で。

冷静沈着で少しお茶目なマネージャーの、逃避行。恋ではなく身体に指一本触れなかったとはいいながら、恋心が見え隠れ。芸で独り立ちするまで見守らせて欲しいという三枝を年増のストリッパーとザザの二人が責めるシーンが実にいいのです。年齢を重ねた役者でなければ出ない味、流石。

役者の力の差はあります。若い役者はやはりそれなりだったりします。が、年齢行ってる作演なのに若い役者達を積極的に見にいってキャスティングしていることが、年齢の差を感じさせない、それでも若者には決してかけない話に結実するのです。

序盤二場、逃避行前の二人のシーンが、微妙な色気というか空気があって素敵で好きなシーン。が、ここだけが過去で時間軸が少し分かりにくくて勿体無い気もします。漫才のシーンはくだらないけど、後半ちょっと面白い。

結局いつもの流れに戻るのです。旅立つ船の中でのシーンでロシア公演なんてネタがくすりと笑わせてくれて安心なのです。

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【芝居】「幻想の虹」zupa(ズッパ)

2006.12.10 14:00

山の手事情社の水寄真弓と、Ort-d.dの倉迫康史のユニットの旗揚げ公演。原作テキストを抽出するスタイルで巧者揃いで。90分、pit北/区域の公演は終了。

「サロメ」と「カリギュラ」にテキストの原作を求め、好きでたまらなくて歪んだ愛情を核に様々に変化して見せる趣向。水寄企画「プリズム」から芝居を抜き出し、笑いを少し抑えて構成した、という雰囲気。テキスト再構成という芝居は数あれど、殊更静かすぎたり緊張感や様式の美しさに演出の興味が行ってるものが多くて、90分もの時間、アタシの緊張感が持たないものが多くなりがちです。 今作はそれに比べて笑いを混ぜて、テンポがあってアタシには見やすいのです。色気と笑いを自在に行き来する技量と、どこで踏みとどまり、どこでもっとふざけるかというセンスの良さだと思うのです。

生演奏ではありませんが、スタイリッシュなバイオリンは、クリスマスらしい感じがします。「ア・ラ・カルト」見てるからかもしれませんが。

劇場は少し特殊な空間で、二階部分がバルコニーのように舞台を囲みます。二階部分の芝居は後列の観客には殆ど見えません。それほど重要なシーンではないと言いますが、気になってしまうのが客の性。これは惜しい。

色気というか、求める気持ちがやけに色濃くでていて、それに男女とも見目麗しい役者を加えて実に眼福な感じです。見事にやられて、その感覚がぼんやり胸元や背骨のあたりに残っている感じ(意味不明ですが)。テキストを味わうには、もいっかい見なきゃなあという感じなのですが。

月と鏡をモチーフ。何を云ってるかわからない男、キスして欲しい気持ち、独占したい萌芽。不倫後帰ろうとする女を脅して帰さない男、バランスの取れない愛情。化粧品の匂いを指摘してセクハラまがいの仕事場。絵を描く男、眼で見て欲しい女。ドリフな工事現場、忘年会の余興。メイド達、盆に載せて首持ってこいと云った女のうわさ話、殺したくなる瞬間。台詞(=もとのテキスト)と動き(=三角関係)が乖離している芝居。身体が欲しくて触らせてほしくて、唇が欲しくて。月は生娘。不死身なんてものはない。俺が生きるための力は遣い尽くしていない、心の渇き。メイド達のうわさ話続き、みんなの幸せを守るために3人殺さなければいけないという論理。クリスマスの買い物帰りに押しかける3人、有or無というゲーム。約束が反故、ヤったから進んだと思う、そこが刹那だと思う女と男の意識の差、というん十年前の悔しい話を今さら持ち出してオオモトを殺さなければ幸せになれないと思う女。工事現場の夕方、腹を割って話し合う男達の真剣勝負。帰宅する男、猫、みんなが離れていく寂しい気持ち。地球連邦作ることにしたなんて言い出す男、死んでるのか、どうなのか。帰宅した現場監督、独り言、酒、写真を置いて、自分は生きてる、死んだ人を想い続ける。

