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2006.11.30

【芝居】「恋人たち」ブラジル

2006.11.29 19:30

佐藤佐吉演劇祭の最後にふさわしい仕上がり。ブラジルらしい「笑い過多に見えて、切ない話」は役者も安定して楽しめます。120分弱、12月5日まで王子小劇場。

古い安アパートの部屋。同棲している男女、焼身自殺を図るが邪魔が様々に入る。
アパートの他の住人、大家、配偶者、会社の人、何人かの来訪者。そのうちに転がり込んでいた女の背景が見えたり、転がり込まれた男に謎の女の影が見えたり。

愛することから出発し、あれやこれやと繰り出される小さなサプライズが笑いを呼んでいきます。 夫婦なこと、生死の問題など。幾重にも螺旋してぐるぐると廻るうちに予想出来ない着地点に到達します。ブラジルが好んで取り上げる「大人しいのにネジが外れてしまった人」が胸焼けするほど登場しますが、役者の力が隅々まで行き渡っていればこんなにも安心。

実は、「女ともだち」がやり合うシーンが好きです。探り合う必要すらないかつての親友、表面的には普通の会話なのに互いが全く信用していないどころか恨みに近いぐらいの想いが渦巻く二人は怖いとは思いつつも、もっと観ていたいと思ってしまうのです。

基本的には笑いの多い舞台です。会話の端々とか、ほんの微妙なズレでくすくす笑うシーンが沢山。それなのに出てくる人物はどこか壊れた感じ。この二つの両立が、この劇団の強みなのだなぁと思うのです。 かつて双数姉妹などで見せた桑原裕子の「若い感じのする人物(なんじゃそれ>アタシ)が数年経った感じに深み。純粋で真剣すぎるあまりの不安定は彼女の当たり役ですが、序盤で客席を暖め、きちんと物語の中心を最後まで貫きます。

重実百合が演じた「可愛らしくて少しいやらしく迫る女の子」、中川智明の「もの静かなのに底深く怖い感じ」の住人たち、瀧川英次の「明るいのに深刻な大家」だけでなく、出てくる人物はすべて芝居的で極端なキャラクタ それなのに、それぞれの人物は細かなディテールが作り込まれていて、ありそうな気がしてしまうのです。

初日時点では、かなり舞台上での動きというかアクションというか取っ組み合いがたくさん。足下が滑ったりモノが落ちたりしていますが、靴下で滑ってしまってるようにみえたり、どこまで計算されているものかは知るよしもありませんが、楽日まで怪我のないように、と祈るのです。

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2006.11.28

観劇サイト2.0

一年ちょっと前、MySQLとかPHP勉強しようと思って本を買い込んだのですが、もう見事なぐらいに挫折をしてそのままなのです。自分用にサイトを作って便利に使おうと思ったのが発端で、仲間内で共有して、そのうち公開でもして、人がばんばん来て、それで食えちゃったりして会社なんて..、なんて酒呑んで妄想したり(←妄想しすぎ、というか酔っぱらい)

CoRich舞台芸術」というサイトがオープンした、というお知らせを頂きました。劇団や関係者、あるいは芝居を観たいと思った人が情報を登録して、観たい・観てきたで簡単なコメントと評価をしていけるというサイトなのです。実名ではないにせよ登録制で、会社組織が運営していて、データが自律的に増えていくしくみですから、次の世代の「えんぺ」という感じがします。

これで携帯対応できてたらとか、情報の登録が結構大変だとは思うけど、公演が終わっても情報が消えないという仕組みは、情報が集積していけば圧倒的な力を持ちそうです。まあ、芝居の世界で圧倒的というのがどれだけの金を生むのかはわかりませんが。

さて、週末。既にコマ破綻済み。自業自得。

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2006.11.26

【芝居】「青い鳥」山の手事情社

200611261930

メーテルリンクの青い鳥から、裏読み解釈の演出で。90分、27日まで東京芸術劇場小ホール1。

全体の流れは原作そのままに、ポップな舞台美術や小道具を日常の何かに置き換えたり、狭い空間を意識した所作で見せる山の手流。当日パンフの演出ノートにあるとおり、「幸せは近くにある」という一般的な解釈は終幕であっさりと別の着目点に文字どおり塗り替えられます。言われてみればそんな断片はあちこちに仕込まれていますが、途中までは普通な解釈でみてたアタシには少しばかりの衝撃だったり。

生まれる前の子供の演出が見た目にちょこまかとコミカルで印象に残ります。幾つかの二役には裏読みする意味があるような気もしますが、今ひとつぴんとこなかったり。

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【芝居】「物々交換」北京蝶々

2006.11.26 14:30

早稲田劇研の現役・北京蝶々、実はアタシ初見です。見応えのある題材選びは、この若者たちの漠然とした疑問というか不安か。80分、27日まで劇研アトリエ。

口座直結の電子マネーが普及し、普通の生活では現金を持ち歩く方が珍しい時代。口座が停止されてしまって道端に物を並べて商いする若者、背中にあるカフェでは落ち目のタレントが次の一手の売り込み、向かいのホームレスは謎も多く…

チケットからしてSuicaを模したプラスチック。入場もなんか端末にかざしたりする懲りよう(フェイクか、RFIDか)。

電子マネーの「口座ひとつの封鎖で自分の金が使えなくなる」漠然とした不安に、格差社会(思えば今年はこのネタが多い)、環境保護の裏側的胡散臭さをリミックス。関係なさそうな流行りごとをまとめて芝居に仕上げるのはたいしたもの。

地に足がついているところから発想しているかんじがして、見ていて不安がありません。

物々交換的にわらしべ長者に物語を着地するかと思わせて、そこはあっさりと。組み合わせたら巧くいきそうなマッチングする技術だったり、自分の財産を自分で管理することとか、幾つかのオルタナティブを示しつつ。終盤ではセキュリティをハックする萌芽をみせて、「ぶっ潰してやる」アナーキーさまでいってるのに、その直前までで寸止めするのは勿体無い気がしないでもありませんが、そういう芝居ではないということかも知れません。

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【芝居】「重力の箱〜3階の水槽のパーティ」あさかめ

2006.11.25 19:00

あさかめのロングラン企画公演。四階建てマンションの、その三階住人・ゲイカップルの静かな一日を描く70分、来月12日までギャラリーHIGURE17-15cas。

長いこと一緒に暮らしているゲイのカップル。日常に飽きてしまっているふたり。エレベータ前に積み上げられた紙くずを床一面に並べる遊びをするうち、まるで水槽のようだと思い始めて..

