【芝居】「小さい女」イマカラメガネ
2006.11.19 18:00
アタシは初見です。女性っぽい悩みを押し出してはいますが、途中までしか踏み出せないいい歳の女性を描いた芝居にはハマるアタシです。90分、東松原・ブローダーハウスでの公演は終了。
自由が丘の古いアパートで一人暮らししている女。結婚した兄は仲も良くてよく遊びに来る。 実家依存してる会社の後輩やら、アパート取り壊し反対署名にかこつけて来る気持ち悪い男やら。ある大雨の夜、間違って飛び込んできた男に一目惚れして…
いろいろなことを続けられない女、あるいは友達が居ない女。芝居として成立させるようにコミカルだったりダンスだったりはしていても、笑わせられるうちに、どこかアタシに共鳴するような感覚があります。平均的な水準なのにあと一歩を踏み出せないままな感じとか、外面はよくても実に自分の損得勘定が行動原理だったり、他人にとっては理不尽な逡巡する気持ちだったり。
三十過ぎて独身だけど、ちゃんと仕事してて、ぼろアパートだけど自由が丘近くに一人で暮らしてもいて、それなりにちゃんと生きてるけど友達も居なくて、職場が近くてよく遊びにくる兄が好きで。ひどい状態というわけではないけれど、毎日が楽しいとは思えない鬱屈した気持ちを描くのです。たとえば本谷有希子のようにもっと病的なまでにおかしくなるわけではなく、少々コミカルに過ぎたり、起きたら隣にオトコが寝てたとか、あるいはダンスのような芝居的な演出はあっても、普通にあり得る範囲で動き、判断している感じがします。実家の箱入りで、密かに見下していた会社の後輩が驚くほどの早さで変化したりすることや、一目惚れしたオトコの彼女である隣人が立ち退き反対運動を止めることや、離婚するとまで云ってた兄が娘の病気で部屋を出て行くなどの、自分の思い通りにならなくなった瞬間に主人公が取るのは理不尽にキレて拗ねたり泣いたりすることばかり。物語そのものが大きくドラマを持っているわけではないのだけれど、こういう細かいところを緻密に、しかしコミカルを忘れずに積み上げていくのには舌を巻きます。
主人公の女にはブラザーコンプレックスという特性を強く持たせた描写。物語にそれが大きく寄与することはない感じが違和感ありますが、この特性のおかけで兄のヘルメットを被り、泣きながら想いをストレートに吐露させるというシーンを巧く見せてる感じもします。短くはないシーンなのだけど、この理不尽な吐露に付き合う兄という存在にもあまり嘘が感じられないのです。
ほぼ出突っ張りで主役の女を演じた村松真夏が、コミカルも可愛さもテンションも焦りもちゃんと併せ持っている感じで実にフィットします。劇中に出てくる「ケンケンしてる」という表現もぴったりで、かつての小林愛のような感じすら受けるのです。
イマカラメガネ「小さい女」
2006.11.17 - 11.19 ブローダーハウス
作・演出 松田文
出演 村山真夏 大塚英淳(シアターギャングスターズ) 内ヶ島彩子 鈴木浩之 田中あやこ(石神井童貞少年團) 加藤食
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