【芝居】「猿の惑星は地球」クロムモリブデン
2006.9.13 19:30
関西の劇団、「CrMo(クロ・モリ)」の東京拠点化の第一回。断片と印象で繋ぐ表現は、彼ららしい一本。もし早めに客席に座れたら、当日パンフ(フルカラー、気合い十分)の中央、上端の折り目左右に解説されてるあたりをざっと読んで(約1分)から。90分、17日までザ・ポケット(木曜は昼ギャザ公演のみ)。そのあと大阪。
「SARU」という、死なない身体+刀の形をした携帯を持ち、高度に爛熟した文化を持つ生物がメインになる星。一方、NINGENという、すこしの傷ですぐ死んでしまう野蛮な生物も少しながら居る。
深刻なネタ不足に悩む放送作家が他人の夢をネタとして購入するが、それはタブーに触れるのネタだったが、それに惹かれて探そうとする人々。一方、100年のコールドスリープから覚めて見た世界は。
映画「猿の惑星」のラスト、「実は地球だった」というとても重要なシーンが、DVDのパッケージ(amazon)になってるというネタバレに着想したタイトルと、その雰囲気受け継ぎつつもまったく違う物語を紡ぐ力。
もっとも、正直な話、(少なくとも二日目、J列上手側は)凄い役者たちの芝居が、距離の為に客席を制圧し損なった、という印象があります。ひとつながりのストーリーを紡いでみせるというタイプの芝居とは違って、見せられるのは断片。が、その奥底の切なさが作家の力点だと感じるのです。これを「ダンス的」と言ってしまうこともできましょうが、彼の世界よりも、こちらの方があたしの好みではあります。
過去の王子や、次回のサンモールスタジオ、あるいは青山円形(で観たい)ならばもっと魅力的になった気がするのです。もっとフラットで音響や照明、役者のグルーヴに包まれるような空間で見たい。それゆえに、ポケットという(舞台と客席が明確に分離した)空間は今作に関して言えばかなり厳しい試練だと思うのです。
あたしが観ている数作に比べると、役者数も段違いに多いのです。クロモリ・ネイティブ(カッコイイ男の俳優+可愛い女優)、若者、パワフルな役者などのバランスが変調して、均衡をとりあぐねてている気もするのですが、観る場所や、ほんの些細なバランスが芝居を大化けさせる素材がホントに沢山。終盤、ドラマ撮影のシーンあたりからの加速は実にいいのです。
携帯を実に自由な小道具として使っているのが実にいいのです。ある時は武器であり、ある時はコミュニケーション、あるときは現金を送り、のように。お財布ケータイに見られるように現実的でもあり、物語を止めずに軽快に進めるのに効果的です。「スキミング」(=磁気カードを財布の外からスキャンして情報を読み取る)ってのは今現在では言葉としてあまり定着してる気がしないのだけど、どうだろう。
ヌルイ笑いに隠されているけれど、死ぬことと生きること、それに惹かれる気持ちの切なさが芝居の根底に歩きがします。手に入らないがために切望することというのがあって。この「切なさ」こそが、彼らの持ち味だとおもうのです。
板倉チヒロが舞台にリズムを作り物語を運びます。木村陽子(ex. MOTHER)改め木村美月の自在なパワフル。金沢涼恵の理性的な役もちょっといい。
クロムモリブデン「猿の惑星は地球」
2006.9.12 - 9.17 ザ・ポケット
2006.10.20 - 10.29 HEP HALL 作・演出 青木秀樹
出演 森下亮 金沢涼恵 板倉チヒロ 重実百合 奥田ワレタ 木村美月 久保貫太郎 山中卓磨 渡邉とかげ 板橋薔薇之介 朝光亮 橋本浩明(水の会) 高嶋ひとみ(スプラッシュアソシエイツ) 倉田大輔(国民デパリ)
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