と、書き出してみれば(←メモしたらしい)、たしかに欲しいから始まって罪を犯し、寂しい気持ちという流れ。ちゃんとあるのです。

男が何云ってるかわからない序盤の話が切ない。化粧品セクハラまがい、見て欲しい女の描写にぞくぞくする。ドリフの工事現場は面白い。メイドたちの井戸端はやがて怖くなる。やったから思う意識の差は男女の永遠のテーマか。終盤の猫と酒飲みの二つのシーンはじんとして、切ない。

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2006.12.10

【芝居】「ナイス・エイジ」ナイロン100℃

2006.12.09 18:30

ナイロンのタイムスリップもの6年ぶり再演。そういえば長いのだった、という220分(休憩15分込み)。24日まで世田谷パブリックシアター。

かつては金持ちだったが今は貧乏暮らしで家族も崩壊している一家、廻(めぐり)家。引っ越し早々に大家夫妻がやってきて、難癖をつけて退去してほしいという。実はそのボロアパートは時間移動装置を備えていて、大家夫妻は違法の時間旅行者たちを取り締まるパトロールだった。一家の主はその事実を知らないまま1964年に飛ぶが夢だと信じてむちゃくちゃな言動を繰り返す..

自分とそのルーツの過去を辿ること、あるいは(劇中にもあるとおり、時間旅行の目的のほとんどがそれという)娘の会う死亡事故を阻止するための時間旅行。過去のどうしても突き刺さって取れない骨をゆっくり抜き取るような感覚。過去がめちゃくちゃに改ざんされて手の施しようがなくなって全人類の記憶をリセット、という全体の流れではあるのだけど、娘もあるいは特攻隊のオジサンも結局の所は何も変わらず、もとの歴史のままなのです。記憶のリセットという投げ出したような結末の割にはその直前にいくつかある良さげなシーンに味があります。大家夫婦がベッドに並んでいるシーンなんか妙に素敵です。

ナイロン本公演とはいいながら、中核役者の何人かを外部客演で欠き、新たな客演を招いての再演。芸人役など初演役者が透け見えてしまうことや、堅さがある感じ、本多劇場に比べて微妙にスカスカになりがちな世田谷パブリックシアターの戸惑いなど、初日な感じではあります。(初演みた割には覚えてないわけですが)物語世界は堅固で、それを空間まで広げ切ることは、十分にイケそうな予感はします。

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2006.12.09

【芝居】「恋の渦」ポツドール

2006.12.9 14:30

過激な表現がウリになることの多いポツドールの新作は性表現は抑えめに、恋だのセックスだのを巡る冷静な視線は見応えがあります。135分。10日までTHEATER/TOPS。

お似合いの二人を紹介しようとして女の家でパーティーをする若者たち。遊び仲間のフリーター男たちと、会社が一緒の女たち。なんか期待外れだったり、カップルも微妙な関係だったりするが、2週間ぐらいのうちに…

性表現抑えめとはいっても、そこはポツのこと、ちゃんとある訳ですが、ここまで来ると、セックスは重要なアイテムではあっても直接見せることは必ずしも重要ではない気はします。あまりに自然なのであっても構わないと個人的には思いますが。

あけてびっくりの四部屋セット。同時刻を並行して描くのは携帯電話を多用する構成と相まって効果的。

見た目には言葉も行動も粗雑な男たち。女たちも少々派手め。が、語られることばはやけに真っ直ぐだったり真摯な言葉の投げ合い。が、言葉に反して、やってることは結果的に嘘も多いのに、それを悪びれることはありません。 発している真っ直ぐな言葉の重みを自覚していないからあっさりと翻るし、嘘でも罪悪感になりません。 言葉と行動のこのアンバランスが絶妙で、あたしはリアルを感じるのです。若者は、あげつらうつもりは毛頭なくて、はっとするのです。

粗暴なことばと想い、真剣に思ってるはずなのにあっさりした切り替わりなど、全体を通せば男のほうが少しばかりかわいそうですが、行動には腑におちるものが多くて安心してみていられます。

多重され、小さな声のシーンも多く、最初こそ多少混乱しますが、ちゃんと伝わる物語は大したもの。

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2006.12.08

【芝居】「ロープ」NODA MAP

2006.12.6 19:00

NODA MAP、3年ぶりの新作。笑い少なくてずしりと堪える仕上がりは、感動ではなく痛みだけがそこにあると感じますが、誠実な視点です。120分。来年1月31日まで、シアターコクーン。

引きこもっているプロレスラー、リングの下に隠れているコロボックル、そのジムを隠し撮りに来るTVクルー。四角いリングで戦い、その中で起こっていることは咎められないのがプロレスのルール。コロボックルを名乗り隠れていた少女が実況しているリングの中の出来事はやがて...