マンションの玄関前という設定の3バージョン。人物の大枠は同じなのですが、細かいところではかなり違う設定になっています。謎の一階住人は言葉を喋ったりもするし、二階のカップルは、ストーカーの関係になっていたりします。他のバージョンの芝居の関係を引きずってみると疑問だらけになりますが、それほど時間かからずに慣れてしまいます。

今までのあさかめに近いスタイルの芝居はこの三階だといいます。静かに流れていく時間、起伏が少なくて、さまざまなイメージが提示されるのだけど、アタシにはストーリーを追おうとすると少々難しい。どちらかというとイメージで感じるタイプの芝居かもしれません。

一階住人の女と会話が成立しているのは、ゲイカップルの片方とだけで、しかも二人きりのシーンに限られます。紙くずを石ころに見立ててひたすら並べ続けながらいつ終わるとも知れない時間を過ごしている感じ。女は彼のことを知っているようだけれども、その記憶は共有できないままに終わります。何も明示されてはいないのだけど、あたしには死の香りが感じられてならないシーン。

ストーカー女と相手の関係、あるいは四階住人とゲイカップルの関係など、いくつかの関係が提示されます。どこかでうっすら繋がってるようでも明示的には示されず、それぞれを並行して見せている印象があります。

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2006.11.25

【芝居】「重力の箱〜2階の新しい子供」あさかめ

2006.11.25 14:00

作演・児玉洋平と女優兼プロデューサー・ヒザイミズキのユニット、あさかめの新作は屋上にラクダののった谷中の名物ギャラリーを四階建てマンションに見立てて三バージョン公演。その二階。70分。来月12日までギャラリーHIGURE17-15cas。

二階にすんでいる男の家に寄った女、職場の上司らしいが、紙を顔の前にかざし続けて顔が見えない。戸惑いながらも男は想いを告げることに成功する。他の住人たちは我がことのように喜ぶが、そのうち相談ごとを持ち込むようになって…

何か漠然とした不安を感じていた女がそれを解消することで何故か祭りあげられてしまう。ビルを徘徊する女にすらちょとしたキッカケで盲信することが「流行」してしまう姿。

全体の作りはコミカルです。起こることが少々唐突だったりもします。がその根本に見える作家の視線は、付和雷同で盲信が生まれる現場を、こんな小さなコミュニティの中に提示してみせます。作家はそれを描いて見せるだけで殊更何かの主張はしていないようです。が、その気持ちわるい場をコンパクトに切り取って見せるのはわかりやすいなあ、と思うのです。

一階部分でお茶サービス付きで待ち。開演五分ぐらい前から、一階住人という設定の「神原さん」の短いシーン。小声で呟くところが多いために、聞こえないところも多いのですが、彼女がどういうキャラクタの設定にしているかということは確かによくわかります。全バージョンで共通のようです。その後二階に移動して開演。座席は当日受付で指定を受けるようになっています。全二作に比べるとどこに座ってもきちんと見えるようになっていますし、段差がどれだけついているか 「+30cm」などと書いてある座席表で非常にわかりやすくて助かります。

日暮里から夕焼けだんだんの「猫だまり」を下り右に曲がった「ラクダのビル」という立地も散歩向きで楽しい一日。

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【芝居】「少年ラヂオ(公開ゲネ)」キャラメルボックス

2006.11.24 19:00

福岡・神戸と来て明日が東京初日のキャラメルボックスのクリスマスツアー、久々のオリジナル新作。ブロガー向け公開ゲネの企画。アタシは初めて乗りました。来月25日まで、サンシャイン劇場。

大正末期。震災の後の東京。屋敷から出してもらえないお嬢様は、ある手紙を受け取って街に飛び出してしまう。金を持ってない彼女を追いかけて執事も追いかけるが上野の街でスリに遭ってしまう。そのスリからスリ返す少年・ラヂオ。奉公している弟を引き取るため、稼ぐために。お嬢様が会った男は彼女に会ったことがあるが、彼女は知らない。震災で記憶を失っている...

大正末期固有の軽さというか元気良さ、軽快な音楽の選び方、スリの少年という設定の面白さ。もの凄く面白くなる材料がただでさえ多い時代を舞台にしているのです。が、ゲネのせいかもしれませんが、しっくりこない感じは残ります。

実力のあるベテランを脇に配し、若手を物語の真ん中に据えるキャスティング。人を育てるという劇団のポリシーゆえだということはわかります。が、脇に廻った役者の凄さが際だってしまうのは、残酷なことです。東京ではもの凄いステージ数ですから、それをこなしていくうちに大化けするような手応えはあると思うのです。

実は兄弟の話が作家の最もコアなのだというのがわかったのは上演後のインタビューでの作家の言葉。約束を裏切ってしまったことの深い後悔の念の凄みがある台詞。

あたし自身にはどうしても違和感が二つ。一つは尺貫法とメートル法が混在してる台詞の組み立て。ほんとに些細なことですからどうでもいいことではあります。二つめはどうしても取り戻さなければいけない書類、というのの理由付けをするために戦争とか平和な時代とかを持ち出さなければいけなかったことなのです。終演後のインタビューで聞いてみれば、唯一庶民が戦争に反対した時代だという裏打ちはありつつも、その世界平和をことさら訴えたいというわけでなはいようです。

坂口理恵の凄みが本当にすごい。実力のある女優だというのは定評ですが、どんなシーンでも引っ張ってしまう確かさがあります。岡田さつきはちょっと可愛らしい役。

終演後、ロビーで参加者を集めて作家が質問を受ける趣向。

  1. 参考にした本は
  2. 大正という時代を選んだ理由は
  3. コテツはどう見ても女性(女優)ですが男にしたのは理由がありますか
  4. 二回目の新人作家との共同脚本ですが、その時代を描くというのはハードルが高すぎないか
  5. キャスティングで苦労したことは
  6. 言わせたい台詞とか訴えたいこと、は何ですか。
  7. 東京の地名が地方公演ではわからなくないですか
  8. 大金の500円、という感じで物価感覚がわかりにくい気がしますが、何か説明した方が良くないですか
  9. 他にラヂオに盗ませたかったものとかありますか
  10. 戦争とか平和とかを持ち出した(作劇上の)理由はわかりますが、それが違和感を生んではいませんか

