【芝居】「顔に自信がある」柿喰う客
2006.9.10 14:00
突っ走るエンタメ系は見応え十分だけど今作に限れば題材が微妙すぎる気も(初見)。120分。11日までシアターモリエール。
周辺の国と関係は悪い国・ジャポン。隣国は南北に分裂し、南はエンターテイメントの文化侵略で、北は軍事力と拉致でジャポン国に圧力をかけ続けている。洗脳により性的暴行を行う教団が暗躍し…
日本と韓国、北朝鮮、中国の問題、たとえば元首の参拝や拉致、イリュージョニストや韓流タレントやミサイルなどをちりばめ、誰が見ても現実を舞台に選んでいることがわかります。加えてこの夏を騒がせたあの教団を縦糸にして話が進みます。
当日券キャンセル待ちを出すほど人気の劇団らしく、こんな微妙な題材を扱いつつも作りは徹底してエンタメで、さまざまなシーンをスピーディーに繋ぎ、笑いも沢山盛り込んでいます。ほとんどの役者が客に向き合って喋るスタイルは最近のストレートプレイでは珍しい気もしますが、テレビ番組的な作りともいえ、この作風には合っている気もします。
魅力的な役者たち、見目麗しい女優も、しっかり笑いを取れる役者も沢山。脱線してもちゃんと物語を進める力も、まるでアドリブのように作りこまれた(だろう)笑いのシーンも手慣れた感じがします。
反面、この題材をここまで無造作に(と、あたしは思う。)扱っていることには違和感を感じずにはいられません。 アタシとは違う意見を確信犯として作るなら(嫌だけど)それは意見ですから、それはそれとしてアリだとは思うのですが。
しかし。悪意がないのは分かりますが、面白ければどうでもいいのかというか。マスコミであれば記録されるし観客数も段違いですから、ここまで無造作には出来ないのですが、今作は見られないことを前提に作っているヌルさを感じます。これを誰が見てもいい、と思って作ってるのかなぁ。これをメディアに記録して売るなら大した度胸だとは思うのですが。
物語の枠組みにこれを選ぶことで、客席を現在進行の共犯意識に巻き込むことは出来るでしょう。それをラブ&ピースという解決にしてしまうのも、それ自体が間違ってはいない。のだけど。
白状すれば、芝居の最中はかなり笑ったし楽しいとすら思いました。が、終演してトークショーを聞いて、劇場を出て、携帯でこれを打ち始め、歩いて新大久保のマクドナルドでこれを書き足してるときの、この違和感。なまじ面白くみせられているがために、この気持ちの持っていきようはどうしたら、と自問自答してしまうのです。
圧倒的に力があるのはわかります。たまたまこういう題材をこう使っているものに会ってしまっただけなのでしょう。もう何回か見たいな、とは思わせる出来なのはまちがいないのです。
柿喰う客第8回公演「顔に自信がある」
2006.9.8 - 9.11 シアターモリエール
作・演出 中屋敷法仁
出演 高木エルム 七味まゆ味 半澤敦史 コロ 本郷剛史 玉置玲央 深谷由梨香 中屋敷法仁 (以上、柿喰う客)
斗澤やすあき 丹羽美貴 大森茉利子 石橋宙男 佐野功 本田けい 目黒茂 菊池佳南 伊藤淳二 トダなつ子 太田望海 引野早津希
冨樫雅人(中央大学第二演劇研究会) 古里美穂(青山学院大学演劇研究会) 小西綾香(立教大学演劇研究会) 菅原未智(帝京大学ヴイクセンズシアター)
出来本泰史(スターダス・21カンパニー) 金子優子(ひょっとこ乱舞)
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コメント
読みました!
熱く、深い、嬉しいコメント、そして、ご来場いただきまして、本当にありがとうございましたっ。
ぜひまた、いろんな『柿喰う客』の舞台を、ご覧いただきたいです。
また劇場でお会いできるのを、楽しみにしております。
投稿: 七味まゆ味 | 2006.09.16 09:53
七味まゆみさま;
うあ、直々のお出ましありがとうございます。
いろいろ書きましたけど、この人数で破綻せずに芝居が成立してて、役者も格好良かったり見目麗しかったりして、魅せる舞台だった、というのは間違いないですね。いえ、フォローなんてモノではなくて。
投稿: かわひ_ | 2006.09.20 01:19