【芝居】「恋人たち」ブラジル
2006.11.29 19:30
佐藤佐吉演劇祭の最後にふさわしい仕上がり。ブラジルらしい「笑い過多に見えて、切ない話」は役者も安定して楽しめます。120分弱、12月5日まで王子小劇場。
古い安アパートの部屋。同棲している男女、焼身自殺を図るが邪魔が様々に入る。
アパートの他の住人、大家、配偶者、会社の人、何人かの来訪者。そのうちに転がり込んでいた女の背景が見えたり、転がり込まれた男に謎の女の影が見えたり。
愛することから出発し、あれやこれやと繰り出される小さなサプライズが笑いを呼んでいきます。 夫婦なこと、生死の問題など。幾重にも螺旋してぐるぐると廻るうちに予想出来ない着地点に到達します。ブラジルが好んで取り上げる「大人しいのにネジが外れてしまった人」が胸焼けするほど登場しますが、役者の力が隅々まで行き渡っていればこんなにも安心。
実は、「女ともだち」がやり合うシーンが好きです。探り合う必要すらないかつての親友、表面的には普通の会話なのに互いが全く信用していないどころか恨みに近いぐらいの想いが渦巻く二人は怖いとは思いつつも、もっと観ていたいと思ってしまうのです。
基本的には笑いの多い舞台です。会話の端々とか、ほんの微妙なズレでくすくす笑うシーンが沢山。それなのに出てくる人物はどこか壊れた感じ。この二つの両立が、この劇団の強みなのだなぁと思うのです。 かつて双数姉妹などで見せた桑原裕子の「若い感じのする人物(なんじゃそれ>アタシ)が数年経った感じに深み。純粋で真剣すぎるあまりの不安定は彼女の当たり役ですが、序盤で客席を暖め、きちんと物語の中心を最後まで貫きます。
重実百合が演じた「可愛らしくて少しいやらしく迫る女の子」、中川智明の「もの静かなのに底深く怖い感じ」の住人たち、瀧川英次の「明るいのに深刻な大家」だけでなく、出てくる人物はすべて芝居的で極端なキャラクタ それなのに、それぞれの人物は細かなディテールが作り込まれていて、ありそうな気がしてしまうのです。
初日時点では、かなり舞台上での動きというかアクションというか取っ組み合いがたくさん。足下が滑ったりモノが落ちたりしていますが、靴下で滑ってしまってるようにみえたり、どこまで計算されているものかは知るよしもありませんが、楽日まで怪我のないように、と祈るのです。
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