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2006.11.24

【芝居】「ピクニック」Studio Salt

2006.11.23 18:00

横浜の劇団、ソルトの新作。三十台半ばを迎えた女性とその相手、三組をめぐる切実な話の語り口は誠実です。約90分、26日まで相鉄本多劇場。

川べりの芝生。草サッカーとピクニックを兼ねた昼下がり。高校生の頃からの友達同士、二組の夫婦。豚汁を作りながらのんびりと応援。そこに一人で現れた一人の女はチームの一人のことが好きで...

楽ではない自営業だが二人目に恵まれた夫婦と、同級生で親友だけれども子供の出来ない夫婦。三十過ぎて、はるか年下の男と結婚して子供のほしい女。三組のカップルとその友人達という枠組みの物語。カップルとはいっても、三十半ばの女性三人が物語の主軸にあります。子供のいることが人生の全てではないのかも知れないけれども、当事者にとっては切実なこと。女性固有のタイムリミットや、高校生からの親友だと云っても残酷なほどに思い通りにならない現実。現実の問題は解決できなくても、先に進もうという想いがポイント。

この年齢の女性たちのこんな話というのは、芝居に限らずよく語られる内容ではありますし、語られている状況も、少なくとも二組の夫婦はそれほど突飛なものではありません。が、「料理の出来ない女」とか「高校生時代の思い出」とか、周辺のことを丁寧に描くことで問題を共有する夫を明確に描くのです。共有する夫という人が居ることが観客に安心を与え、共感を生むのだろうなぁと思うのです。もちろんこの問題に関してアタシは現実の切実としては感じる術がなくて頭でわかってるだけかもしれません。共感を感じれば絶賛になるだろうし、そうでなければ薄味に感じてしまうという気もします。もっとも、アタシはこの手の話が大好きなわけですが。例によって。

結婚していない一組は少々極端な言動を負わされていて、物語の一端を担いつつもコミカルな部分を担っています。事の重大さのわりに、平坦になりがちなこの手の話題を誰でも楽しめる語り口にできているのはお笑い三人組とこの二人の部分によるところが大きいのです。 同様に「料理の出来ない女」の描写が派手ではないけど気持ちに残ります。ビニール袋に入ってるカットされた野菜を鍋に空けていき、水を入れるというだけの動作なのだけど、ほんとに出来そうにない風に見える演技が絶妙。 良くも悪くもベタな部分を持つことは、横浜という芝居に慣れた観客ばかりではない場所で根強く続けられる一つの目配りだろうと思います。

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【芝居】「ラフカット2006」

2006.11.23 14:00

オーディションで選ばれた役者ばかりで短編四本を上演する毎年の企画。休憩込み155分。26日までスペースゼロ。

四本の芝居。
◆「円盤屋ジョニー」。南の島のリゾート、離れ離れになった彼女を待つ男が連れてこられた客の居ないディスコ。明らかにヤクザ風の一団もやってきて…
◆「わるいこと」。公園のゴミ拾いをするネットボランティア。気に障ることを言う奴とか、下心いっぱいの奴とか。車椅子の男に気を留めた芸能人の男、ふとした「いいこと」が…
◆「やさしい悪魔」。テニススクール。人気の美形コーチの取り巻きのような生徒たち。一方、物がなくなるような事件も頻発して…
◆「笑う恐竜」。恐竜の化石が発掘されて施設になったらしい場所。ご多分に漏れず、財政苦しくて、援助を検討しているNPO法人の視察団がやって来る。ろくな実績も設備もないが、想いのある学芸員はいて…

円盤屋、堤脚本にありがちな黒人キャラクタ。何回も見てる気がします。信じることと裏切られることの話ではあるのだけど、そこに主軸があるかどうかが今ひとつわからないのです。

わるいこと、屈折した愛情の芝居。良いことしようとするとカチリと入るスイッチという仕掛けは悪くありません。ボランティアってのは良いことなのだろうけど、そこに居るのは人間で欲望も下心もあるってのは、自分も含めて思い当たったりするのは駄目人間なアタシ。

やさしい悪魔、女の嫌なところを克明に描くのは作家の得意技。そういう嫌な状況を提示するというところまでが舞台の全てで物語がそこにあるようにはあまり感じられませんが、状況を執拗に描くこのやりかたはアリという気もします。心情の動きを突飛な動きに見せるという手法が結構面白くて、「自慢を聴いたら素振りする」っていうシーンがおかしい。「黒木香の笛」ってのを思い出したりしますが、ずいぶん古いAVの下品なネタですねそうですね。

笑う恐竜、信じることの重要さを描く芝居。ずいぶんとストレートなメッセージを根幹に据えていますが、くだらない(ほめ言葉)ギミックが結構てんこ盛りにしてあります。結果、30分程度の芝居の中でもっともちゃんと芝居になっててほぼ一人勝ちという気も。ほぼ出オチに近い年嵩の役者が居たりしますが、終幕でのオチが効いてて結果オーライ。

今年に関していえば、4本目の太田善也のものが一番芝居として成立してた気がします。3本目の高井浩子のものは嫌な気持ちにされる度合いは大した物ですが、ここから始まる何かを見たい。ラフカットにおける堤泰之という人は全部の演出だったりもするのだけれど、一本混じる作家作品は、どこかバランスに欠けてしまう気がしてしまうのが多い気がします。演出専念でもいいのじゃないかなと思ったりもするんですが、余計なお世話ですね。

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2006.11.23

【芝居】「シュナイダー」elePHANTMoon

アタシは初見です。自然に感じる言葉選びや役者のたたずまいの前半が好きです。90分、26日まで王子小劇場。

かなり田舎の道路沿いの喫茶店。近くには自殺の名所な森があって、所在なさげな来訪者がいたりする。喫茶店の店長の女、いつの間にか居る男。女の夫は行方がわからなくなって随分経つ。彼女の幼なじみや、頭が上がらない男や謎めいた女やら…

