【芝居】「Maggie」スロウライダー
2006.9.17 19:30
しっかりと世界を作りだす力。静かで派手さはありませんが、なかなか魅せるのです。90分、18日まで駅前劇場。
バイト先の同僚から告白されたけども、あんまり好きじゃなかったからバイトに行きづらくて。家を追い出されて昔の先輩の家に。
西瓜糖を煮つめて生活をすべて賄う世界を書いた本を携えて…
リチャード ブローティガンの「西瓜糖の日々」(amazon)
という小説にインスパイアされたと当日パンフにあります。西瓜を煮詰めた材料で建材・燃料・衣料を担い、 アイデスと、<忘れられた世界>という二つからなる世界を描いたらしい物語。この物語を世界の一つとして描き、この本を読んでいる自分が居る世界(それは日本の九州のどこかの町)を外側に描く構成。
辛いこと(まあ、そう大した悩みではないのだけど)でバイトに行かず、実家も追い出されたために一つの物語の世界に逃げ込んでしまう男。昔の先輩を頼って九州まで居候しにきて。その妹に対して抱く恋心。物語の世界での主役が自分だと投影し、彼女をそのヒロインとして妄想しつつ。
が、その物語の主役となるこの(=九州の)世界での人物は自分ではなく、実は自分のポジションがその敵役だとだと気づくのです。自分の人生は自分が主役なのは間違いないけれど、それが思うとおりにならないのは世の常。それはよくある話だけど、若い頃にたいていの人が経験するはずのほろ苦さ。
この「主役が交代する」瞬間が実に鮮やかなのです。いろいろ足掻くのだけど結果負けてしまうまでのおそらく数分しかないシーンはスリリングです。単に辛い話にはしないで、終幕で多少の妥協はしながらも前向きに見せるのも、あたしは好きなパターンです。
どこかの一軒家のようなベースに、全く別の真っ赤な壁のセットを組みあわせた舞台美術も秀逸。女優二人がアタシの目当てでしたが、松浦和香子は等身大で美しく。笹野鈴々音は見た目の特徴にとらわれない「普通の」役がかえって珍しい。これ以外でも、役者の誰にも破綻が無く、ちゃんと演じきるのも大した物だと思うのです。
スロウライダー「Maggie」
2006.9.13 - 9.18 駅前劇場
作・演出 山中隆次郎
出演 児玉貴志(THE SHAMPOOHAT) 日下部そう(ポかリン記憶舎) 笹野鈴々音(風琴工房) 松浦和香子(ベターポーヅ) 佐々木光弘(猫★魂) 夏目真也(東京デスロック) 芦原健介 藪間優一 山中隆次郎
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