ねたばれ、かも。

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2006.12.05

ココログメンテナンス(12/5 10:00-12/7 15:00)

ココログのメンテナンスが行われます。閲覧はできますが、コメントやトラックバックの受付、投稿ができなくなります。12/5 10:00 - 12/7 15:00という53時間に及ぶメンテはちょっと不安だったりしますが、データベースの分散化によってより強固になる、はずなのではい。(詳しくは こちら。)

それでも週末はちゃんとやってくるわけで。

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2006.12.04

【芝居】「ア・ラ・カルト」青山円形劇場プロデュース

2006.12.3 17:00

12月の風物詩、18年目。いつもと同じ安心感。3日の回では当日券の残りもあったようです。前半でぜひ。休憩10分(夜はワインサービスあり(15日以降は中止になったようです))を含み3時間。26日まで青山円形劇場、そのあと31日まで大阪・ビジネスパーク円形ホール。

一人で訪れた女、苦みリキュールが好きだという彼女は「アンゴスチュラビターズな恋」。長年の恋が成就し結婚した二人は今年も訪れ、前世から結ばれているという話を「今宵二人はスピリチュアル」。クリスマスにディナーに訪れた女と職場の後輩の男、すこし気持ちにズレはあっても「恋は異なもの味なもの」。シャンソン歌手やらブラックミュージックやらラテンやらのいつもの面子に、ゲストはジキル&ハイドに向けた壮大なプレゼンテーションを「Show Time」。ゲストとのトーク「マダムとクリスマス」。DINKSらしい夫婦、悪態つきながらも久し振りに素敵な夜に「タイム・アフター・タイム」。老夫婦の静かな「ラストダンス」。一人で訪れた女だったが、レストランで素敵な時間を過ごせたようで「マンハッタンで乾杯」。

ほとんどの構成は同じ。今年の流れは家族よりも男女にバイアスかかっている感じ。子供が出てこないどころか夫婦か恋人か恋人未満ばかりというのは少し珍しい気もします。石井一孝というミュージカル俳優のサービスの良さ。青山円形劇場程度の空間ならば、簡単に制圧できるような圧倒的な実力と相まって素敵なゲスト。特にジキルとハイドのキャスティングを狙う、というネタは聞き応えがあるのにシタタカに笑わせます。(馬風の「会長への道」(amazon)を一瞬思いだしたけど全く関係ないですね)

ショータイムでの花束贈呈、さすがに時間的に厳しくなってきたと見えて、「フラワーボーイズ」なる二人と手分けして花束をもらうシステムに。直接ペギー・富岡に渡せないとやっぱちょっと寂しい気もします。いい落としどころがあるといいのだけど。

更に残念なことに、夜公演でのワインサービスが、15日以降は有料になっているようです。確かに世の中の流れ、厳しいことを云われてはいますが、何でも禁止するだけ、と言う方向性は果たしていいことなのだろうかと思うのです。そんなこと云ったらあらゆる場所でアルコール禁止しなければいけなくはありませんか?

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2006.12.03

【芝居】「ズビズビ。」M.O.P.

2006.12.2 19:00

M.O.P.の新機軸は、楽屋を舞台にした30分の芝居4本(休憩10分)。前売り完売、当日券販売1時間前に並んでもキャンセル待ち2番というぐらい、いつのまにこんなに。3日まで紀伊國屋ホール。

(1)シェイクスピア劇開演一時間ちょっと前。ベテラン俳優の楽屋、劇評が自分だけ最低評価を受けて機嫌が悪いところに地元新聞の文化面記者が訪れる「ずっと貴方が」。(2)旅回り一座の楽屋、開演2時間前。石松もので呼ばれたのに肝心の看板が逃げ出して。演目を変えることも許されず「ビッグな男」。(3)商業演劇[青猫物語]千秋楽の終演直前。舞監志望のスタッフは仕事ばかりで浮いた話もなく、いい歳。久しぶりに再会した役者とツアー中にいい雰囲気になって「ずいぶんな話」。(4)ジャズ全盛のころ、バンドの楽屋。調子よく楽しくやっていたが、メインを張れる男が単身渡米を決める。歌手の女とは公認の仲だが「ビター・スィート」。