作り込まれた舞台装置。質感も奥行も何もかもきっちり。自然に感じられる会話はどちらかというと映像に近い感じです。スムーズに流れる引っかかりが少ないのはもちろんいいことなのだけど、序盤では身体に染み込んでこない感じもします。反面、過剰なほど「抑えこんだ」という感じのあからさまな演技をしているキャラクタは特異で印象的ではありますが、少々戯画的に過ぎる気もします。大きな問題ではありません。

後半、缶ビールを開ける四人のシーンが好きです。ずいぶんとがさつな人間のように描写しながら、そこに居ない人を四人が想っていることが伝わってくるこのシーンは秀逸です。おのおののもてあます感情をきちんと言葉にする努力がされていて丁寧につくられています。「感情をあれもこれも言葉にする」ということ自体は決してリアルではなくて芝居臭さだとアタシは思いますが、それがいい意味でハマっている感じがします。「寂しい」ということを口にした瞬間、それまでに押さえ込んでいた気持ちが一気に広がるのです。

終盤は、舞台の世界全体に抑え込まれていた想いというか悪意が一気に暴発する、まさかな展開。確かに見応えはあるのですが、アタシが好きかというとちょっと勿体ない感じ。終幕のあの造型は芝居を完全に嘘の世界にしています。もちろん嘘は構わないのだけど、そこまではもっとリアル寄りで作られてきましたから、違和感はあります。もっと観客の想像力に頼ってしまってもいいのではないかと思うのです。

実は、いくつも良くわからないところがあります。手紙の中身は誰が誰に当てたモノなのかとか、彼らの関係は実際の所どうなっていたのかとか、序幕のシーンは後続するシーンのどれだけ前に起こったことなのかとか、いくつもいくつもヒントは提示されてるのだけど、明確には示されない感じがします。その場で起こったことは少しやり過ぎなぐらいに提示するのに、関係とか過去に起きたことはその香りしか見せないというアンバランスは感じます。

舞台としては初舞台という坂倉奈津子が実に良いのです。抑え気味ながらさまざまな感情がきちんと伝わる会心。浮気相手というヒール役、渡辺美弥子は舞台世界で少し浮いたポジションに感じられますが、役ゆえかもしれません。振り幅が大きくて、印象に残ります。

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2006.11.21

コマが足りない。

芝居を観る友達のあいだで通じる言葉に「コマ」ってのがあります。通常の平日だと夜1回、週末だと昼(マチネ)と夜(ソワレ)の2回をコマに見立てて、そこにどの芝居を押し込んで、どれを落とすかってのを飲み屋でギロンしたりするわけですが。

ダブルキャストとか複数バージョンってのは興業数・動員数を増やす手法の一つではありますが、これだけ重なると、破壊的にあたし達を悩ませます。そのバージョン数の分だけの週末を入れてくれるぐらいの気合いがほしいのです。全部見られないとなると、ええい、丸ごと落としちゃえって気持ちになったりすることもあるわけで。もっとも、それ相応の覚悟が感じられるのならば、あたし達もその趣向に乗ろうってなものですが。

さて、週末。休日もあったりする今週です。どこかの時間を見つけて、 トリのマークがオープンするアート&カフェ 「こぐま」にも足を向けてみようと思ったりして。定住してアートを続けるというプロジェクトのオープニング。

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2006.11.19

【芝居】「小さい女」イマカラメガネ

2006.11.19 18:00

アタシは初見です。女性っぽい悩みを押し出してはいますが、途中までしか踏み出せないいい歳の女性を描いた芝居にはハマるアタシです。90分、東松原・ブローダーハウスでの公演は終了。

自由が丘の古いアパートで一人暮らししている女。結婚した兄は仲も良くてよく遊びに来る。 実家依存してる会社の後輩やら、アパート取り壊し反対署名にかこつけて来る気持ち悪い男やら。ある大雨の夜、間違って飛び込んできた男に一目惚れして…

いろいろなことを続けられない女、あるいは友達が居ない女。芝居として成立させるようにコミカルだったりダンスだったりはしていても、笑わせられるうちに、どこかアタシに共鳴するような感覚があります。平均的な水準なのにあと一歩を踏み出せないままな感じとか、外面はよくても実に自分の損得勘定が行動原理だったり、他人にとっては理不尽な逡巡する気持ちだったり。

三十過ぎて独身だけど、ちゃんと仕事してて、ぼろアパートだけど自由が丘近くに一人で暮らしてもいて、それなりにちゃんと生きてるけど友達も居なくて、職場が近くてよく遊びにくる兄が好きで。ひどい状態というわけではないけれど、毎日が楽しいとは思えない鬱屈した気持ちを描くのです。たとえば本谷有希子のようにもっと病的なまでにおかしくなるわけではなく、少々コミカルに過ぎたり、起きたら隣にオトコが寝てたとか、あるいはダンスのような芝居的な演出はあっても、普通にあり得る範囲で動き、判断している感じがします。

実家の箱入りで、密かに見下していた会社の後輩が驚くほどの早さで変化したりすることや、一目惚れしたオトコの彼女である隣人が立ち退き反対運動を止めることや、離婚するとまで云ってた兄が娘の病気で部屋を出て行くなどの、自分の思い通りにならなくなった瞬間に主人公が取るのは理不尽にキレて拗ねたり泣いたりすることばかり。物語そのものが大きくドラマを持っているわけではないのだけれど、こういう細かいところを緻密に、しかしコミカルを忘れずに積み上げていくのには舌を巻きます。

主人公の女にはブラザーコンプレックスという特性を強く持たせた描写。物語にそれが大きく寄与することはない感じが違和感ありますが、この特性のおかけで兄のヘルメットを被り、泣きながら想いをストレートに吐露させるというシーンを巧く見せてる感じもします。短くはないシーンなのだけど、この理不尽な吐露に付き合う兄という存在にもあまり嘘が感じられないのです。

 

