【芝居】「vocalise」リュカ.
200611012000
王子小劇場の企画シリーズの中間点。プレビューを。2日初日→6日まで王子小劇場。120分。静かに丁寧に作られています。静かすぎるゆえに、観客の側も体力を少々使います。
マンション。暮らしている二人、客が来る、パーティーの予定。思っていたよりも早く揃うが、ホスト側の二人の間で客には明かしていない秘密…
暮らしていくこと、生きて行くこと、先行きが見えてしまうこと、それが周りの人々に与えることの大きさ。
タイトルは一つの母音で唄う、歌唱法。真っ直ぐに貫く思いだとアタシは解釈しました。
難しい話ではありません。少し裕福めな家庭や友人たちや近所の話。ゆるやかな会話が延々と続くのは物語を運んではいません。空気を作っていると思うのです。作家も演出も男性ですが(アタシもだ)、女性を描くシーンは、すとんとハマります。
(以降、ねたばれあるかも。)
理不尽な要求を登場人物がする行き先がどうなるか分かるという友人の指摘はその通りになります。が、それは大きな問題ではありません。
言ってもらえないとか、事情や事実や想いを共有出来ないことへの耐性が弱いのは女性の特性(だと思う。知るよしもないけど)なのです。同時に回避できない先行きの想いがあったりします。知らないがために関係を想像してしまうのです。それは不安と表裏、判れば安心するのです、それが良くない事実であっても。オトコでも、会社の中の情報の格差とか傾斜で感じるのと同じタイプの不安。
彼には事情があります。後半語られるのはたしかに納得のいくものではあります。自分が感じた重さをまわりにはかけたくないという優しさから出た行動なのだけど、逆にそれが負担になってしまう辛さ。ならば、我が儘と言われても消えていこうとする気持ち。
旅行には行かなかったのでしょう。終盤でそのように語られます。部屋から出られなくなり、傍らで本を読む妻が、その部屋の中で描いた物語は遠く地球の向こう側の街の様子、自分が行っていたら暮らしを夢想します。それは恨み言ではなく、前向き、上向きの気持ち。
役者に不安はありません。美男美女揃いはリュカ.の強みかつ弱みではありますが、今作では強みに働いています。
問題がないわけではありません。
ひたすら静かに刻んでいく前半。プレビューの時点では開演前に冷房を強め、開演前に止めるプラン。音が大きい劇場の冷房は開演前にはキンキンに冷えていますが、プレビューの人数ですら暑い後半。演出が気にするよりも、騒音より温度を選ぶアタシはオヤジですかそうですか。静かにフラットに続く芝居ほど観客が暑く感じるのは不利だと想うのですが。
もう二つ。
前半で集まる3組の男女の関係が最初は見えづらいのです。どの人々が元々の知り合いで、それにつれてできた関係がどれか、が見えにくいまま物語が進むのです。見続けていれば、その関係はきちんと示されますが、スキーマが示されないために、観客の頭のなかであれこれパズルを試行錯誤してしまう気がします。
もう一つ、舞台の外側は無い筈の世界。舞台の約束だと思っていると玄関とそれ以外では違うので、ルールが一貫しないのは厳しい。
後半、三人の写真を撮ろうといういう気持ちが、アタシの中にすとんと腑に落ちます。実際にはあたしはそこまで無邪気そうに言うことは出来ませんが。
リュカ. 「vocalise」
2006.11.2 - 11.6 王子小劇場
作 渡邊一功 演出 黒澤世莉
出演 池田ヒロユキ 境宏子 こいけけいこ 鈴木 浩司 雨森スウ 河合咲 稲村裕子 中田顕史郎 根津茂尚(あひるなんちゃら)
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