【芝居】「プライベート・ライヴズ」パルコプロデュース
2006.9.16 19:00
1930年発表、ノエル・カワードの手による英国戯曲を、飯島早苗(*)の手による脚本、山田和也の演出による上演。150分(休憩20分込み)。24日まで青山円形劇場。
ベランダ越しに隣り合う二組のハネムーンカップル。甘い夜になるはずだったが、離婚して別れた二人が別の相手と再婚しての夜に偶然隣り合ってしまったのだった。罵倒し合いながらも、相手を今でも愛していることを気づいた二人は、ふたたび手を取り合って逃亡するのだった。逃避行の末たどり着いた部屋に二人。愛し合うがやはり罵倒しあわずには居られない。そこに逃げられた相手二人がやってきて..
濃厚に愛し合う二人、罵倒し合う二人、相手を思いやるようでいて表面的な愛に過ぎない二人など、さまざまに組み合わされるシーン。ストーリーは愛し続け合う二人の話とでも要約できるほどシンプル。役者の演技する力や、普段見られないような表情、暴れるような演技を性格で安全に行う力。役者の力によるところが大きいのです。
それを支えているのは、ごく普通の日本語の会話をきちんと書き出すことができる脚本家の確かな力なのです。原文はイギリスらしい、面倒くさい台詞回しに溢れているのでしょう。裏に隠された意味や遊びをひもとく過程が書かれた脚本家のblogはスリリングな仕事をかいま見せます。また、フランス人のメイドが喋る片言の英語のひどさは、偏見に満ちあふれてて、時代を感じさせますが。
演出そのものは面白いシーンをちゃんと面白く見せる力はもちろんあります。が、演出が円形の舞台を制圧できていない、とアタシは感じるのです。青山円形でハマるパターンの多い「演出席が何処にあるかあからさまにわかる演出」の域を出ません。「南国プールの熱い砂」が初演から 再演にかけてこの円形を確実に克服したのは記憶に新しいところです。「南国〜」は完全円形ではありませんから、完全円形の今作と対等に比べるわけにはいきませんが、それでも。 あたしにしては珍しく早い段階で押さえた前売りはEブロックだったのですが、あきらかに「ステージ背面」の芝居。ソファーを固定してしまえばこうなることは容易に予想が付くのに、それを円形そのままやってしまうことが、観客からはどう見えるかと言うことが認識できていない、と思うのです。決して安くはないチケットですし、料金は均一ですから、これは文句を言ってもいい、とあたしは思うのですが。どうですかね。
1930年代という時代に照らしてみれば、相当にファンキーで刺激だらけの戯曲だったのだろうと思うのです。物語の軸となる「飛んでる」カップルが居るのはもちろんなのだけど、終幕近くの罵倒と睦まじい二組のシーンは、時代の持っているルールというか原則が音を立てて崩れていくようなショックだったと思うのです。今の時代から見れば古き良き、を感じさせてもしまうのですが、古くさくはないのです。
愛し合ってしまわずには居られない者同士、傷つけ合うのはわかっていても、そうするざるを得ない切実さこそがメインの二人を突き動かすのです。イギリスっぽくおしゃれにはできていますが、このベースとなる気持ちは日本で言えば「つかこうへい」な感じすらします。偶然にも隣の劇場は蒲田行進曲ですが。
もう一つ苦言を呈するならば、公式サイトやシアターガイドなどのキャスト表が4人しか載っていないというのはどうしたことでしょうか。出番が少ないとはいえ、役者は5人ですし、blogなどには結構書いてあるのですが、あとから決定したモノとはいえ、公式サイトを直すということがなぜ出来ないのかなぁと感じるのです。
とはいえ、かなり笑いに溢れていて楽みました。愛情をめぐる話というのはやはり楽しいのです。長めの休憩時間も舞台のしつらえを変えるための時間だと思えば、これは見てて結構楽しいのです。
パルコ プロデュース「 プライベート・ライヴス」
2006.9.4 - 9.24 青山円形劇場
2006.9.27 - 9.28 アートピアホール
2006.10.7 - 10.9 OBP円形ホール
作 ノエル・カワード 台本 飯島早苗 演出 山田和也
出演 葛山信吾 久世星佳 西川浩幸 ともさと衣 詩梨
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コメント
お楽しみいただけたようで何より。かわひさんはご存じのとおり、この作品を2回も観てしまったわたしです。
ルイーズ=詩梨ちゃんのクレジットは、確かにほしかったかなぁ。「何コイツ?」って感じでその登場を楽しめもしたのですが。