ほぼ出突っ張りで主役の女を演じた村松真夏が、コミカルも可愛さもテンションも焦りもちゃんと併せ持っている感じで実にフィットします。劇中に出てくる「ケンケンしてる」という表現もぴったりで、かつての小林愛のような感じすら受けるのです。

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【芝居】「SPICE」クロカミショウネン18

2006.11.19 14:00

王子、ポケットと進み、吉祥寺規模まで一気に上がってきたクロカミの大幅改訂再演。休憩込み120分、20日昼まで吉祥寺シアター。

吹雪に閉じ込められた山荘で起きた殺人事件は誰もが動機を持ち、可能性があって…

初演は未見。初演とは大幅に改訂を加えているようで、初演見ている人ほど評判がいい気もします。芝居の構造が幾重にも重なっていて、最後の最後まで着地点が見えないほどドキドキする感じはあります。

反面、つかなきゃいけない嘘が重大すぎて、周到に作り込み、役者の力が相当に充実しているのに、かえってアラが目立ってしまうのは仕方のないこととはいえ、残念な感じもあります。この壁を乗り越えることが、アタシには今時点の演劇で可能な気がしないのです。

クロカミはどちらかというとドタバタとしたコメディが得意な分野です。序盤こそそんな感じはあっても、全体には暗い話の今作は異質です。が、この規模の劇場をきちんと満員にし、作り込まれたセットや劇場をとことん使いこなす演出など、確かなチカラを感じます。終幕の瞬間の作り方なんか、アタシは好きなのですが。

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【芝居】「あなたがここにいてほしい」散歩道楽

2006.11.18 19:00

再演作7本を毎月上演する企画・サンポジウムの最後。チェーン店のバックヤードで繰り広げられる、実は恋愛劇。100分、19日まで「劇」小劇場。

ステーキチェーン店の事務所、ただでさえ大忙しなのに、何人かが辞める日のラストオーダー寸前の時間。 補充もままならず、工事の業者も来なくてテンパってるのは店長ばかり、勝手なことばかり言うバイトばかり。何時間も遅れてやってきたバイト面接者は80歳で…

忙しく働いていて連帯してるように見えていてもホントのトコロでは繋がる気はないバイトたち。そんな空気の中でもきちんと紡がれる物語。第二回公演(未見)でこれを描きだしたのは確かなチカラなのだなあと思うのです。

気持ちはあっても言い出せないし、相手も気付かないまま。日本人の恋愛劇という煽り文句は確かにその通りに感じます。そこ、その一瞬に相手にきちんと伝えなければ、あなたは行ってしまう。のに云えない気持ちがいい歳になっても甘酸っぱく感じるのです。

チラシにもうひとつある「麻生美代子の恋人選び」の方はカケラもありません。新人バイトという、あり得ない役がどういう経緯で作られたかは知りませんが、彼女が企む相談をする二人のシーンは優しいのです。

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2006.11.18

【芝居】「歪みたがる隊列」ジャブジャブサーキット

2006.11.18 14:00

岐阜から東京公演を定期的に続けるJJCの新作。いわゆる多重人格障害を静かに描く110分。19日までアゴラ劇場。

いくつもの人格がいる患者。クリニックでの治療はゆっくり順調に見えたが、主治医が出張している間に新しい人格が発現して…

真面目な語り口、多重人格障害を中心に据えながらもエキセントリックな演出を押さえて静かに進む物語。決して病気そのものを描くのではなくて、その枠組みだからこそ語れる構造の話を持ってくるあたり、作家らしいのです。

多分綿密に調べて作られているのでしょう。誤解を受けないよう、丁寧に隙なく描いていく運び方は、反面、説明臭い印象もあって、その部分が結構面白かったりするので、語りたい物語と少々アンバランスにアタシには印象に残ってしまったり。

深読みしすぎる観客を ヤユする場面など、物語に没頭しきらない細かな楽屋オチはいたずらっぽく好き。何故か背負って何回か出入りする机をなんだかなと思って見ていると、これもあっさりかわされたりしていて、確信犯なのだなあと思います。

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2006.11.17

【芝居】「吉田鳥夫の未来」無機王

2006.11.16 19:30

静かに柔らかい物腰で語る優しさが持ち味の劇団。彼らの強みが安定している約105分。19日まで王子小劇場。

庭のある一軒家、縁側に面した畳の部屋。漫画家の家、家族、原稿取りの新人編集。出戻り寸前の娘は夜の仕事、その息子。
毎朝起きると記憶が13歳にリセットしてしまう男。前日の記憶を描いた漫画を毎朝読んで、記憶を取り戻す…

ジュブナイル、という思春期前半の少年少女を物語を、彼らが読むために書いたジャンルがあります。「金八」→「14歳の母」(その間、27年か...)という流れの昨今では生々しい年齢ですが、作家が得意とするこの年齢はジュブナイルという言葉のもともとの、もっと子供に近い姿にぴったりだと思うのです。

女優が男の子だったり、いい歳して中学生だったり、男のように暮らす女だったり、昼夜逆転していたり。物語の中でも現実の姿も様々にトランスしている人々。が、背景とは使われていても、そこよりは中学生前後の境界線上の危うさを描くのが作家の興味なのかなあと思うのです。その微妙さを好きだというのは30歳台後半のアタシは云いづらいですが(^_^;)

無駄とも思えるぐらいな細かさは演出の成果だと思います。たまたま最前列下手に座ったから気がついた、の伝染したストッキングとその直後だったり。

全体を通して、間や台詞まわし、ギャグすらも芝居臭いのは人によっては好きではないかもしれません。リアルではないのだけれど、ちゃんと安定した運びは安心なのです。

タイトルになっている人物は、起きるたびに記憶がリセットされる、いわゆる「頭の中の消しゴム」な人。彼の行く末を描くのが芝居の根幹です。彼がとどまっている年齢も中学生というのが、作家の見えている世界を端的に見せている気もします。

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2006.11.15

【芝居】「ウーマンリブ先生」ウーマンリブ

200611141900

宮藤官九郎のユニット、ウーマンリブの新作。130分。19日までサンシャイン劇場。

湯ヶ島温泉の古い旅館。新館とは名ばかりで設備も職員も無茶苦茶。缶詰にされている作家はいわゆるエロ(官能)小説の。書けない作家、女をあちこちに呼んで、夜を過ごそうとしていて。でも明日までに40枚、 書き出しすら全く思いつかない。そこにやってきたもう一人の先生。昔やったのと同じ手口で彼に書かせることに成功するが…