時代も場所もバラバラながら、役者、主宰、スタッフに対するリスペクトを通底。舞台に生きる特殊性はありつつも、

四本を繋げる仕掛けはなかなか洒落れていて素敵です。短編四本オムニバスは新しい試みだといいますが短いゆえに卑怯なキャラを卑怯なまま舞台に乗せることが逆に大胆に出来たり、中堅をメインに据えたり、リズムがあったりと見やすく、向いていると思うのです。

ここ一番の見せ場を作るのが巧い作演、30分ごとにくるいいシーンは。方言に対する深い気持ちもみえます。アタシがすきなのは、三本目ですが、それぞれにちゃんと力がある芝居。どれかは好きな芝居があると思うのです。

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2006.12.02

【芝居】「キケンなニオイはしてたよね」マナマナ

2006.12.2 15:00

女優・西田薫の立ちあげたユニットの旗揚げ。にんじんボーンの宮本勝行の作演は色濃くも、女優だけという特性も楽しい90分。3日までSPACE雑遊。

土浦の古い寺。大晦日に毎年集まる小中高同期の女たち。結婚したりして徐々に減り今年は六人。空洞化は深刻で市内での商売は客が来ないし、文化財の筈の寺を修復することも出来ない。「町おこししよう」と思ってはみていても。

三十代後半の独身女という縦軸を持ちながらも、空洞化した町に居続けること、離れても思い続けることを絶妙に絡ませながら見応えのある仕上がり。

にんじんボーンでも時折見られる茨城弁、持っている悪意より多少過剰な罵倒の言葉、普通とは少し違う感じの笑いのテンポなど、宮本勝行の作演であることを強く意識させられるフォーマット。初めてみるとそのアクの強さにびっくりするかもしれませんが、少なくとも県外のアタシには綻びなく貫き通す茨城弁に慣れると、空気が見えてきます。

にんじんボーンを見慣れた目には逆にそのデッドコピーに序盤こそ感じますが、決してこの形式に慣れた役者ばかりでないこの座組でこの仕上がりは大したものだなあと思うのです。

空洞化した町への思いはあっても動けない人、見てみぬふりする人、諦めているひとを配し、やがてケンカに発展。その仲直りまでもが実は毎年の繰り返しという外枠をするすると組み上げる終盤や今年は違うなにかを見せる終幕が圧巻。巧いなあとホントに思うのです。

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【芝居】「Nf3 Nf6」パラドックス定数

2006.12.1 20:00

頑なに男ばかり、現場をハードに描くパラ定の新作。80分、3日までplanB。

捕虜収容所、地下室。目隠しされた男と軍服の男。かつての知り合いは、僅かな間に敵同士になっていた…

冷たいコンクリの壁、板張りの床に机と椅子とチェス。どちらかというと入り横と手前側の客席の方が二人芝居の表情を更に楽しめます。

数学者とチェス、美しく構築された世界に魅せられた二人だったのだけれど、時代と彼らの高い能力ゆえに、巻こまれていってしまうです。望んでなんかいないのは明白だけれど。

いままで日本の男たちの「現場」を描いてきた彼らには珍しく外国の話。確かにこの題材を選ぶなら手堅いのです。役者が外国人にはどうしても見えないという弱点はありますが、大きな問題ではありません。

もうひとつ感じるのは、彼らの芝居でここまでウェットに肉親の話や想いを描いたものがなかった気がするのです。剃刀のような息詰まる瞬間の切れ味という意味では、ウェットさはプラスに働かないと感じますが、いままでとは違う次元軸を加えて、深みというか濃淡がでていると思うのです。

数式を前に語るシーンは、アタシにはちんぷんかんぷん(理系、だった筈なのに(^_^;))ですが、その「わかりあう空気」は涙が出るほど素敵です。

チェスの話にしても、わかっていればもっと深く入りこめるとは思いますが、ゲームのルールそのものはあまり重要ではありません。その小さな盤の上に、この部屋の外で起こっていることを箱庭のように見せることが、実に効果的なのです。この地下室の中で孤独に闘うことはどれだけ怖いのだろうと考えるとすっと血の気が引くのです。

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