【芝居】「ピクニック」Studio Salt
2006.11.23 18:00
横浜の劇団、ソルトの新作。三十台半ばを迎えた女性とその相手、三組をめぐる切実な話の語り口は誠実です。約90分、26日まで相鉄本多劇場。
川べりの芝生。草サッカーとピクニックを兼ねた昼下がり。高校生の頃からの友達同士、二組の夫婦。豚汁を作りながらのんびりと応援。そこに一人で現れた一人の女はチームの一人のことが好きで...
楽ではない自営業だが二人目に恵まれた夫婦と、同級生で親友だけれども子供の出来ない夫婦。三十過ぎて、はるか年下の男と結婚して子供のほしい女。三組のカップルとその友人達という枠組みの物語。カップルとはいっても、三十半ばの女性三人が物語の主軸にあります。子供のいることが人生の全てではないのかも知れないけれども、当事者にとっては切実なこと。女性固有のタイムリミットや、高校生からの親友だと云っても残酷なほどに思い通りにならない現実。現実の問題は解決できなくても、先に進もうという想いがポイント。
この年齢の女性たちのこんな話というのは、芝居に限らずよく語られる内容ではありますし、語られている状況も、少なくとも二組の夫婦はそれほど突飛なものではありません。が、「料理の出来ない女」とか「高校生時代の思い出」とか、周辺のことを丁寧に描くことで問題を共有する夫を明確に描くのです。共有する夫という人が居ることが観客に安心を与え、共感を生むのだろうなぁと思うのです。もちろんこの問題に関してアタシは現実の切実としては感じる術がなくて頭でわかってるだけかもしれません。共感を感じれば絶賛になるだろうし、そうでなければ薄味に感じてしまうという気もします。もっとも、アタシはこの手の話が大好きなわけですが。例によって。
結婚していない一組は少々極端な言動を負わされていて、物語の一端を担いつつもコミカルな部分を担っています。事の重大さのわりに、平坦になりがちなこの手の話題を誰でも楽しめる語り口にできているのはお笑い三人組とこの二人の部分によるところが大きいのです。 同様に「料理の出来ない女」の描写が派手ではないけど気持ちに残ります。ビニール袋に入ってるカットされた野菜を鍋に空けていき、水を入れるというだけの動作なのだけど、ほんとに出来そうにない風に見える演技が絶妙。 良くも悪くもベタな部分を持つことは、横浜という芝居に慣れた観客ばかりではない場所で根強く続けられる一つの目配りだろうと思います。
スタジオソルト「ピクニック」
2006.11.22 - 11.26 相鉄本多劇場
作・演出 椎名泉水
出演 以倉いずみ 麻生0児 両角葉 東享司 森由果 増田知也 松本・F・光生 高野ユウジ 木下智巳
| 固定リンク
「演劇・芝居」カテゴリの記事
- R/【ホギウタ】ブリキの自発団P(1999.10.15)
- R/【寿歌】プロジェクト・ナビ(1996.09.21)
- 【芝居】「ヨコハマ・マイス YOKOHAMA MICE」神奈川県演劇連盟(2025.04.15)
- 【芝居】「フルナルの森の船大工」タテヨコ企画(2025.04.08)
- 【芝居】「ここは住むとこではありません」TEAM FLY FLAT(2025.04.07)
コメント