性愛的に下品なつくり。女性ばかりの客席は受けるのです。アタシは勿論好きなわけですが。全く話は違いますが、「鉄人ガンマ」(オフィシャルサイト)に似ている瞬間があったりするのも楽しい。

書けない作家の話は、それこそ山のようにあるので、食傷気味になるかと思うのですが、作家も役者も圧倒的チカラがあると、こんなにも楽しめるのです。

かと思えば、そういう方面の話、男の側の事情も女の側の事情も、あらゆる方向に眼を配る視点が無理なくてんこ盛りなのです。

後半40分ぐらいのところでタイトルが入って後、朝の話は全く想像とは違う着地点。人殺しの贖罪の話、その物語を背負う作家の話。名前がそこにある以上、清濁全てを背負おうとする作家の決意宣言ともとれる終幕はすがすがしく、カッコイイ。

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2006.11.13

著作権。

クリエータが作り出したモノに敬意を払うというのにはやぶさかではないのだけど、デジタルで非劣化だからという理由だけで、それを流通させる人々にお金を落とし続けなくちゃいけない、という今のありかたは腑に落ちないなぁと思っているのです。

著作権保護の延長問題を考える国民会議」というのが発足しています。発起人にはアタシが敬愛するコラムニストや劇作家たちがほんとに沢山名前を連ねていて。クリエータじゃないあたしですが、彼らには同意していきたいなぁと思うのです。12/11のシンポジウムは行けそうにない、のが残念なのですが。

週末には何を見ようか。実はものすごく期待作揃い。

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【芝居】「フラミンゴの夢」タテヨコ企画

2006.11.12 19:30

雑居ビル地下の謎の芝居をビル地下で。90分。地下のスタジオ、コンクリ打ちっ放しですので気候によっては冷えますので必要な方は対策を。19日まで、ワンズスタジオ。

ビル地下の部屋で待っている人々。昨日までは普通に入れたのに突然入れなくなった扉の前、ほぼ撮休日に。使えない見習いアシ、風変わりなビルオーナー、謎の二人組などが行き来して

地下ってのは地図に乗らないし色んな憶測の余地があるのです。劇場の近くを走る有楽町線もやけに真っ直ぐ地下深くを走るなどの謎をいう人がいたり。 (たとえばトンデモ本ではありますが→amazon, 帝都東京・隠された地下網の秘密)

今作では(劇中では見えない)扉の向こう側にかつて巨大農園があったという設定、秘密裏に作られていた作物。地下に作物というのは最近でこそ野菜プラントなどで見られますが、それなりに費用がかかりますから、見合う金額で売れなくてはいけないってあたりも、ネタが効いてます。

見習いがビルオーナーの親戚で信じられない妄想のような夢。頑張りすぎるオーナーは婿養子の立場の壮大な夢。助監チーフが様々な人に聞く「夢」を様々に見せる群像劇に仕上がっています。

撮影の現場がどいうものか、オーナーって人がどういう人種かというのは、アタシは知りません。居そうな感じでしっかりと見せるのは役者の力。物語の設定はかなり奔放ではありますから、リアルなんて事はこれぽっちもありませんが、ちゃんと巻き込まれていくのも、楽しいのです。

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2006.11.12

【芝居】「山」売込隊ビーム

2006.11.12 14:00

関西の劇団、売込隊ビームの新作。あり得ないシチュエーションを笑わせねじ伏せるようにしっかと見せる十年選手の力は確かです。120分。大阪、東京と来た公演は終了。

山小屋に拠点を移し、ネット配信演劇を計画する劇団。メンバーは次々とやめ、3人になっても頑張っていたが、配信を目前にしてもホンはあがらずダンスシーンしかできていない。
大雨の日、旧登山道に迷って山小屋に駆け込んでくるパーティー。
劇団主宰には借金取りが押し掛け、団員の一人が当てた宝くじを狙う。パーティーは登山部伝説の花を探す男が集めたもので、翌日、体調が優れない一人を残し出発するが…

電話もなければ車も来ない山小屋で劇団とか、まずあり得ないシチュエーション。細かい笑いを積みかさねながら、そのあり得ない世界に観客をしっかりと取り込んでしまう力。二組の人々を縦横に繋ぐ構造は少々無理は感じるものの楽しめます。関西小劇場的、というのはかなり乱暴なくくり方ですが、誰が観ても分かりやすく楽しめるというのは確かなのです。

好きな人に渡すと幸せににる花を探す登山パーティーの背景にある。気持ちが表せない不器用さ、何回かはさまる二人の会話のシーンが効果的で、単に嫌味に見える男の素朴が見えてきます。

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【芝居】「えんかえれじい」モンキーロード

2006.11.11 19:00

女優・井上美穂のユニット、モンキーロードの新作。北村想の作、大西一郎の演出で14日まで、110分。アゴラ劇場。

演歌歌手、作詞家、作曲。さまざまに引用しながら、唄も山盛りの前半、20分の幕間、まったく違う見え方をする後半。

作家はかなり頭が切れるのだと思うのです。芝居に物語を期待するアタシには、難しい断片がてんこ盛り。かと思えば色気というよりは下ネタの謡いがあったりしながら、詩的なところに着地します。芝居を観ている側からすると、さまざまに飛んでいく知識を教えようという姿勢が時には面倒くさかったりするのですが、たしかに自由にあちこちに行くのです。

全体にリアルよりはファンタジー。芝居臭い芝居はアリはアリですが、ソレが物語を紡がない気がするのです。確かに演歌ではあるのですが。20分の幕間(肝付兼太、じゃじゃまる+イヤミ+ドラキュラ。続けているのは厚みです。)後半は宇宙に一人居る感じの孤独、見守る母親という感じがします。

夢のような、空気のような空間を作り出します。が、あたしは唄に載せた芝居があんまり得意ではないのですが、唄ゆえに生きていけるというのならば、劇中歌われる唄に圧倒的な力がなければ成立しないとおもうのです。おそらくオリジナルの唄はアタシにはそこまでの圧倒的な力は感じられず。終幕が少し素敵な空間で。