で、デブ人生を走っているわたしとしては、あのルイーズの演出(鼻の音、ね^^;)にはちと不愉快だったのだけれど、片言の英語らしきもののひどさには、偏見を感じませんでした。なぜかというと、仮にも外国語をしゃべったことがある者としては、外国語をしゃべるということはいつも相手にああいう風に聞こえるリスクを持っていると思っているということと、それから、イギリス人の登場人物たちは一生懸命ルイーズが何しゃべってるのか理解しようとしていたから。
席は、CブロックとDブロックからだったので、両方たぶんかわひさんのおっしゃる「背面」でした。どこに座っても見えるものと見えないものがあるなぁ、できれば4つの角度から観たいものだ、というのが正直なところです。(^^;
てか、一番残念なのは、観た2回とも、西様(=西川さん)が舞台から落ちなかったことです(^^;;;;
投稿: あれ | 2006.09.17 10:00
あれさん、コメントありがとございます。
鼻の音ってのは、体型から、ということだったですね。どこかに風邪だかなんだかという台詞があった気がしたのですが、ただそれだけのことあの耳障りな音を付けてるというのは理解できなかったのです。
外国語がああ聞こえるということ自体は偏見ではないと思うのですが、その間違え方が、やっぱり偏見のバイアスがかかった間違え方をしてる、という気がしましたね。
背面の問題は、普通の舞台なら何の問題もなかったのに、わざわざ円形の舞台で、それを使いこなせなかった、と感じました。(些細なところで、つけたしのように四方を向くというような演出はあるのですが。)ソファーを止めて、床置きのクッションにするだけでもずいぶん違うのになぁと思ってましたが、それだと時代考証的に駄目なのかも。
投稿: かわひ_ | 2006.09.20 01:23
かわひさんと同じく30代最後の1年を過ごしております(9/20の記事に対してのコメントです。)。この芝居に関しては久世さんだけ観に行ったので十二分に楽しめました。因みにAブロックでした。かわひさんの解釈では正面と言うことでしょうか?見易かったです。それとルイーズの演出(鼻の音)は最初は意味が分かりませんでした。隣の人が鼾をかいているのかと思いました。太っているからあんな演出なのでしょうか?私は彼女の変な英語がつぼでした。TBはらさせて頂きます。
投稿: どら | 2006.09.20 16:29
どらさま、コメントありがとございます。
わはは、ご同輩、なのですね。
そうそう、Aブロックならばソファが正面から観られると思うので多分正面かと思います。ちょっと羨ましいです(^^)
鼻の音はやっぱりわかりませんよねぇ。風邪だと、思ったんですけどね。TBありがとうございます。
投稿: かわひ_ | 2006.09.22 03:40
アマンダ(久世星佳さん)のセリフに「ルイーズが風邪をひいていて」というのがあったので、
やっぱり風邪のせいという表現での鼻鳴らし(!?)みたいです。
でもルイーズが登場する前のセリフなので、ルイーズがクレジットされていない今回、
初見では気づかないと思います。
私も初回では気づかなくて“太ってるせいか”と思ってまして、
2回目で「ああっ!」って感じでしたよ。
そして私は2回ともおんなじ席でした(Aブロックの、Bブロック寄り通路横)。
投稿: NAH | 2006.09.27 23:53
連続で、しかも横レスでごめんなさい。
>あれさん
私が観た回は、西様、舞台から落ちはしなかったものの、
2回とも何かを踏んでこけそうになってました。
一度目はクッション、二度目はアマンダのトランクを。
投稿: NAH | 2006.09.27 23:55
NAHさん、コメントありがとございます。
ああ、よかった、「風邪をひいて」という台詞あったのですね。
でも風邪だと鼻じゃない気もするし、意図はわかりにくいですよね。
Aブロックなら正面ですね。やっぱ違いは愛ですか、(^^)
投稿: かわひ_ | 2006.09.28 00:34
どらさん コメントありがとさんです。かわひさんいつもどうも。
ルイーズの鼻の音については、デ○とか○タとか言われて来た者のひがみですねぇ。ルイーズが風邪ひいてるらしいってことは頭のどっかにあったんですが、それはそれとして、横幅のある女子にああいう演出つくと不愉快になるのはサガです(^^;。
詩梨ちゃん自身はいい仕事してたと思うし、プロだから、あれでいいんだと思います。
わたしは二回目は勝手にシビルと西様のラブストーリーに設定して観ました。そうすると最後にみんなが舞台を去る時のおさまりが良かったです。(^^)
投稿: あれ | 2006.09.28 08:18
ああすいません。NAHさん、コメントありがとさんです。
どらさんも、お話ありがとさんでした。
投稿: あれ | 2006.09.28 08:19