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2006.11.11

【芝居】「チェックポイント黒点島」燐光群

2006.11.11 1400

東シナ海に突如現れた岩を巡る話を描く漫画家の物語は自由で奔放です。130分。12月3日までザ・スズナリ。そのあと、名古屋、浜松、大阪、福岡。

東シナ海に突如現れた岩。近くで太陽黒点を船で観測していた日本人の学者夫婦が発見したが経済水域を狙う近隣国の争いが混迷。妻は国境検問所だけの独立した存在を主張し…
という漫画を未完のままにしている漫画家。ヨーロッパに旅立ち行方のわからなくなった弟がいて…
国境などの境目にあって唯一行き来出来る場所、検問所(チェックポイント)をキーワードにして、様々に隔てられた人々が出会う「点」を細かな断片にして描きます。国家とか国境などのきな臭いところは極力戯画的に漫画の中に封じこめ、その単位であるはずの「ひと」に注力した描きかた。燐光群だからイデオロギーある芝居だと構えていると、そこはあっさり飛び越えて、想いをベースにしたウェットな語り口の話。

断片とはいえ、様々なモチーフをこれでもかと詰め込みすぎた感じがしないでもありません。一家惨殺や大学の封鎖、拉致などさまざまに取り込んだ意図はわかりますが、少々混乱するアタシです。

熱い中で周囲より少しだけ温度が低いとか、行き来できる点とか、「黒点」という発想は面白いのです。ベルリンの検問所に発想したチェックポイント・チャーリーという小屋一つのセットも潔く。屋根裏といい、「天皇と接吻」といい、作家はこういう小屋モチーフが好きなのだなあと思ったり。

終幕、あるいはオチはまさかのひっくり返し。いや、そうなれば確かに争いはなくなると思うのですが。

劇場のザ・スズナリは25周年ー。当日パンフに挟まる記念ちらしはセンス良く素敵。ロビーを埋めつくす過去上演作品のチラシの膨大さと多彩さは必見です。

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【ドラマ】「役者魂」#4

2006.11.7 21:00

なぜか先週はスゴ録が録ってくれなかったので、見損ない。今週は。文句云った癖にみてしまうのですが。役者とか舞台とかをそれこそベース(舞台)にしていますが、これは現実と家族のものがたり。

シェイクスピア俳優の娘、その弟はマネージャの家で暮らしている。弟は俳優の子供ではないが、その親を名乗り出る女(死んだ父親の妻。)が現れ、引き取ると言い出す。物腰柔らかで財産もある、まわりはみんな引き取ってもらう方が幸せだと思うが、俳優は絶対に引き取らせてはならない、と言い切る。

人々の人生は舞台、人は役者なのだというコンセプトなのだというのは前に書いたとおり。タイトルで街に溢れる人々それぞれに「役者魂」と文字が立つのはそれを具現しています。街で出会った人の奇妙な行動を夢想したり想像したりして笑ったり、想いを馳せたりするのはその流れ。

引き取らせてはならない、ならば、家庭裁判所が見に来る家庭で幸せな家族を演じようと思い立つ俳優とか、その俳優がなぜ女の嘘(引き取って東北に連れ帰った後、恨みの子だとして虐待を企てていた)を見抜いたかは、舞台の袖に引っ込んだ(帰りの車に乗って走り出した車の中で)見せた一瞬の表情の変化を見逃さなかったから、だというのです。

舞台俳優が演じることそのものよりも、演じるという技術と客観的に見極められる力があるプロだというリスペクトがあるという点で#2よりはきちんと見られるドラマになっています。芝居好きのあたしとしても、それほど違和感はありません。舞台俳優としてのシーンが一つもないからだとは思いますが、プロフェッショナルという「人」に対しての尊敬がきちんと描かれているからだと思うのです。

あれれ。面白くなってきたか、もしかして。

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2006.11.09

【芝居】「食」メタリック農家

2006.11.8 19:30

今まではテルプシコールやOFFOFFシアターの規模だったメタリック農家の新作。食べること、想い続けることを軸にした静かな童話。座る芝居多く、これからご覧になるなら、なるべく最前列を(初日時点では)。120分、12日まで王子小劇場。

東北の田舎。久しぶりに帰って婆さんが話し始めた昔噺…
雪深い村はかつて、冬の間は外界と断絶し食料も時給するしかなかった。地主が土地を持ち、屠畜は専任者が行う序列。村にはペチャラと呼ばれる妖怪というか化け物が居て、家畜のように力仕事を担っていた。
ある冬、原因不明に命を落とす者が続き、村を存続させるために村の地主が取った道は…

全体の骨格の切なさ、特に終幕の凄さは巧いなあと思うのです。 想いが集約する終幕は、気持ちをふるわせられます。 わりと分かりやすく底割れするなあと思っていても意外性のある深みがあります。

が、それはたまたまアタシが座った椅子2列(座布団込み3列)目下手端からは頭の隙間から芝居が見えたから、ではあります。座位の芝居が多く、ともかく見えないシーンが多いのです。今さら大改造は出来ないでしょうから、下手側の幾つかのシーンを見えるようにするだけ、例えば立つとか少し上にするだけでも格段によくなると思うのです。

役者の声量の調節や段取り、言葉の選び方もバランスを欠く感じがします。それが何に起因するかはわかりません。笑いが殆どない静かさゆえに誤魔化しがきかず厳しく見えてしまうのも不利なのです。また、メインとなる二人に二役、意味があることは十分理解できますが、序盤の流れはかなり役者に無理をさせているようにも感じます。

が、描こうとしている世界というか、断片はわりとアタシの好みではあるのです。肉にまつわる話は差別や輸入に関する現在のアタシたちに重なります。村を水槽に例える見えかたも。それゆえに、芝居が見えない、聞こえないというテクニカルに乗り越えられることが越えられなかったのは劇場の規模が大きく、座席の作り方に慣れてなかったからという気がしてなりません。

竹井亮介は圧倒的に安定していて揺るぎない安心。岩田裕耳は声を生かして対等に。石川ユリコは幾つかの聞こえないシーンが勿体無い。古市海見子、大川祐佳里は脇を固めます。 日を追うにつれて改善されているという話も聞きますので、ほんとはもう一度見たい..

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2006.11.08

残してほしい。

芝居の感想だけ先に書いて、あとからキャストとか日程を書き足すというやり方をしています。ともかく感想だけ載せてしまわないと、どんどん記憶から落ちていってしまうからなんですが、携帯電話を使うおかげで、なんとか続いています。

で、情報を後から足そうと思って、劇団のサイトに行くわけです。キャストの名前とか間違えない為には自分で打ち込むよりコピペしようと思うのが理由なのですが。そうすると、公演中にはあったはずの公演案内が綺麗さっぱりなくなってたりするのです。過去公演のところに載せてくれてればいいのですが、追いつかずに結構前のまま止まってたりして。

キャストのコピペはともかく、公演が終わっても、ちゃんと過去公演のアーカイブにまとまるまでは公演案内ページ残しておいて、「公演終了しました」ぐらいの一言を加えるだけにしたほうがいいと思うのです。webで見に行こうとしている劇団ページを探しても、直近に終わった公演の情報が残ってないのは、やはり少し残念なのです。

週末の候補。

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2006.11.05

【芝居】「名前の無い週末」神様プロデュース

2006.11.4 19:00

スピード感あり麗しい役者、演出、テキストの魅力のある劇団の新作。8月の前回公演の同じ日、同じ時間のアザーサイドを描く130分。5日夜までアドリブ小劇場。

突然呼び出された人々、共通点が無いと思われる人々。乾杯をして話し始めた昔話は似か寄っていて。
医院、医者、監察担当。運び込まれた患者が見た…
タウンページで見つけたバイト先の面接は何が採用基準かわからないが採用されて…
事故にあった男を治療した女はロボットの研究をしていて…
久しぶりにあった男と女、暮らしていたが出かけている間に…

週末が来る前の高揚と、週末(とその先)の予定がない不安な気持ちを「終末」の時に思い浮かぶあれこれ、学校や部活や家族などに繋げて行きます。目まぐるしくリズムがいいのは彼らの良さですが、漫画やテレビに由来するネタを細かく作り込んでいくのは、圧倒的に楽しんで作っているという点で強みであると同時に観客が知らなければ弱みになってしまうかもしれません。(大きな問題ではありませんが、たぶん。)

役者が稽古場で作り上げたようなタイミングとテンションが絶妙なバランス。音や照明を合わせたこういう芝居は少し前にはそれこそ溢れていました。第三舞台が休止し、双数が雰囲気を変え、最近ではb-evが休止になった今、このレベルで見られるというのは貴重なのです。若さゆえに作れる芝居ということかもしれません。

試験に出る高橋、というネタがあります。学校、入ってきた先生が授業を始める、高橋という人物についての歴史を教えるのだけど、それは役者の事実を話している、らしいのですが。応用はいくらでも利きそうです。素人の忘年会のネタにはハードルが高いですかそうですか。

「夢の住人たち」が出てくるあたりで物語の世界が勢いをもって収束していきます。 物語や世界は、もっと大きな世界や物語や都合に呑み込まれていくというのは少しアタシを泣かせます。 希望がない終幕だけで終わらせてしまうのは、かの世代たちの世界の見え方なのでしょうか。あたしは一筋の光でも蜘蛛の糸でもほしいかと思ったりするのですが。

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2006.11.04

【芝居】「HEAVY MENTAL HEAVEN」天然スパイラル

2006.11.04 14:00

女性キャストが殆ど、踊りの華やかさと少しだけヘヴィめの話だけれど楽しめます。150分(休憩10分込)、7日までラゾーナ川崎・プラザソル。

スター「ダ」ックスカフェの店。ストレスレベルの高い常連客を抜き出し、癒しサークルに入らないかと誘う店員。
癒しスピリチュアルで有名なカリスマ作家。多忙な日々の中、突然姿を消す。探しまわる秘書、家族…

本人たちが望むのではなく、巻き込まれながら怪しげな癒しを強いられる人々。実に軽いタッチで進む前半は笑いも多く、踊りも華やか。

後半はそれぞれの背景がそれぞれに事情を持つという流れ。幾分かヘヴィな話とはいえ、芝居の題材としちゃそんなに大ビックリ、という感じでもありません。

が、その背景を小出しにするタイミングやら、全く関係ないギャグのシーンやらが上演時間の間だらけることなく、胸焼けするほどの密度で詰め込んでいるために笑いも少しばかりの涙も含めて芝居を見た、という気にさせる濃さがあるのです。

ダンスを芝居に入れるのは現時点の小劇場では少々古いという気がしないでもありませんが、三鷹の御大のギャグやらメガネ女子の色気やら、ヘビメタっぽさやら芝居の中に取り込むしたたかさ故に飽きさせません。

可愛いらしく見えてパワフルな役をこなす室伏ひかりはこの劇団の女優の強みですが、梨澤慧以子も同じ系統の強さ。他の役者も芝居に不安がないのは安心です。千葉おもちゃは何役もこなした上、印象に残るキャラクタがうまいなあと思うのです。 川崎駅西口前の東芝跡地に出現した広大な商業施設内にできた通常座席100クラスの劇場、ラゾーナ・プラザソル

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2006.11.02

【芝居】「vocalise」リュカ.

200611012000

王子小劇場の企画シリーズの中間点。プレビューを。2日初日→6日まで王子小劇場。120分。静かに丁寧に作られています。静かすぎるゆえに、観客の側も体力を少々使います。

マンション。暮らしている二人、客が来る、パーティーの予定。思っていたよりも早く揃うが、ホスト側の二人の間で客には明かしていない秘密…

暮らしていくこと、生きて行くこと、先行きが見えてしまうこと、それが周りの人々に与えることの大きさ。

タイトルは一つの母音で唄う、歌唱法。真っ直ぐに貫く思いだとアタシは解釈しました。

難しい話ではありません。少し裕福めな家庭や友人たちや近所の話。ゆるやかな会話が延々と続くのは物語を運んではいません。空気を作っていると思うのです。作家も演出も男性ですが(アタシもだ)、女性を描くシーンは、すとんとハマります。

(以降、ねたばれあるかも。)

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